ツール・ド・フランス第18st:オコナーが逃げ切りでステージ制す!総合争いは残り500mでポガチャルがヴィンゲガードを振り切りステージ2位、ステージ4位のオンレイがリポウィッツに肉薄!

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雨、霧、雹の超級カテゴリー3つを超えていくクイーンステージを制したのは、今大会の総合優勝候補争いの一角だったはずの男だった。ベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ)は昨年のジロ・デ・イタリアで総合4位、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位に入り一気にグランツアラーの仲間入りを果たした。しかし今大会は序盤で躓き第1ステージで落車しタイムを失いと、その後もタイムロスを繰り返し早々と総合トップ上位争いからも脱落し、あとは何とかステージ勝利を狙う事へ切り替えたがそれもここまで実っていなかった。だが今大会のクイーンステージでその実力を改めて披露、総合優勝争いが繰り広げられることがわかっていたこのステージで見事に逃げ切りを決めステージ優勝を手にして見せた。そしてなんと他の選手たちが大幅に遅れたことで一気に総合トップ10に返り咲きも果たし、これ以上ない最高のステージとなった。

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その背後で行われた総合順位を巡るバトルは白熱、優勝う争いを演じるタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)とヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)はがっぷり四つでお互いのアタックをしっかりと抑え込み、勝負はゴールまでの最後の上りへと持ち越された。そこでもお互い譲らなかったが、ゴールまで500mでポガチャルが最後の爆発的アタックを仕掛けるとようやくヴィンゲガードを振り切りステージ2位に入りボーナスタイムも獲得、またジワリとその差を広げヴィンゲガードとのタイム差を4分26秒にまで広げた。2年前にこの山頂ゴールでヴィンゲガードに撃沈された場所で、リベンジ勝利に成功した。
そして表彰台最後の一角を巡る争いはさらに過熱した。フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)は最後のゴールへの上りで単独走でメイン集団に3分近い大きな差をつけて快調に飛ばしていたが、そこから徐々にペースが落ちていってしまった。ペースが上がったポガチャルらに抜かれ、更には最終的に総合4位のオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)にも抜かれると、その差を逆に広げられていった。最終的にオンレイはステージ4位でゴール、リポウィッツとのタイム差を一気に射程圏内の22秒にまで縮めてきた。総合3位は死守したものの、このステージで相当の労力を要したリポウィッツにとっては、今後のステージへの影響が気になるところだ。
このステージはレース中盤以降にとにかく激しい動きが繰り返された。19.2㎞の登坂距離を誇るコル・デ・マデリンでは、マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)が今大会ようやく好調さを取り戻し先行、レースを優位に進めるべく戦略的な逃げに打って出る。サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)と共に逃げるが、そこへプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)、フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル)、オコナーら総合系の選手が合流を果たす。さらにここでヴィズマ・リースアバイクがペースアップをすると、その犠牲となったのは総合6位につけているケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)だった。そしてそこからヴィンゲガードがアタックを決めるもポガチャルは難なく対応、ヨルゲンセンらに追いつき頂上を超えていく。総合表彰台争いのフロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)とオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)もここで遅れてしまう。
下りに入るとペースが落ち、リポウィッツは集団へ復帰、そしてそのペースにしびれを切らしたオコナーとエイナー・ルビオ(モビスター)、さらにヨルゲンセンが飛び出していく。更には時間を空けてリポウィッツも果敢にアタックを仕掛ける。それに対してヴィンゲガードとポガチャルはお互いを確認しながらペースダウン、するとそこへお互いのアシスト勢、さらにはオンレイが合流を果たす。

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そして迎えた頂上への最終決戦、先行するオコナーら3名、追走のリポウィッツに対し、先頭から3分ほどでポガチャルらが上りへと突入していく。そして残り16㎞でオコナーがタイミングを見計らってアタック、独走態勢へと持ち込んでいく。総合勢のバトルが始まる前に動くことで優位に展開、これが決定打となった。そしてようやくヴィズマ・リースアバイクがペースアップ、さらに主導権をUAEチームエミレーツXRGが奪い返してペースが上がると、残り7㎞で先行していたが力尽きたリポウィッツを捉え置き去りにしていく。この段階でログリッチはリポウィッツを待たず、そのまま自分のペースで走り続ける。
勾配がきつくなると、先頭のオコナーは歯を食いしばり必死の形相でクリアしていく。そしてその区間を上り切り勾配が緩むと、安堵の表情を見せゴールを目指した。そして十分なタイム差を確保したまま笑顔でゴール、ツール・ド・フランス通算2勝目を挙げるとともに総合でも10位へとジャンプアップを果たし、昨年度のグランツアラーとしての覚醒がフロックではないことを改めて示して見せた。

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ポガチャルは残り500mでアタック、ルビオを捉えると単独2位でゴール、ヴィンゲガードに9秒の差をつけて頂上に到達した。初めてツールを制したころの圧倒的な力の差での走りではなく、体力の無駄な浪費を抑えたクレバーに展開する当たり、王者としての風格がついてきたというところだろう。
ベン・オコナー(ステージ1位、総合10位)
「過酷なレースだよね。世界最大で最高峰だよね。以前にステージ勝利を挙げたことがあるけど、もう一度ここで勝利が欲しかったんだ。でも3位、4位はあったけどなかなかステージ勝利には手が届かなかったんだ。だからこの勝利を誇りに思うよ。あと本当にチームメイトたちには感謝しかないよ。集団に残っていれば、間違いなくポガチャルとヴィンゲガードのバトルの巻き添えを食らうのはわかっていた。だから先に攻撃を仕掛けて逃げるしかなかったんだよ。あとは独走になってからはTTモードで必死に逃げ続けて、残り5㎞からはマイヨ・ジョーヌらが迫ってくるのから耐えるだけだったよ。でも残り3㎞で3分差と聞いたときに、勝利を確信したよ。」
タデイ・ポガチャル(ステージ2位、総合1位)
「今日もマイヨ・ジョーヌを着れてハッピーだよ。明日もまたヴィズマが攻めてくるだろうからね。でも僕らも強いチームだから、生き残れると思うよ。最終日までこのジャージのままいけるんじゃないかな。でもまずは明日、そして明後日と一日一日戦っていくよ。今のところ全ては順調だよ。コル・デラ・マデリンではヴィズマが攻撃的だったけど、難なく対応できたよ。今日もあまりストレスなく走り切れたしけど、でもマデリンで攻められたことで僕自身がステージ優勝を狙うチャンスは失ってしまったよ。今日はオコナーが素晴らしかったね。出来ればもう一勝くらいはしたいんだよね。でも優先事項はジャージを守ることだからね。でも今日の僕自身の走りは”勝利”と呼べると思うよ。」

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ツール・ド・フランス第18ステージ順位
1位 ベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ) 5h3’47”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) +1’45”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’54”
4位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +1’58”
5位 エイナー・ルビオ(モビスター) +2’00” +2’25”
6位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +2’46”
7位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’03”
8位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG) +3’09”
9位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +3’26”
10位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク) +3’27”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 66h55’42”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +4’26”
3位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +11’01”
4位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +11’23”
5位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +12’49”
6位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +15’36”
7位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +16’15”
8位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +18’31”
9位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +25’41”
10位 ベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ) +29’19”
H.Moulinette












