ツール・ド・フランス第15st:総合勢小休止のステージで、ポガチャルのアシスト、ウェレンスが会心の逃げ切り勝利!自由を得たベルギーチャンピオンが全てのグランツール勝利でグランツールクラブ入り

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勢いのあるチームとはこういうものだ。総合優勝争いを繰り広げるタデイ・ポガチャルのUAEチームエミレーツXRGはエースアシストのジョアオ・アルメイダを序盤に失ったが、それでも盤石の戦略で総合首位を快調に飛ばしている。そしてこの日はそんな総合争いも小休止、そうなれば自由を得たのがそのアシストであるティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRG)だ。そもそもクラシックライダーとしても実力が高い選手が、アシストに徹するという選択をしてこのチームへと移籍、その覚悟に対するこの日は自由を与えられた。

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水を得た魚とはまさにこのこと、まるでベルギー選手権での独走勝利を再現するかのように、逃げ集団から残り43㎞で渾身のアタックを決めると、そのままゴールまで独走で勝利を決めた。これで全てのグランツールでのステージ勝利を達成、グランツールクラブと言われるすべてのグランツールを制したものだけが得られる称号を手にした。この勝利にはチームのエースのポガチャルも興奮、そして実力者があえてアシストという黒子に徹してくれていることへの感謝を口にした。
そしてステージ2位は逃げ集団の先頭でヴィクター・カンペナールツ(ヴィズマ・リースアバイク)が取った。同じくチームメイトのワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)と共にエースのヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)のアシストから解放されたが、数的優位を活かせずウェレンスの独走力の前に屈する形となり、奇しくも現在の総合順位とチームの勢いを体現するかのような結果となってしまった。
この日のステージは獲得標高2400mながらも山岳ステージというよりはクラシックのようなステージだ。そしてこの日は序盤に落車が発生、ジュリアン・アラフィリップ(チュードル・プロサイクリング)、さらにはヴィンゲガードも巻き込まれる落車が発生する。ポガチャルは難を逃れ、ヴィンゲガードは巻き込まれてしまうというあたりが今の勢いそのままだ。ただし大きなけがはなく戦列へ復帰するが、この日は集団のペースが速く、合流には時間を要した。

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そんなハイペースの中でも発生するのが逃げ、ウェレンス、カンペナールツ、ファン・アールト、ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)、マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)らクラシックライダーがずらりと顔を揃えた。ファン・デル・ポエルの思惑はほかの選手と異なり、ステージ勝利を狙いつつもポイント賞ジャージを狙いに行っている。この日のステージでもポイントを稼ぎ、現在ポイント賞首位のヨナタン・ミラン(リドル・トレック)に対してまた差を詰めた。
しかし逃げ集団はペースが上がらず、ここへマイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)や総合4位のオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)らがメイン集団から合流してくる。大所帯になったがそれも次の山岳ポイントであっさりと分裂、ウェレンス、カンペナールツ、ストーラーら8名が先頭集団を改めて形成した。さらにここから勾配のきつい区間でウェレンス、カンペナールツ、ストーラー、クイン・シモンス(リドル・トレック)が飛び出していく。人数が減ったことで、独走力のあるウェレンスにとっては条件が整うこととなった。そのまま上りで加速してライバルたちを引き離すと、あとは個人TTモードでゴールを目指すだけだった。最後は沿道のファンとハイタッチをしながら余裕のゴール、勢いのあるチームの力をまざまざと見せつけた。

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またステージ3位には新天地で復活してきたアラフィリップが入ったが、ゴールで何を勘違いしたのかステージ勝者のようなガッツポーズを決めた。
ティム・ウェレンス(ステージ1位)
「この勝利は特別だよ。誰もが出場したがるツール・ド・フランス、そして誰もが勝利したがるツール・ド・フランス、毎年21ステージしかないから勝者もそれだけしか生まれない。それを考えるとこの勝利の美酒は格別だよ。今日はステージ開始前から好調だったんだ。スタート前から冗談半分で今日は逃げるぜ、と談笑していたんだよ。。あとはもう今日はひたすらアタックに反応し続けたよ。そして最後の山岳で、脚が良く回っていると感じたんだ。でもライバルたちも調子がよさそうだったので、だったら長距離アタックしかない、と思ったんだ。自分の間合いはわかっていたし、脚が最後までよく回り続けたよ。でもチームの目標は、あくまでもシャンゼリゼでのポガチャルのマイヨ・ジョーヌだよ。」

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ツール・ド・フランス第15ステージ順位
1位 ティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRG) 3h34’09”
2位 ヴィクトル・カンペナールツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’28”
3位 ジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ) +1’36”
4位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
5位 アクセル・ローランス(イネオス・グレナディアス))
6位 アレクサンダー・ヴラソフ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)
7位 ヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック))
8位 ジョーダン・ジョガート(ダイレクトエナジーズ)
9位 マイケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 ヴァレンティン・マドゥアス(グルーパマFDJ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 54h20’44”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +4’13”
3位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +7’53”
4位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +9’18”
5位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +10’21”
6位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +10’34”
7位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +12’00”
8位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +12’33”
9位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +18’26”
10位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +18’41”
H.Moulinette












