ツール・ド・フランス第10st:山岳バトル開幕!逃げ集団から飛び出したジロ覇者サイモン・イェーツがステージ勝利!ステージ3位のヒーリーが総合リーダーに!ポガチャルはライバル牽制で様子見
今大会初の山岳ステージバトルは様々な思惑がそこら中にちりばめられた忙しいステージとなった。そしてそれぞれの思惑は形となり、結果へとつながるステージとなった。この日は本来後続で総合バトルが勃発した際に、ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)の最終アシストとなるべく逃げに乗っていたサイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)だったが、すでにステージ勝利を挙げている、同じ逃げに乗ったベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)が逆転での総合リーダージャージ奪取の可能性が見えたことで、ライバル達との協調お構いなしに先頭で延々ペダルを踏み続けた。これにより大きくタイムが開く結果となり、サイモン・イェーツは自らステージ勝利を狙うチャンスを得ることとなった。

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そして残り3.3㎞からの頂上ゴールへ向けた上りで飛び出すと、そのまま最後まで追いつかれることなく走り切りゴール、自らツール・ド・フランス6年ぶりとなる勝利を飾った。ジロ覇者はサブエースとして今大会に乗り込んできたが、序盤に躓きタイムロス、総合上位の可能性も低くなったことである種の自由を獲得、逃げに乗り、さらにはステージ勝利と結果的には最高のツール・ド・フランスになっている。
最後の上りではサイモン・イェーツとサイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)の先行こそ許したが、総合リーダージャージという大きなモチベーションが背中を押したことでヒーリーは最後の上りもペースよく走り抜きステージ3位でゴール、ボーナスタイムを獲得してあとは総合上位勢の到着を待つだけとなる。

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その総合勢はマッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)が何度となく仕掛け、それにはタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)が対応、しかしセップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)やレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)のアタックには反応を示さない。人数を減らしながら迎えたゴールまでの上りバトルでは満を持してポガチャルがアタックを決めると、それに対応できたのはヴィンゲガードだけだった。しかしヴィンゲガードを振り切れないと判断するのも早く、そこからはこの日山岳賞ジャージを獲得して逃げから脱落してきたレニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス)に追いつき、そこからはペースを上げずにゴールまで走り切った。最後までペースを上げていけば総合リーダージャージを守り抜くことはできたと思われるが、その為だけに無駄な労力を割く必要はないと判断し、ヴィンゲガードと手を取り合い握手、揃ってゴールラインを通過した。エヴァネポエルら他総合勢は必死に追いすがり、6秒後にゴールラインを通過した。

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これによりヒーリーの総合リーダージャージ奪取が確定、これでシャイ・エリオット、ショーン・ケリー、ニコラス・ロッシュに続く4人目のアイルランド人総合リーダーとなった。過去の選手たちが皆歴史に名を刻んだ超一流と言われるだけに、今後のヒーリーの成長がますます楽しみになってきた。
8つの山岳ポイントを要する第10ステージはスタート直後から逃げを目指す動きが活性化すると、序盤10㎞ほどで20名の集団が逃げを形成、さらにそこへ順番に後続集団から追いつき、最終的には28名の大所帯の逃げが完成する。総合上位候補だったがすでにタイムを失い脱落しているサイモン・イェーツやベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ)に加え、EFエデュケーション・イージーポストはヒーリーを筆頭に最多の4人を送り込んだ。さらに総合優勝争いをしているヴィズマ・リースアバイクとソウダル・クイックステップが選手を送り込む中、UAEチームエミレーツXRGは誰も送り込まないなど、超級山岳ステージへ向けたシミュレーションとも受け取れるような各チームの戦術も見られた。

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序盤はUAEチームエミレーツXRGが逃げとの距離を保っていたが、ステージ後半に入ると、山岳を超えるたびに逃げ集団では活発にアタックが繰り返され人数を減らし、それに伴いメイン集団との差もじわじわと広がっていく。集団をコントロールしているUAEチームエミレーツXRGは明確に逃げを容認するような動き、つまり先行しているライバルチームのアシスト勢を使わせないイメージの走りに徹する。そしてそんな中残り70㎞を切ると、メイン集団とのタイム差が4分を超えついにヘーリーがバーチャルで総合リーダーに躍り出る。

