ツール・ド・フランス第19st:短縮されたステージでの雨の頂上を制したのはアレンスマンで今大会2勝目!ヴィンゲガードは攻めて欠き仕掛けることなくポガチャルに張り付きゴール前で前へ

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二日続けての雨のバトルとなった山岳ステージ、実質このステージが総合優勝へ向けた最後のバトルともいえる過酷な山岳は、総合優勝争いを期待したものにとっては物足りないものとなった。だがその間隙を縫ってアタックを仕掛け続け、そしてタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)とヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)に追走を諦めさせたサイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)が最後まで逃げ切り今大会2勝目を挙げた。

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その総合優勝争いは、攻めるべきヴィンゲガードがひたすらポガチャルの後ろを走る展開、ポガチャルはその消極的な姿勢にうんざりしたようなリアクションを見せ、ステージ優勝を狙う選択をあえて捨てたように思われる。ポガチャルにすれば昨日のように先行するヴィンゲガードに着いていきゴール手前でスプリントは定石だが、逆転するには攻撃しなければならないヴィンゲガードがそれを行おうとした時点で、総合優勝を放棄したとも思える上に、ステージ優勝ぐらいは持って帰りたいという思惑が垣間見えたのかもしれない。結局先行するアレンスマンには肉薄したが、ポガチャルをゴール前でかわしたヴィンゲガードが2位、ポガチャルは3位、そしてそのゴール後のインタビューでは一切笑顔もなく疲れた顔で短いコメントをするポガチャルが印象的だった。ヴィンゲガードはわずか2秒だけ取り戻したが、4分以上のタイム差があるこの状況でのこの戦略、脚がもう残っていなかったのか、なんとも言い難いステージとなってしまった。
そして総合3位争いも動いた。フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)が粘りの走りでポガチャルとヴィンゲガードの牽引を始めると、辛うじてついていけていたオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)は脱落、昨日22秒差にまで縮まったその差は1分3秒にまで広がった。
コース前半のエリアで放牧されている牛たちに感染症が発覚、その対処を優先するためにコース前半がカットされ、僅か95㎞へと短縮されたステージとなった第19ステージ、まず前半の中間スプリントを制したのはヨナタン・ミラン(リドル・トレック)だった。総合優勝争いの状況次第ではポガチャルに逆転を許しかねないだけに、しっかりとポイントを積み重ねた。そし手この日の逃げを決めたのは総合5位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)とレニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス)そしてそれに合流したのはすでにステージ勝利を挙げているヴァレンティン・パレ・パントレ(ソウダル・クイックステップ)だった。

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山岳賞ジャージを狙うマルチネスは山頂をトップ通過し、さらに3人の逃げは快調に続いたが、コルメ・デ・ロセレン山頂通過後の下りでまずログリッチが飛び出し、次にパレ・パントレが飛び出し、残り35㎞の段階で3人がばらばらの状態となる。しかしペースを上げたメイン集団がこれを順番に飲み込んでいってしまう。ログリッチも全くついていけずそのまま脱落、リポウィッツのアシストをすることもできなかった。
そして迎えた最後の頂上へのバトルが始まると、雨脚は強くなっていく。人数もあっという間に減っていきフェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル)のジャンプアップを狙いチームメイトたちがペースを上げていく。するとあっという間にケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズが脱落していってしまう。
先頭ではアレンスマンがアタックを開始、、そして一定の距離が開いたところでそれを追うようにポガチャルがアタックを仕掛けるが、ヴィンゲガードはぴたりとマーク、そのままアレンスマンに追いついてしまう。アレンスマンはぴたりと貼りつく二人を嫌い何度かアタックを仕掛けるが、その都度ポガチャルらに合流されてしまい首を横に振る。しかし覚悟を決めて改めてアタックをすると、ポガチャルはこれをそのまま行かせてしまう・ヴィンゲガードも追うそぶりも見せず、二人はペースを落としていく。するとここへ後方からリポウィッツとオンレイが合流するが、アレンスマンとのタイム差は30秒ほどにまで広がる。

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総合3位を死守したいリポウィッツは自らの力で打開すべくペースを上げ、ポガチャルとヴィンゲガードもこれについていく。だがここでオンレイが遂に遅れてしまう。残り1㎞を切っても後続がなかなかペース上げてこないことを確認したアレンスマンは必死の走りを見せる。リポウィッツを置き去りにはしたが、ポガチャルもアタックをすれば追いつける距離にもかかわらず、アタックを仕掛ける気配はない。そしてそのままアレンスマン、ヴィンゲガード、ポガチャルが縦に並んでのゴールとなった。3人ともフラフラの状態ではあり、アレンスマンはすぐにコースわきのバリアに倒れ込んでしまった。ポガチャルには関係者が走ってきて突っ込みあわや転倒するハプニングも。短縮ステージは、最後の頂上バトルと予備には極めて物足りないステージとなった。

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サイメン・アレンスマン(ステージ1位)
「チームメイトのトビアス・フォスと2人残っていたので、彼に牽引をお願いしたんだよ。僕はもう総合は諦めていたし、山岳でのステージ勝利がもう一つ欲しかったんだ。その代わりに彼に明日は彼の為に働くと伝えたんだ。最終局面は総合系の彼らが追い付いてきて、どうしたいのかがわからなかったんだ。彼らは人間離れした超人だからね。でもそれでも彼らに勝ちたかったんだ。そして勝てたことが信じられないよ!」
タデイ・ポガチャル(ステージ3位、総合1位)
「最後の上りまでチームとしていい仕事ができたよ。残り19㎞の上りをスプリントで着ると思ったチームがペースを上げたからむちゃしんどかったよ。ヴィンゲガードはステージ勝利が欲しかったのか、全く前に出なかったんだよね。アレンスマンはいい判断をしたと思うよ。だから僕は無理に追うことはせず、自分のペースでひたすら上ったんだ。あと二日で終わると思うとホッとするよ。」
「正直疲れたよ。早く普段の生活に戻りたいね。」
ツール・ド・フランス第19ステージ順位
1位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) 2h46’06”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +02”
3位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)
4位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +06”
5位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +47”
6位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +1’34”
7位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +1’41”
8位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’19”
9位 ヴァレンティン・パレ・パントレ(ソウダル・クイックステップ) +3’47”
10位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +3’54”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 69h41’46
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +4’24”
3位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +11’09”
4位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +12’12”
5位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +17’12”
6位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +20’14”
7位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +22’35”
8位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +25’30”
9位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +28’02”
10位 ベン・
オコナー(ジェイコ・アルーラ) +34’34”
H.Moulinette












