ジロ・デ・イタリア第17st:絶え間ない総合バトル!デル・トロが遂にジロ初勝利!残り1.7㎞でキレキレの下りアタック一撃で決着!攻める男カラパズはステージ3位で逆転で総合2位

本来総合バトルがここまで派手に勃発するとは思わなかった。しかしレースはいつ何時動き出すかわからないのだ。この日はカラパズのアタック、さらにはデル・トロもアタックとお互いに相手の出方を伺うようなアタックが繰り返された。そしてその結果最終盤でレースの先頭はマリア・ローザのアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)、さらに総合3位のリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、そして逃げの生き残りロメイン・バルデ(ピクニック・ポストNL)が僅かなリードを保ってゴールへと向かっていく。それを追走するのはサ総合2位のイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)、総合4位のデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)、総合5位のダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)らが追いすがる。だが先頭の3人はレース巧者だった。

©Giro d’Italia
僅かなタイム差が近くて遠い差、そして残り1.7㎞でこれ以上ない鮮やかすぎるアタックが決まる。総合リーダーのデル・トロは残り2㎞で後ろを振り返りコーナーで僅かに差が開くのを確認すると、次のコーナーで躊躇なく攻めのコーナリングを見せる。減速を最低限に回り、コーナーを抜ける直前にペダルを踏みだす最高のテクニックで一気にカラパズを突き放した。追いすがるカラパズだが、一度ついてしまったその差はゴールまで縮まることはなかった。そのままデル・トロは自身初のステージ優勝を総合リーダージャージを着用したまま決めただけではなく、ボーナスタイムも獲得、これにより一気にライバルたちを突き放すことに成功した。カラパズはバルデとのスプリントに敗れ3位に終わったが同じくボーナスタイムを獲得、サイモン・イェーツを逆転して総合2位へと順位を上げた。また昨日ログリッチのリタイアで急遽エース格となったジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)はこの日も好調、総合9位からさらに順位を上げて総合7位へとジャンプアップを果たした。この走りを見れば、今後レッドブル・ボーラハンスグロエの総合系エース格に指名されそうだ。
昨日は上りで苦しみタイムを失ったデル・トロだったが、プレッシャーを楽しんでいると思える21歳は、躊躇ない攻撃を披露、歴代最強のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)の下位互換にさえ見えるそのメンタルと走りは、今後の成長が非常に楽しみだ。

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第17ステージは逃げ切り容認の可能性もあり、スタート直後からポイント賞ジャージのマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)が積極的な動きを見せる。そしてようやく決まった39人の逃げには、もちろん山岳賞ジャージのロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)も含まれていた。更にはダニ・マルチネス(レッドブル・ボーラハンスグロエ))、バルデといった山岳系の選手も多く逃げに乗り、この日の逃げは安泰になるかと思われた。

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しかし1級山岳のモルティロロに突入すると状況は一変する。メイン集団内での動きが一気に活性化、まずは総合8位のアントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)がいきなり脱落してしまう。更にはペリッツァーリがアタックを仕掛け一気にメイン集団の人数を減らすと、追い打ちをかけるようにカラパズがアタック、これで集団のペースは一気に上がり、逃げ集団との差はぐんぐんと縮まり始める。
そんな中先頭では山岳賞ポイントを荒稼ぎしているフォーチュナトが、この日はステージ優勝を狙うための動きを見せる。この動きに反応したマルチネスらにより、逃げ集団は完全に細切れに分断され、それぞれが思惑を持ってステージ優勝を狙うための走りに徹することとなった。この段階でメイン集団とのタイム差は2分30秒ほどまでに縮まっており、逃げ切り勝利は一気に黄色信号へと変わっていく。
モルティロロからの下りでカラパズは追いつかれてしまうが、これも戦略の一つなのか、アシストも逃げから合流し余裕の表情を見せる。するとここでUAEチームエミレーツXRGもアシストを合流させペースを刻み始める。ライバルたちにカウンターアタックをさせないためのハイペースで、次々と先頭の逃げ集団の残党を処理していく。だがバルデは切れ味鋭いアタックで先頭に飛び出すと、そのまま独走で勝負を仕掛ける。
そしてメイン集団はルビオのアタックをきっかけにまたも活性化すると、満を持してデル・トロが残り9㎞でアタックを決める。上りでの切れ味鋭いアタックに対し対応できたのはカラパズのみ、そしてサイモン・イェーツらはこれを見送る形となる。だがタイム差はあまり大きくは開いてはいかない。そして二人はバルデを吸収すると3人でゴールを目指すこととなる。追走も追いつけそうな15秒差前後を保つが、その差を詰めるほどの加速ができない。デル・トロはライバルたちの状況を見透かしたかのような微妙な距離感を保ちながら積極的に先頭を牽引、そして残り2㎞を切りカラパズとバルデをも引き離して勝利、総合リーダーが勝つべくして勝って見せた。

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後続の集団も総合上位勢のみの集団でゴール、この日ステージ8位に入ったルビオは総合でもトップ10入りを果たし総合8位へと順位を上げた。総合勢トップ10はこの日も入れ替わりが発生、第17ステージまで来てもまだ僅差の中で選手たちがひしめき合っている激戦が続いている。
アイザック・デル・トロ(ステージ1位、総合1位)
「僕ら人間だし、そりゃついていない日だってあるさ。だからしょうがないと思うし、それを受け入れるし、考えないようにするのさ。だから昨晩は今大会で一番ぐっすりと眠れたよ。そうやってメンタルを強く持つことが勝負事には必要なことなんだよ。そしてマリア・ローザを着用してステージ勝利を挙げるのを想像はできていたよ。表彰台を目指すバトルはまだまだ緊張感もあって激しいし、僕自身もネバーギブアップでいくはつねにしょうりをいめーじしてはしっているし、今の僕には失うものは何もないからね。今日も機能と比べても同じくらいきつかったよ。カラパズが狙っているのはわかっていたし、僕らも最後では仕掛ける予定ではいたからね。」
デレク・ジー(ステージ6位、総合4位)
「じっくりとライバルたちを観察していたけど、僕には何もできなかったよ。デル・トロとカラパズが一気に仕掛けて、そのわずかな差は僕ら総合勢が束でも全く詰めることができなかったよ。ああいうパンチ力の求められる展開は不得意だよ、どちらかと言えば長くダラダラとしているほうが得意だからね。」
ジロ・デ・イタリア第17ステージ順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 3h58’48”
2位 ロメイン・バルデ(ピクニック・ポストNL) +04”
3位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)
4位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +15”
5位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +16”
6位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)
7位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 アイナー・ルビオ(モビスター)
9位 マックス・プール(ピクニック・ポストNL)
10位 アフォンソ・イウラリオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +56”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 65h30’34”
2位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +41”
3位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +51”
4位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +1’57”
5位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’06”
6位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +4’43”
7位 ジュリオ・ペリッツァーリ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +5’02”
8位 アイナー・ルビオ(モビスター) +6’09”
9位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG) +7’45”
10位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +7’46”
H.Moulinette