ジロ・デ・イタリア第15st:昨日エース失ったリドル・トレックが切り替えステージ狙いでヴェローナがチーム6勝目!デル・トロがライバルの波状攻撃を自ら退ける、ログリッチ連日のタイムロス


©Giro d’Italia
やはり今大会一番調子のいいチームはリドル・トレックだった。昨日の集団落車でチームのエースであるジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)を失い、ステージ狙いに切り替えざるを得なかったが、その最初のステージでアシスト職人のカルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)が会心の勝利を挙げて見せた。この日最初の逃げに乗り損ねたヴェローナだったが、ステージ中盤の巨峰、モンテ・グラッパの15㎞の上りでまさかのアタックを敢行し、逃げ集団へと合流を果たして見せた。逃げに乗ったカルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)はそこから残り40㎞、パッソ・ドリの上り初めで絶妙なタイミングで飛び出しゴールまで逃げきって見せた。今シーズンから新天地であるリドル・トレックに移籍したヴェローナは、自身プロ2勝目をグランツールでのステージ勝利というビッグタイトルで飾った。あまりにも鮮やかな走りでこれで今大会チームは6勝目となった。
そして総合勢のバトルももちろん勃発することとなった。残り29.1㎞、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)がチームメイトの牽引から一気にアタックを仕掛けると、総合リーダーの・デル・トロを始めとする総合上位勢は食らいついていく。カラパズ、さらにイーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)、さらにカラパズと波状攻撃のようにアタックが繰り返されるが、デル・トロは自らが対応する。更に今度はデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)、サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク)と波状攻撃が繰り返されるが、これもデル・トロが自らあっさりと対応してしまう。圧倒的に余裕があるように見えるデル・トロの走りに、ここでようやく集団は沈静化する。
ただこのアタックの応酬が始まった最初のカラパズのアタックでプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)、トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)は遅れてしまい、アタックの鎮静化までに1分のタイムを失ってしまう。一旦は遅れたホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG)は下りでチームメイトらと共にデル・トロのいる集団に復帰、するとここからUAEチームエミレーツXRG、更にはバーレーン・ヴィクトリアスがペースを上げ完全にログリッチを脱落させるモードに入っていく。最大の優勝候補だったログリッチに対し、各チームは警戒感を見せ完全に息の根を止める勢いで協調体制が始まる。

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結局このステージで1分半のタイムを失ったログリッチは、これで一気に3分53秒遅れの総合10位まで順位を下げた。休息日前最後の山岳ステージでまさかのタイムロス、ログリッチは落車からの痛みを訴えており痛みに耐えながらの走りとなった。しかしこの日はライバルたちの活性と脚力がそれを攻め立てることとなった。
このステージは今大会2番目に長いステージ、ステージ中盤に超級山岳が控えるハードなステージだ。翌日が休息日というのもあり躊躇なく仕掛けられるだけに攻撃的なステージが予想された。しかしなかなか逃げが決まらず、スタートから60㎞を超えてようやく35名の大所帯の逃げが決まった。山岳賞ジャージを着用するロレンツォ・フォーチュナト(XDSアスタナ)はこの日ももちろん逃げに乗る。そして最大のモンテ・グラッパに突入するとあっという間に逃げ集団は崩壊、しかし明確な目的意識を持ったフォーチュナトはこの日も先頭通過を果たし、これで山岳ポイントをさらに追加し、早くも今大会の山岳賞ジャージがほぼ確定的となった。

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この上りで新たなアタックが勃発、ヴェローナら10名が飛び出していく。しかしこの山岳でタイミング悪くアユソがメカトラに見舞われる。このタイミングでメイン集団をけいんインしていたのはUAEチームエミレーツXRG、チームはしっかりとペースをコントロールし、アユソの復帰を待った。この間合いがヴェローナに先頭への合流を後押しした。更にヴェローナはここから単独アタックを決めると、僅かなタイム差を常に維持し続けた。
僅か数十秒のタイム差、だがそれを誰も追いつくことはできなかった。総合上位勢もタイム差を最後は29秒差まで詰めたが、この日の主人公はヴェローナだった。
これで休息日明けには鋸の歯のような山岳、さらには頂上ゴール争いとなる。失ったタイムを取り戻すためにログリッチが動くのか、だがもしかしたらこのままリタイアもチームはちらつかせており、ログリッチの動きには結局注目が集まることとなりそうだ。

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カルロス・ヴェローナ(ステージ1位)
「自分自身は絶好調だったし、ピーダースンとチッコーネのアシストに全霊を注ぐことに納得していたんだよ。でも昨日それが変わってしまっったんだけど、でも自分のために走るというよりはチームのために走ったよ。エースのチッコーネがどれだけチームのために走ってくれていたかを見ていたからね。今日最初の逃げに乗ろうと思ってたんだけど、ぎりぎりで乗り損ねたんだよね。だからモンテ・グラッパでは躊躇なくアタックしたんだよ。」
ロレンツォ・フォーチュナト(山岳賞)
「今日はモンテ・グラッパの先頭通過が目的だったんだよ。そしてステージも狙えたらと思たんだよね。でもここまでポイントが稼げたので、次はアイコニックな山岳ステージで勝利を狙いたいね。」

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アイザック・デル・トロ(総合1位)
「チームは素晴らしかったよ。ライバルたちのアタック、アレンスマン、ベルナル、カラパズがアタックを仕掛けてきたから対応し続けたんだよ。この一週間は本当に夢のようだよ。毎日自信がついていくし、やりたいと思うことが全部出来ているんだ。母国が応援してくれているのがさらに背中を押してくれているよ。まだ僕は若手だけど、自分にとってのアイドルと言える選手たちと一緒に競い合えているのは本当に楽しいんだよ。」
ジロ・デ・イタリア第15ステージ順位
1位 カルロス・ヴェローナ(リドル・トレック) 5h15’41”
2位 フロリアン・ストーク(チュードル・プロサイクリング) +22”
3位 クリスチャン・スカローニ(XDSアスタナ) +23”
4位 ロメイン・バルデ(ピクニック・ポストNL)
5位 ニコラス・プルドム(デカスロンAG2Rラモンディアル)
6位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ)
7位 ジャンマルコ・ガロフォリ(ソウダル・クイックステップ) +26”
8位 フィリッポ・フィオレッリ(VFグループバルディアーニ・CSFファイザネ) +29”
9位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス)
10位 マックス・プール(ピクニック・ポストNL)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 55h54’05”
2位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’20”
3位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +1’26”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’07”
5位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +2’54”
6位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’55”
7位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’02”
8位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +3’38”
9位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +3’45”
10位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’53”
H.Moulinette