ツール・ド・フランス第12st:超級オータカムの頂上バトルはポガチャルの独走!残り11.8㎞でアタック一閃ライバルを撃沈!ヴィンゲガードはステージ2位も大きくタイムロス、リポウィッツが3位!

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本格的な山岳の最初のステージは、過去に勝負どころとしても使われたオータカム、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)にとっては2022年にヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)に敗北した悪夢の山だった。しかしこの日は両チームががっぷり四つのチームワークで総合トップ10意外の選手を削ったうえでの最終頂上バトルとなった。
先行していた逃げのブルーノ・アルミレール(デカスロンAG2Rラモンディアル)を追走する形で突入していったが、この日主導権を握り続けたヴィズマ・リースアバイクだったが本来なら最強アシストのはずのマッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)が不調だった。対してUAEチームエミレーツは逃げに乗っていたティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRG)が合流し、アダム・イェーツとヨナタン・ナルバエス(共にUAEチームエミレーツXRG)の3人がポガチャルをアシスト、残り13㎞を切りで遂に主導権を奪いペースを上げると、この日その前の山岳で一度は置き去りにされたが戦列復帰していたレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)がまず脱落する。すると次に脱落したのは総合リーダージャージのベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が遅れていく。

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そして残り12㎞を切ったとたんにナルバエスが急加速、まるでスプリントのリードアウトかの様な加速からポガチャルが発射すると、あまりの加速にヴィンゲガードはなす術なくその背中を見送るしかなかった。そしてじわじわとその差が広がっていくと、残り11.1㎞でポガチャルはなんと2㎞で2分のタイム差を詰める形で先行していたアルミレールをあっさりと捉えてしまう。ここからはもう独走、ポガチャルの独り舞台となった。加速し続けるポガチャルはヴィンゲガードとの差をぐんぐんと広げ、そのまま最後は笑顔を浮かべながら2分10秒差をつけて頂上を制した。これで今大会3勝目、ツール・ド・フランス通算20勝目となった。

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その背後では壮絶なトップ10圏内のバトルが繰り広げられる。プリモズ・ログリッチとフロリアン・リポウィッツのレッドブル・ボーラハンスグロエコンビ、更にはオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)、トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ)が4人で猛追を仕掛ける。その背後から一度は遅れたケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)が合流を果たすが、そこから激しいアタックの応酬からヨハンセンとリポウィッツが飛び出していく。最終的にはリポウィッツがそこから素晴らしい脚を見せ、先行していたヴィンゲガードを視界にとらえるところまで迫って見せた。

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これで総合トップ10は大きくシャッフルされたが、今大会のトップ10入りの選手たちの顔ぶれもおおよそ見える形となった。ポガチャルとヴィンゲガードとのタイム差は3分以上に広がり、大会中盤、にして早くもポガチャルの強さが炸裂する形となった。リポウィッツがこの日一番大きく順位を上げ総合4位まで順位を上げ、表彰台も視野に入ってきた。途中までログリッチのアシストをしていたが、それがなければこのステージでさらに順位を上げていたかもしれないことを考えれば、新たなグランツアラーが台頭したと言えるだろう。

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ピレネー初日の第12ステージは超級山岳にゴールする獲得標高がほぼ4000mの180.6kmの長丁場だ。山岳は逃げ切りが決まりやすくもあるが、同時にクライマー体質でないと逃げ切りが難しいという難しさもある。そんなステージで最初に飛び出したのは昨日スタートからゴールまで逃げきって見せたヨナス・アブラハムセン(Uno-Xモビリティ)だった。するとこの日はなんと51名もの大所帯の逃げが確定する。この中には各チームのアシスト勢や総合でのジャンプアップを狙うカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)やレニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス)、さらには山岳が得意なマイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)、ベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ)も含まれている。唯一ピクニック・ポストNLだけが誰も送り込まないという選択肢となった。だがこの逃げは大きすぎるが故にメイン集団は射程圏内に捉えたまま展開していく。そんなハイペースの追いかけっこで山岳を超えるごとに、先頭集団からは次々と選手たちが脱落していく。

