ブエルタ・ア・エスパーニャ第11st:イスラエルに対する抗議デモでゴール閉鎖、勝者なしのステージは残り3㎞でタイム計測、ピドコックとヴィンゲガードが抜け出しライバルを突き放す

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政治がスポーツの世界へ影を落とすことにはうんざりする。選手たちの努力を顧みない抗議デモで安全確保が困難となりゴール地点が使えず、第11ステージは勝者なしという異例の形となった。今回に関しては、イスラエル・プレミアテックが出場していることから抗議対象となっており、すでに複数チームが、安全と健全なレースの為にイスラエル・プレミアテックを出場除外すべきだと声を上げており、今後も同じことは繰り返されそうな予感がしている。このステージ中盤でも沿道で抗議に加え、またもバナーをもってコースをふさぐケースもあり、選手たちの安全が確保されてとても言い切れない状況だった。しかしタイム差計測は残り3㎞地点でのタイム差となることが急遽決定、選手たちは残り15㎞ほどになり突然このことを知らされることとなった。またこのどさくさに紛れてバスク独立戦線のデモも発生、より複雑な状況となっている。

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それでもタイム計測がある以上は、選手たちはそこまでは攻め抜く必要がある。そんな中この日驚異の走りを見せたのは総合4位のトム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)だった。急勾配のセクションで総合リーダージャージを着用するヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)を2度にわたり置き去りにする走りを見せた。それにより最後の山岳ポイントをトップ通過したことでボーナスタイムを獲得、さらにはジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)らにタイム差をつけることには成功した。今大会でグランツアーライダーへの進化を掲げているピドコックが予想以上の強さを見せ、その適正と適応能力を見せつける形となった。
このステージは序盤からまたもステージ優勝とアシストの2刀流を狙ったUAEチームエミレーツがマルク・ソレルを逃げに送り込んだ。マッズ・ピーダースン(リドル・トレック)は本格的山岳ステージでは総合系にポイントを荒稼ぎされるため、できる限り取れるところでポイントを稼ぐというスタンスの元、このステージでも飛び出していった。しかしこの日は流石にそれを容認する動きにはならない。ソレルが最後まで一人踏ん張ったが残り59㎞で吸収されてしまう。
更に今度はミケル・ランダ(T-レックス・クイックステップ)がリスク承知でのアタックを敢行するが、これもしばし独走をした後に、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)が合流し、今度はブイトラゴの独走となったが後続で発生した総合勢の動きに飲み込まれていった。その動きは残り24㎞ではアルメイダのアタックを号砲にヴィズマ・リースバイクを中心に総合勢が動く。あっという間にアルメイダ、ヴィンゲガード、ピドコック、ジャイ・ヒンドリーとジュリオ・ペリッツァーリ(共にレッドブル・ボーラハンスグロエ)、ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)らに絞られてしまう。総合バトルが勃発するかに思われたが、その後ゴールまでの情勢から主催者判断によりステージ勝者なしの残り3㎞での計測が発表される。
すると最後の激坂でピドコックが猛烈なアタック、この登坂力はMTBやシクロクロスでいつもピドコックがやっているアタックだが、それをこの大舞台で披露、これには誰もついていけないどころか、ヴィンゲガードですら距離を放されてしまう。ヴィンゲガードはその後の緩斜面でその都度追いつくが、ピドコックの明確な武器が露わになった。
抗議活動に対する選手たちの反応は様々だが、「抗議は自由だし意味があるが、沿道だけにとどめてほしい、レースの邪魔はしないでほしい。」というのが大多数の選手が口にしている。高速で走る選手たちにとっては怪我は即選手生命の終わりさえ意味しかねない状況だけに危険行為だけは本当に避けてもらいたいものだ。

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トム・ピドコック
「今日は残り3㎞までと言われたけど、どこが3㎞かわからなかったんだよ。それでヴィンゲガードと全力で駆け抜けたんだ。今日は僕の日だったのに残念だよ。政治的な発言はしないようにするけど、我々を危険に晒しても、あなたたちの主張は解決されないんだよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージ順位
ステージ勝者なし
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) 41h04’12”
2位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ +50”
3位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング ) +56”
4位 )トースタイン・トレーエン(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’06”
5位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +2’17”
6位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +2’26”
7位 ジャイ・ヒンドリー(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +2’30”
8位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +2’33”
9位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +2’44”
10位 マシュー・リッチテロ(イスラエル・プレミアテック) +3’11”
H.Moulinette












