ジロ・デ・イタリア第21st:新天地での初グランツールのサイモン・イェーツが2度目のグランツール制覇!2018年の忘れ物を直接バトルで力技で奪取!コーイが最終ステージを制しヴィズマ完遂


©Giro d’Italia
遂に幕を閉じた今年最初のグランツール、最終日は新ローマ法王とレオ14世が登場し選手たちを激励するなど、例年になく荘厳な最終日となった。
総合優勝争いの結末は昨日のまさかの総合1位と2位の想像以上の泥仕合により、その間隙を縫ったサイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)が鮮やかに大逆転、そのまま総合優勝という想定以上の結果となった。双子の兄アダム・イェーツがUAEチームエミレーツXRGでタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)の最強アシストとして活躍する中、伸び悩んだサイモン・イェーツは今シーズンからポガチャルの最強ライバル、ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)のヴィズマ・リースアバイクへと移籍、アダムと同じく最強アシストへと歩みを進めるかに思われた。ところが最初のグランツールでエースのポジションを与えられると、いきなりのこの大逆転勝利、本人も昨日は驚きと困惑の表情を見せていたが、この日は納得の表情でゴールを果たした。結局昨今のグランツールではなかなか見られない、ステージ勝利なしで総合優勝を果たす形となった。2018年にクリス・フルームに逆転で奪われ表彰台すら逃したあの苦い思い出を、自らの力で払拭して見せた。

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これでチームは一昨年全てのグランツールを勝利する驚異のスイープをして以来の勝利、昨年度はタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)とプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)に奪われたが、今年は最高の形でグランツール初戦を締めくくった。また最終ステージでもスプリントでオラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク)が勝利、これでチームはステージ3勝目となった。
新人賞ジャージも獲得したのは総合2位はアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)、何とも後味の悪い昨日の走りだったが、本人はどこ吹く風、笑顔で大会を終えた。また同時に、多くの選手にとっては総合優勝は人生に一度かもしれない千載一遇のチャンスだが、”まだこれからいくらでも狙える”、という強気のスタンスは、今後大きく花開くこととなるのか、これからの走りに注目だ。
対して昨日そのデル・トロの走りにいら立ちを見せたリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)は3位に終わった。表彰台こそ獲得したが、総合優勝を自ら手放したデル・トロの巻き添えを食らった形に、不満は残りそうだ。年齢的にサイモン・イェーツと同じ32歳、若手の台頭著しい中でそこまでチャンスは多くないだけに、今回の結果については納得はしていないだろう。しかしそこは歴戦のベテラン、レース後のインタビューでは慎重に言葉を選びながらコメントを残した。

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山岳賞を獲得したのはロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)、降格圏争い真っただ中のチームにおいて、グランツールでの山岳賞獲得は大きな結果と言えるだろう。積極性全開で大会序盤からポイントを荒稼ぎし、通常山岳バトルが始まると総合上位勢が獲得することが多い賞だが、それが始まる前にほぼ決着してしまうほど圧倒的に山岳ポイントを連日奪い続けた走りは、今大会最も際立った走りと言えるだろう。
ポイント賞も今大会序盤で決まったと言っても過言ではない。今大会前半戦暴れまくったのはトレック・セガフレド、そのエーススプリンターのマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)はステージ4勝、さらにはその他のスプリントステージでも常に上位に入るなど、今まさに脂の乗り切った状態だ。春先のクラシックからの好調も維持しており、今シーズンどこまで勝利数を伸ばすのかが楽しみだ。そして山岳ステージでも献身的にチームのエースジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)を牽引、エースがリタイアすると今度はマイステージのように逃げに乗るなど、ある意味やりたい放題に走りまくった大会だったと言えるだろう。
チーム総合はUAEチームエミレーツXRGが制した。総合力の高さは折り紙付きで、ほとんどの選手がほかのチームであればエース格となりうるメンバーがアシストとして君臨するあたり、チームの層の厚さがうかがえるだろう。ただ最終的に一番肝心の第20ステージではそれが機能しきらなかったのは痛恨の極みと言えるだろう。

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サイモン・イェーツ(総合1位)
「正直驚きが先に立っているよ。でもようやく実感がわき始めているよ。僕は普段どちらかと言えばポーカーフェイスで感情をあまり表に出さないほうなんだけどなんだけど、昨日はその感情が抑えきれなかったよ。この勝利のためにどれだけトレーニングをして、どれだけ我慢をしてきたかを考えても、総合勝利という実感はなかなか追いついて来なかったよ。でもそれが徐々に実感へと変わっていっているよ。最終ステージも勝利出来て、皆至福の時を過ごしているし、チームとして成し遂げたことの大きさを今リアルに感じ始めているよ。そしてこの先、次何を成し遂げられるかだね。移籍という大きな決断をして、環境を変えたことは本当に僕にとって大きな一歩となったよ。」
アイザック・デル・トロ(総合2位)
「僕は何も間違ったことはしていないよ。勝利を逃したことは残念だけど、それでも総合2位という順位は自分でも驚くべき成果だと思っているよ。次は勝利を狙いにまたジロに戻ってきたいね。
リチャード・カラパズ(総合3位)
「皆同じ土俵に上がっていたからね。誰もが勝利を望んだはずだよ。でも勝者は一人しかいないんだよ。その結果あのような形での決着になってしまったという事さ。総合3位はチームとして全力を注いだ結果であり、誇るべきものだと思うよ。チームとしては喜ばしいことだよ。この3週間全力を尽くし、僕個人としてはこれで何かが変わるわけではないよ。時に勝利し、時に敗北する、これがロードレースという勝負事だよ。このチームに移籍しての3年間、グランツールでの表彰台をチームとして目指してきて、それが一つの形になったことは喜ばしいね。」

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ジロ・デ・イタリア第21ステージ順位
1位 オラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク) 3h12’19”
2位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 マッテオ・モシェッティ(Q36.5プロサイクリング)
4位 マッズ・ピーダースン(リドル・トレック)
5位 ルーク・ランペルティ(ソウダル・クイックステップ)
6位 マックス・カンター(XDSアスタナ)
7位 フィリッポ・バロンチーニ(UAEチームエミレーツXRG)
8位 オールイ・アルラール(モビスター)
9位 エンリコ・ザノンチェロ(VFグループバルディアーニCSFファイザネ)
10位 ジョバンニ・ロナルディ(ポルティ・ヴィジットマルタ)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) 82h31’01”
2位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) +3’56”
3位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’43”
4位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +6’23”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +7’32”
6位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +9’28”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +12’42”
8位 アイナー・ルビオ(モビスター) +13’05”
9位 ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツXRG) +13’36”
10位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +14’27”
山岳賞
ロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)
ポイント賞
マッズ・ピーダースン(リドル・トレック)
新人賞
アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)
チーム総合
UAEチームエミレーツXRG
H.Moulinette