ツール・ド・フランス第7st:レース前の宣言通りポガチャルがステージ勝利!またしても総合リーダーに返り咲き、しかし右腕のアルメイダが落車で肋骨亀裂骨折、エヴァネポエルも踏みとどまる

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「ミュール・ド・ブルターニュ、ブルターニュの丘で勝利したい。」レース前にそう口にしたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)がその言葉通りステージ勝利を明確に狙い、そしてライバルを圧倒し、見事に上りゴールを時速55㎞でスプリントする驚異のパワーを見せつけ今大会2勝目を挙げた。しかしその過程で残り5㎞でチームメイトにしてポガチャルの右腕ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツXRG)が激しく落車して怪我を負ったことで、純粋に喜べない勝利となってしまった。アルメイダは検査の結果肋骨の亀裂骨折と左手指の裂傷、総合でも7位から大きく順位を落としたが、引き続きレースに出場し続ける意思を表明している。
そんなポガチャルと最後まで競い合ったのはヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)、懸命の走りでポガチャルに食らいついたが、前に出ることはできなかった。そしてもう一人の総合優勝候補、レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)は最後まで駆け引きは続けたものの最後のスプリントは全く脚が残っていなかった。結局ステージ6位に終わり、ポガチャルとのタイム差はボーナスタイムも含めてさらに広がる形となった。

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最後のポガチャルの仕掛けについていけたのは、最後で驚異的なアシストをしたヨナタン・ナルバエス(UAEチームエミレーツXRG)を含めて8名のみ、フロリアン・リポウィッツとプリモズ・ログリッチのレッドブル・ボーラハンスグロエコンビらは遅れた第2集団でのゴールとなり、またしても総合タイムでは突き放される形となった。現実的にログリッチに関しては総合優勝争いの可能性は早くもかなり厳しいところまで来ている。
今大会ペースが遅いステージが続いていたが、このステージはとにかくその逆でペースが速かった。昨日ほどではないが、この日もまさにクラシックのようなコースレイアウト、最後はミュール・ド・ブルターニュを2度上ってゴールするという197㎞の長丁場だ。そんな中でも最初の1時間を平均時速53.9㎞という超高速で集団は駆け抜けていく。そしてその後ようやくこの日の逃げが容認される。

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今大会が最後のツール・ド・フランスとなる元覇者のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)ら5人が逃げ集団を形成、この日のペースメーカーとなる。しかしこの日はポガチャルが「狙う」と宣言していた通り、UAEチームエミレーツが積極的な集団コントロールを見せ、逃げ集団との差を射程圏内に保ったまま、終盤20㎞に詰め込まれた山岳ポイントのある丘を目指す。中盤では大きな動きなく、ただひたすら逃げとメイン集団によるハイペースレースが展開され続けた。
そして迎えたこの日最初のミュール・ド・ブルターニュ、逃げはイーウェン・コストー(アルケアB&Bホテルズ)ただ一人を残してすべて追ってきたメイン集団に吸収され、Gトーマスもここで飲み込まれていく。それと同時に総合勢を含むこの集団も大きく人数を減らし30名ほどにまで人数を減らした。そして頂上からの下りでワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)がペースアップ、最高時速90㎞近くでコーナーをクリアしていき、残り12㎞で遂にコストーを捉える。

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人数を減らしたメイン集団はそのままステージ優勝争いへと突入していく。ペースを上げるヴィズマ・リースアバイクに対し、虎視眈々と狙うはポガチャル、更にはマイヨ・ジョーヌのマシュー・ファン・デル・ポエルも昨日の疲れが残る中でまだ残っている。すると今度はティム・ウェレンス(UAEチームエミレーツXRGがペースアップ、総合優勝を狙うポガチャル、ヴィンゲガード、エヴァネポエルの3名が集団前方で顔を揃える。だがこのペースにさすがにファン・デル・ポエルはついていくことができずに脱落していってしまう。
しかしここで予期せぬハプニングが起きる。アルメイダや昨日の勝者ヒーリーらが雪崩のように落車、これによりポガチャルは予定していた最後のリードアウトを失うこととなってしまう。それでも集団のペースは落ちることなく展開、残り2㎞を切ってからはエヴァネポエルが先頭に立ちミュール・ド・ブルターニュ最後の上りのペースをコントロールしていく。だが右腕を失ったはずのポガチャルに、新たなアシスト、ナルバエスが登場、一気にポガチャル優位な状況となる。そのままナルバエスは残り150mまでペースを上げポガチャルを発射、勢いよく飛び出したポガチャルはそのままゴールでガッツポーズを決めた。唯一対応しきったヴィンゲガードのみ同タイム、エヴァネポエルは2秒遅れでのゴールとなった。
このステージではオスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL)がステージ3位、総合でも7位へとジャンプアップを果たし、今大会での総合トップ10入りの可能性を見せた。更には好調のケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)も好調を維持、ステージ7位で総合3位へとジャンプアップを果たした。来季へ向けたスポンサー探しが難航しているチームにとっては、この活躍は大きな結果へとつながるかもしれない。

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タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「総合リーダージャージは欲しいわけではなかったんだけど(この日の段階で)、どうしても今日のステージは勝利したかったんだ。だから今日はジャージのためではなくあくまでも勝利優先だったんだ。勝てたことは嬉しいし、素直に喜びたいところだけど、アルメイダの様態が気になるよ。ファン・デル・ポエルとここでお互い激戦を繰り広げたんだけど、今日もそれを予想していたんだけど、彼は昨日の疲れが出たんだろうね。僕は今日は完璧に予定通り勝利を奪い取れたよ。」
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ2位、総合4位)
「ステージ2位でも普段なら納得するんだけど、今日はミスがあり、勝てたかもしれないと思うから悔しいよ。もし僕のほうが先にスプリントを開始していたら、結果は違ったかもしれないよ。」

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マシュー・ファン・デル・ポエル(総合5位)
「疲れだね。4年前はここが第2ステージだったんだけど、今日は現役最強の選手たちについていかなきゃならなかったからね。今日の僕にはその脚がなかったよ。予想通りの展開ではあったけど、でも最初のミュール・ド・ブルターニュでは遅れそうになってしまったよ。でもそうなれば2度目はもっと速くなるのわかっていたから、しんどいだろうなとは思ったよ。」
ツール・ド・フランス第7ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 4h5’39”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)
3位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +02”
4位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル)
5位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)
6位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
7位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)
8位 ヨナタン・ナルバエス(UAEチームエミレーツXRG) +07”
9位 アクセル・ローランス(イネオス・グレナディアス) +15”
10位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +21”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 25h58’04”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +54”
3位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +1’11”
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’17”
5位 マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’29”
6位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +1’34”
7位 オスカル・オンレイ(ピクニック・ポストNL) +2’49”
8位 フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’02”
9位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’06”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +3’43”
H.Moulinette












