ジロ・デ・イタリア第19st:総合バトルはカラパズとデル・トロの一騎打ちに!デルトロまたしても先着でライバルたちを突き放す、ステージ優勝は逃げ切りでプロドムが念願のワールドツアー初優勝

総合優勝を巡るバトルが勃発することが予測されたこのステージ、各チームの主導権争いは激しく行われ続けた。そんな中今大会総合優勝を狙うためにメンバーを選出してきたUAEチームエミレーツXRGの強さが発揮された。だがこの日も積極的に攻撃的な走りを見せたのは総合2位のリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)だった。だがこの日は決定的なアタックを仕掛けるには至らず、またしても総合リーダーのアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)に対応されてしまう。だがカラパズのアタックはそれ以外のライバルたちをまたしても脱落させるには十分だった。

©Giro d’Italia
しかしステージ優勝は逃げ集団から飛び出し単独走になりながらも最後までこらえ続けたニコラス・プロドム(デカスロンAG2Rラモンディアル)が奪い去った。今シーズン28歳にしてプロ初勝利を先日ツアー・オブ・アルプスで上げたばかりだったが、その勢いのままにワールドツアーでも勝利、プロ2勝目がワールドツアー、しかもそれがジロ・デ・イタリアと遅咲きの男が躍動している。

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そしてその背後に迫ったカラパズとデル・トロはまたしてもデル・トロが制し2位でゴール、これによりまたしてもボーナスタイムを獲得、じわりとカラパズとの差を広げるとともに、それ以外のライバルたちを突き放すことに成功した。これでカラパズとのタイム差は43秒まで広がったが、まだまだ安全圏とは言えないタイム差だ。総合3位のサイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)以下は2人から24秒差でゴールしたが、これに加えボーナスタイムの影響もあり、サイモン・イェーツが1分21秒差、総合4位のデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)が2分27秒差まで広がった。残す第20ステージで、この二人が大逆転を狙うには、UAEチームエミレーツXRGの集団コントロールを突き抜けるようにアタックを積極的に仕掛けるしかなさそうだ。

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第19ステージは総合争いの為に、総合上位を狙うチームは選手を逃げに送り込む作戦に出る。この日は5つの山岳を超える難関ステージ、先行するアシストが要所で下がり選手たちをアシストするという形をとるため、EFエデュケーション・イージーポストはゲオルグ、ステインハウザーを逃げに送り込んだ。プロドムもこのアタックに便乗、まずは4人の逃げが僅かに先行する。そして背後から33人の大所帯が合流し、この日の逃げとなった。
しかし戦略的な思惑もあり、この逃げは大きな差は許してもらえない。さらにこの逃げには総合15位まで順位を下げていたアントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)も入っており、総合5位のダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)のアシスト兼逃げ切れたら逃げるし総合もジャンプアップを狙うという複合的な戦略が入ったことで、ライバルたちはなおの事大きなタイム差を許すことをしなかった。

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そして逃げ集団も実力差もあり協調はしきれない。そうなれば新たなアタックがそこから発生するのは時間の問題だった。そして早々とプロドムが二つ目の山岳で飛び出していった。そして3つのも1級山岳ではカルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)、チベリと共に逃げ切りを狙うが、この段階でメイン集団は早くもペースを上げその差を詰めてきてしまう。これでは逃げ切りは困難か、と思われたが、ここからプロドムは粘りの走りを見せ、残り7.2㎞からは一人旅へと突入していく。

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その頃メイン集団ではUAEチームエミレーツXRGがその本領を発揮し、パワーアシストでペースを上げると、ライバルチームのアシストたちは次々と遅れていってしまう。気が付けば前から落ちてきて合流したチベリを含めてもわずか12名となってしまう。
タイム差が縮まれど、勝負への欲求、そして勝利の渇望はプロドムを突き動かし続けた。そのまま最後まで追いつかれることなく軽やかに走り続け、見事独走で勝利を決めた。そしてそれに迫って来た総合系の選手たちは大きなアタックが起きないままに進んだが、最後の上りでようやくカラパズがアタックを仕掛けるが、デル・トロはこれに余裕で反応、残り距離が少なかったこともあり決定打にはならなかった。しかしこのアタックでサイモン・イェーツ、ジーらが脱落、総合勝負はまたしてもカラパズとデル・トロの南米2人による駆け引きとなったそしてデル・トロが先着、無駄なく最低限の対応で総合リーダージャージをキープして見せた。

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ニコラス・プロドム(ステージ1位)
「ステージ勝利を狙いたかったんだよ。本当に長い時間がかかったよ。3週間前にプロ初勝利を挙げて、そしてこうして世界最高峰のジロ・デ・イタリアで勝利できるなんて最高の気分だよ!チームの今大会の目標はステージ1勝だったので、これで何とか目的は果たせたよ。きょうはリスクをとるべき日だったよ。 今大会ステージトップ5が2度もあったけど、でもそこではリスクを取っていなかったから勝利に届かなかったんだ。でも今日はどうしても勝ちたかったからね。」
アイザック・デル・トロ(ステージ2位、総合1位)
「最高だよ!まだ自分自身がマリア・ローザを守れているという実感がわかないよ。でもこれもすべてチームメイトたちのおかげでだよ。彼ら抜きには今のこのポジションはあり得ないからね。」
ジロ・デ・イタリア第19ステージ
1位 ニコラス・プロドム(デカスロンAG2Rラモンディアル) 4h50’35”
2位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) +58”
3位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)
4位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’22”
5位 ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツXRG)
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
7位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)
8位 ラファル・マイカ(UAEチームエミレーツXRG)
9位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 アイナー・ルビオ(モビスター)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 73h47’59”
2位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +43”
3位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’21”
4位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +2’27”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’36”
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +5’13”
7位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +5’32”
8位 アイナー・ルビオ(モビスター) +6’39”
9位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +9’11”
10位 ブランドン・マクナルティ(UAEチームエミレーツXRG) +9’33”
H.Moulinette