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そしてむかえたレース後半の1級山岳、メイン集団ではヴィズマ・リースアバイクがここでペースを一気に上げていく。すると頂上までまだ8㎞を残し最初の犠牲者となったのがエヴァネポエルだった。更にはマイヨ・ジョーヌのベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が遅れを取る。あまりの暑さにオーバーヒートしたのか、チームメイトに水を掛けられながらそれでも何とか前を向いて必死の走りを見せる。エヴァネポエルは淡々とマイペースで上り続け、山頂通過時点ではポガチャルらに1分の遅れとなった。ヒーリーはここで5分以上の遅れとなってしまう。そんなか先頭集団はマイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック)。マティアス・スケルモース(リドル・トレック)、ストーラー、アルミレール、エイナー・ルビオ(モビスター)の5名に絞られていた。
そしてもうひとつ2級山岳を超え、展開は超級山岳でのゴールへと向かっていく。エヴァネポエルは下りで素晴らしい走りを披露、なんと残り27㎞でメイン集団への復帰を果たす。だが逃げに乗っていたウェレンスが合流したUAEチームエミレーツXRGがここからペースを上げていく。先頭ではアルミレールが独走態勢となり、およそ2分の差をメイン集団につけたまま先頭で超級山岳へと突入していく。

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メイン集団ではすぐにエヴァネポエルがまたも脱落、更にはヴィズマ・リースアバイクのアシスト、セップ・クスとサイモン・イェーツも脱落してしまう。これで優位に立ったUAEチームエミレーツXRGはウェレンスからナルバエスへとバトンタッチ、アダム・イェーツはターンをこなせず下がっていくも、ナルバエスの強烈な加速から、ポガチャルがまさに矢のごとく飛び出していった。ヴィンゲガードは完全にチーム戦術でライバルに屈する形となった。これでポガチャルはマイヨ・ジョーヌを再び獲得、そして総合では2位のヴィンゲガードに早くも3分31秒差、粘りの走りでタイムロスを食い止めたエヴァネポエルに対しては4分45秒差の大差となっている。
タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「今日は誰にとってもきつい一日になったね。でもそんな中で僕らが最強だったね。チームとしてはこのステージを一つ重要な戦略的ステージと捉えていたんだよ。ここは2022年に走っていたからね。でもあの時は考えすぎていて、そうしたらヴィンゲガードらにしてやられたんだよ。多くの人があの時のリベンジ成功とかいうけど、そんなの関係ないよ。でも今回はあの時やられた戦略で、自ら勝利をつかめたんだから納得だよ。タイム差もつけられたのは大きいね。」
「今気分的には選手生活の頂点にいるよ。世界チャンピオンジャージでレースができていて、最高のチームとチームメイトに支えられ、ここ数年のすべてがまるでおとぎ話みたいだよ。今はとにかく自転車の乗っていること自体が楽しいんだ。だから苦しくても沿道の歓声を聞くと、まだ行ける、まだレベルを上げられる、と感じるんだ。多分物理的にはここ数年が僕の選手としてのピークだとは思っているから、出来る限りそれを伸ばしていけるようにはしたいね。」
「ナルバエスにはドーフィネの時のようにやろうか、と冗談半分で話していたんだけど、ナルバエスには冗談が通じなかったよ(笑)。アダム・イェーツが、ナルバエスに対して、何してんの?みたいな顔してたけど、僕的にはOKだったよ。ナルバエスが爆発的な加速して、、最悪僕がついていけなくてもそこまで大きなダメージにはならないと思ったけど、ついていけたし、そうしたらライバルたちをぶっちぎれたよ。独走になったことで自分のペースで最後まで走り切れたね。」
レムコ・エヴァネポエル(ステージ7位、総合3位)
「今日は脚がなかったよ。ペースも早いし、気が付いたらライバルたちに後れを取っていたよ。でもチームメイトたちのおかげでタイムロスを最低限にとどめることができたよ。最後は自分のペースで上り続ければ、総合表彰台はまだ確保できるというのがモチベーションになったよ。まずは明日の個人TTでどこまでできるか、これで今年の総合上位の様相は大きく確定してくると思うからね。
ツール・ド・フランス第12ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 4h21’19”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +2’10”
3位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +2’23”
4位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +3’00”
5位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)
6位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +3’33”
7位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +3’35”
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +4’02”
9位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +4’08”
10位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +7’26”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 45h22’51”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +3’31”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +4’45”
4位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +5’34”
5位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +5’40”
6位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +6’05”
7位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +7’30”
8位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +7’44”
9位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +9’21”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +12’12”
H.Moulinette












