ツール・ド・フランス第9st:クラシックの帝王ファン・デル・ポエルの174㎞の大逃げ実らず、スプリント勝負の末に昨日の勝者ミランをねじ伏せ勝利したのはヨーロッパチャンピオンのメリエール!

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チームには戦略というものがある。今大会ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)でのポイント賞狙いで大会に乗り込んできたチームにとって、エースの早期離脱や予定外だった。代わりにクラシックの帝王マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)は自らがステージ勝利と総合リーダージャージを奪取するなど大奮闘を演じた。しかしスプリントステージではリードアウトマンのカデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)で挑んだが及ばず、そこでこの日は大博打の大逃げという手段に打って出た。ファン・デル・ポエルとヨナス・リッカートがなんとスタート同時に飛び出し、スプリンターチームの出鼻をくじく。そして二人はそのまま快調に飛ばしていき、ファン・デル・ポエルは残り700mまで逃げ続けた。

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逃げ切れば歴史に残る大勝利だったが、終盤に猛烈な追走を仕掛けたスプリンターチームの必至な走りが、その可能性を打ち砕いた。残り700mでファン・デル・ポエルを飲み込んだ集団は一気にスプリント勝負へと雪崩れ込んでいく。コース右端を駆け上がったポイント賞リーダーのヨナタン・ミラン(リドル・トレック)に対し、左の開けたスペースへと展開したメリエールは、ヨーロッパチャンピオンとしての威厳を感じさせるしなやかな力強さを見せつけミランをねじ伏せた。これでメリエールは今大会2勝目、それに続いてミラン、更にはアルノー・デ・リー(ロット)はミランにあと一歩まで迫り3位となった。

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総合勢では大木は変動はなかったが、肋骨を骨折しながらも絶対的エースのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)の為にと強行出場をしてきたジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツXRG)だったが、この日の超ハイペースな展開には対応しきれなかった。結局そのままリタイアとなり、ポガチャルは右腕とも呼べる存在を失う大きなハンデを背負う形となった。
この日はスタート同時に飛び出したファン・デル・ポエルとリッカートが中間スプリントも2人で先行通過すると、そのままどんどんとタイムを広げていく。しかしそれでも後続の平均時速は50㎞を超えるハイペース、それを考えれば先頭の2人は驚異的なペースで走り続け、メイン集団との差を最大で5分以上にまで広げた。

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しかしメイン集団はどうしてもスプリント勝負に持ち込みたいチーム、更には横風区間で分断作戦を試すヴィズマ・リースアバイクらによりハイペースを維持し続ける。徐々に縮まっていくタイム差、しかしファン・デル・ポエルもリッカートも諦めない。逃げ切り勝利という大きな目標を掲げた二人だったが、 残り6㎞でリッカートが遂に脱落、ファン・デル・ポエルとメイン集団との差は30秒にまで縮まる。

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それでも諦めないファン・デル・ポエルは粘りの走りを最後まで続けるが、波となって押し寄せるメイン集団はそれをいとも簡単に呑み込んでいった。残り700mでファン・デル・ポエルを吸収したが、どのチームも組織的な隊列が組めない。そんな混沌とした中でもゴールを狙うハンターたちの目の色は変わらず、そしてミランがステージ連勝を狙って動いたが、昨日はメカトラでスプリント勝負に絡めなかったメリエールの勝利への渇望がそれを上回って見せた。
集団に飲み込まれたリッカートとファン・デル・ポエルだったが、リッカートは敢闘賞を受賞、夢だと語っていたツール・ド・フランスでの表彰台を叶えて見せた。
ティム・メリエール(ステージ1位)
「今日は暑かったね。そして残り60㎞からは横風分断作戦などもあって、水分補給が十分にできなかったよ。5分半まで広がった逃げとの差は大きかったし、今日はとにかくレースペースが異常に速かったんだ。横風区間ではリーダーのレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)を守るために動いた上で、最後のスプリントは最高の形に持ち込めたよ。一瞬進路がふさがれたように思えたけど、視界が開けたので、あとはそこに飛び出すだけだったよ。」
ヨナス・リッカート(敢闘賞)
「もうこれで思い残すことなくリタイアできるよ(笑)。もちろん冗談だよ!僕の夢はツールでの表彰台だったんだ。だからそれを狙いたい勝っスタートから二人で逃げようかと冗談で口にしたら、ファン・デル・ポエルがそれを本気でやることにしたんだ。そうしたらもうあとはやるしかないよね。でもステージ勝利は惜しかったね。だけど僕らを追い越していった各チーム監督者が、’よくやった’と皆サムアップをしてくれたんだ。いいチャレンジができたと思うよ。」
マシュー・ファン・デル・ポエル
「リッカートがツールでの表彰台が夢で、それを狙いたいって行くから何かしらの形を狙うために仕掛けたんだよ。ステージ勝利がだめなら敢闘賞、それを彼が狙えるようにできる限りのことをしようと思ったんだ。最後は二人とも力尽きてしまったけどね。こういうコースで二人はしんどかったよ。でもいい挑戦ができたと思うよ。」

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ツール・ド・フランス第9ステージ順位
1位 ティム・メリエール(ソウダル・クイックステップ) 3h28’52”
2位 ヨナタン・ミラン(リドル・トレック)
3位 アルノー・デ・リー(ロット)
4位 パヴェル・ビットナー(ピクニック・ポストNL)
5位 ポール・ペノー(グルーパマFDJ)
6位 ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)
7位 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 ヨルディ・ミーウス(レッドブル・ボーラハンスグロエ)
9位 スティアン・フレッドハイム(Uno-Xモビリティ)
10位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 33h17’22”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +54”
3位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +1’11”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’17”
5位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’29”
6位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +1’34”
7位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +2’49”
8位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’02”
9位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’06”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +3’43”
H.Moulinette