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ヒーリーはこの日の総合リーダージャージ奪取が可能な展開と認識、ここからはライバルたちの協調や駆け引き関係なく、TTモードのような走りでハイペースを維持することに専念する。さらにそこにステージ優勝を狙う逃げのほかメンバーのペースアップなども加わり、メイン集団とのタイム差は6分を超えるところまで広がる。メイン集団では残り少なくなったUAEチームエミレーツXRGのアシスト勢による集団コントロールに対し、攻撃が始まるがどれも実らない。だがUAEチームエミレーツの限界を感じ取ったヴィズマ・リースアバイクはここから攻勢に出る。まずはクスがアタック、次にヨルゲンセンと波状攻撃を加えていく。ヨルゲンセンのアタックで遂にポガチャル自身が動き対応、UAEチームエミレーツはアシスト勢が苦しい状況となる。

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逃げ集団はヒーリー、サイモン・イェーツ、ストーラー、アレンスマン、オコナーとまるで総合優勝争いかと思うほどの豪華メンバーで快調に走り続けると、残り3.3㎞からの最後の上り勝負でサイモンがアタック、アレンスマンとオコナーが追走し、ヒーリーは後れを取る。だがオコナーが脱落すると、ヒーリーは必死の形相でペースを落とすまいと走り切りステージ3位でマイヨ・ジョーヌ、さらには新人賞ジャージも獲得して見せた。その背後では結局ポガチャルが主導権を握り、そのまま切れ味鋭いアタック一閃、ライバルたちのとの格の違いを見せつける走りを披露、その後は積極的な動きを見せることなく余裕の表情でゴールラインを通過した。
サイモン・イェーツ(ステージ1位)
「正直あまり調子は良くなかったんだよね。スタートからゴールまでハードすぎたよ。最終局面でかなり強力なメンバーが揃っていたからね。だから先に仕掛けたかったんだよ。正直今日はこんなチャンスがもらえるとは思っていなかったよ。あくまでもヴィンゲガードの総合が目的だからね。でもチャンスが与えられたんで、もう躊躇なくいただいたよ。」

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ベン・ヒーリー(ステージ3位、総合1位)
「お伽話だよ。もしツール前にこんなことが起きるって言われていても、信じられなかったと思うよ。このマイヨ・ジョーヌに袖を通せるなんて信じられないよ!もう自分の理解が追い付かないよ。過去マイヨ・ジョーヌに袖を通した母国の先人たちが偉大な先輩ばかりなので、この結果を誇りに思えるよ。そしてその歴史を汚さぬようにがんばるよ!今日は正直言ってUAEチームエミレーツXRGが逃がしてくれるとは思わなかったんだよ。そして僕らはそこに4人も人数が揃っていたからね。彼らのおかげでこの結果があるんだよ。あとはこのジャージをできる限り長く守り続けたいね。」
タデイ・ポガチャル(ステージ9位、総合2位)
「正直波状攻撃を仕掛けられてうんざりしたんだよね。だから自分でアタックを仕掛け返したんだよ。そうしたら前にマルチネスが見えたんで、あとは彼の後についていっただけだよ。僕以上に、彼にとっては大きな意味があることだったと思うよ。マイヨ・ジョーヌを手放す決断は簡単ではないよ。でもうちはアルメイダも失って、シヴァコフも体調不良で、戦術的に不利な状況なんだ。だから目的としてはヴィズマ・リースアバイクに戦術的優位を作らせない、が今日の目的だったんだ。だからそういった意味でマイヨ・ジョーヌを手放したのはいい選択肢だったともいえる。最強の人間だって休みは欲しいさ。だから休息日が楽しみだよ。」

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ツール・ド・フランス第10ステージ順位
1位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) 4h20’05”
2位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +09’
3位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +31”
4位 ベン・オコナー(ジェイコ・アルーラ) +49”
5位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +1’23”
6位 ジョー・ブラックモア(イスラエル・プレミアテック) +3’57”
7位 アンデルス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +4’38”
8位 レニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’51”
9位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)
10位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) 37h41’49”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) +29”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +1’29”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’46”
5位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +2’06”
6位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +2’26”
7位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +3’24”
8位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’34”
9位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’41”
10位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +5’03”
H.Moulinette












