ツール・ド・フランス第8st:今大会最も動きにないステージに、スプリント勝負を制したのはミラン、ファン・アールトがスプリント参加で2位!総合勢は動かぬ沈黙の一日に

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昨今ポガチャルが台頭して以降、毎ステージ派手な攻撃が繰り返されるイメージがすっかり定着していたが、それ以前のツール・ド・フランスのステージを見ているようだった。総合勢はこの日は完全沈黙、そして展開もスプリンターのゴール勝負になることが予想されることから積極的な逃げ集団形成もないままに、位置取り合戦からのゴールスプリント勝負へと持ち込まれた。スプリントでは昨今厳しくチェックが入り、お互いぶつかり合っての位置取りの中で、ヘッドバッドなども含めてイエロカードや罰金が多く課されるようになった。それでも勝利のためには躊躇なくお互いを体で押しのけ合うのが勝負の世界、このステージでもヨナタン・ミラン(リドル・トレック)はそのフィジカルを活かしてライバルたちを押しやり進路を確保した。そして猛然とゴールへとスプリント、追いすがるクラシックライダーのワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)を抑えて、見事にステージ勝利を挙げて見せた。
ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)がリタイアとなったために代わりにスプリンターへと昇格したカデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)も元はエーススプリンター、期待されたがやはりアシストとエースでは感覚が異なるのか速度が伸びずに3位に沈んだ。また今後ポイント賞争いでライバルとなりうるティム・メリエール(ソウダル・クイックステップ)だったが、残り12㎞でまさかのパンク、そこからハイペースな集団に追いつくも力尽き全く勝負には絡めず、最後は集団から遅れてのゴールとなった。

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この日総合勢は完全に沈黙、無駄な労力は使わないが、しかしライバルたちをけん制し続ける消耗戦を繰り広げた。メンタルでも行われる勝負、蓄積する披露は今後のステージでどのように作用していくのかが要注目だ。
ほぼ平坦のこのステージ、まずは中間スプリント争いで激しいバトルが繰り広げられた。ポイント賞ジャージはまだだれかが圧倒的に優位というわけではない状況、各チームのエースたちがしのぎを削る中、ミランと並んでチーム力で挑んできているのがビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)だ。だがここまでのところ今一つ勢いがなく、中間スプリントでもチームの隊列をミランに利用された挙句トップ通過を許してしまった。

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中間スプリントが過ぎると落ち着きを取り戻した集団は、ただ淡々とゴールを目指して集団走行を続ける。レース中盤にはダイレクトエナジーズが二人の選手をアタックさせ先行させるが、この日のメイン集団はそれを1分以内で泳がせ続ける。逃げ切りなどは夢のまた夢ただひたすら集団の前でひたすらペースを刻んでいった。その後落車がまたしても連発、UAEチームエミレーツXRGは貴重なアシストのマルク・ソレルが落車、また残り12.5㎞ではメリエールがメカトラと主力選手たちにもトラブルが続出する。
そして残り15㎞を切ると一人、また一人と逃げが捉まり、いよいよレースはスプリントへ向けた動きが加速する。コース上に設置されたロードファニチャーと呼ばれる構造物やランドアバウト(ロータリー)などが繰り返すコース設定は思いのほかハードであり位置取り争いは激化する。そして何度となく入れ替わりを繰り返しながら、最後はマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)のリードアウトからグローヴスがコース左側へと展開、そしてその背後につけていたミランが逆サイドに展開すると、緩やかなカーブのど真ん中をミランが豪快に駆け上がる。それについていったのはその更に後ろからスプリントをしたファン・アールトだった。

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結局ミランが力で押し切る形で勝利、何度となくその体格の良さを利用して進路を切り開くなど、多少強引とも思える走りだが、これもまたレース、自らの身体的特徴をしっかりと利用して勝利をもぎ取り、これで繰り上げでのポイント賞ジャージではなく、正真正銘ポイント賞でも首位に立った。
ヨナタン・ミラン(ステージ1位)
「何が起きたのかまだ実感がわかないよ。ツールにはもちろん勝利を夢見てきたけど、それが実際に達成できるかは全く別のことだからね。これまで何度もあと一歩で勝利というところまで来ていたから、ようやく勝利がつかめたよ。今日はとにかく勝利一本に賭けていたんだ。あとは我慢に我慢をして飛び出したんだよ。今日はチームの頑張りのおかげで得られた勝利だよ。」

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ツール・ド・フランス第8ステージ順位
1位 ヨナタン・ミラン(リドル・トレック) 3h50’26”
2位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
3位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
4位 パスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック)
5位 アルノー・デ・リー(ロット)
6位 トビアス・ルンド・アンデルセン(ピクニック・ポストNL)
7位 ブライアン・コカード(コフィディス)
8位 アルベルト・ダイネーゼ(チュードル・プロサイクリング)
9位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(EFエデュケーション・プロサイクリング)
10位 スティアン・フレッドハイム(Uno-Xモビリティ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 29h48’30”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +54”
3位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +1’11”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’17”
5位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’29”
6位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +1’34”
7位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +2’49”
8位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’02”
9位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’06”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +3’43”
H.Moulinette












