ジロ・デ・イタリア第14st:雨の路面で総合勢に大波乱!リドル・トレックの隊列落車でチッコーネ脱落、分断で漁夫の利はデル・トロ!ログリッチ母国凱旋もタイムロス、アスグリーン逃げ切り勝利


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位置取りというのがいかに重要か、そして運という要素がそこに加わった時にどんなことが起きるのか、それが明確に表れたステージとなった。逃げを追走していたメイン集団が、残り23㎞の左コーナーで細い路地に入ったところでペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)の落車をきっかけに多くの選手たちがそこへ突っ込み集団落車が発生した。これに一番酷く巻き込まれたのは今大会ここまで大躍進をしていたリドル・トレック、この日も狙っていたマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)のみならず、総合エースのジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)はなかなか立ち上がることができず、再スタートは切ったが、ステージ終了後リタイアとなった。

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この落車に巻き込まれなかった一握りはエースのサイモン・イェーツを擁するヴィズマ・リースアバイクだったが、そこに一度は落車に巻き込まれたがすぐ再スタートを切った総合リーダーのアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)は素早く合流することができた。ヴィズマ・リースアバイクはこの日のステージを狙っているためペースを落とすどころかペースを上げて先頭の逃げを追走するが、この集団に残れた総合上位勢は少なく、サイモン・イェーツ、デル・トロ、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)らしかおらず、彼らはステージを狙うカデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)とオラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク)の動きに便乗し、完全に漁夫の利で総合争いで大きなタイムアドバンテージを得ることとなった。
プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)、ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG)、イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)らは追走集団を形成、タイムロスを抑えるべく必死の追走となる。しかしデル・トロのいる追走集団が別の思惑に引っ張られ、総合上位争いのための紳士協定、不可抗力による分断を待つという意思はなく、結果として大きくタイムを失う結果となってしまった。そして昨日までの総合3位アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス))は更に後方に取り残されたため、チームメイトの力を借りて更なる追走を余儀なくされるが、さらに大きくタイムを失う結果となってしまった。これで総合優勝争いは大きく影響を受け、予測していなかったステージでの大シャッフルとなった。この日のステージは母国スロヴェニア凱旋レースとなったログリッチにとっては個人TTで稼ぎ出したタイムをそのまま吐き出す形となり、総合争いで一気に不利な状況となった。
これで総合2位にサイモン・イぇーツが浮上、アユソが3位へと後退、カラパズが総合4位へ、ジーが6位へとジャンプアップを果たした。ログリッチは順位こそ落とさず5位をキープしたが、大混戦となっている。

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この落車の恩恵を受けたのは逃げていた先頭集団にいたキャスパー・アスグリーン(EFエデュケーション・イージーポスト)だった。追走の手が一旦緩んだことでタイム差が縮まらず、ゴール間での優位を保ちステージ勝利を挙げた。
ジロ・デ・イタリア第14ステージ、誰が山岳ステージ前のスプリンター向けステージで総合上位勢に波乱が起きると想定しただろう。でもこれがレースなのだ。そんな予測不能な展開が起きるこのステージ、逃げ切りの可能性も想定されただけにスタート直後から激しいアタックの応酬となった。そんな中アスグリーンは単独で逃げ続ける選択をすると、そこに4人が合流し5人の逃げが確定するかに思われたが一人脱落し、結局4人の逃げとなった。

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この日はヴィズマ・リースアバイクとアルペシン・ドゥクーニンクが終始支配、ペースをコントロールしステージ優勝を狙い続ける。逃げが一人数を減らし3人になる中、残り23㎞で落車が発生、総合上位勢の運命をもてあそぶこととなった。何とか逃れた面子は猛追を仕掛けたが、この日序盤から逃げの意思を最後まで示し続けたアスグリーンに勝利の女神は微笑んだ。
アイザック・デル・トロ(総合1位)
「正直何があったかわからなかったんだよ。前の選手が滑って、気が付いたら後ろから突っ込まれて僕もこけたんだよ。あとはすぐに起き上がって再スタートをしなければという意識しかなかったから、背後の状況は把握していなかったよ。」
デレク・ジー(ステージ7位、総合6位)
「今日は神経がすり減ったよ。あの落車があってから、すべてのコーナーで神経質になってしまった。それでも結果として総合6位は嬉しいよ。皮肉だよね、山岳ステージでもないのに総合で差がつく日になってしまった。今日見たようにいつ何時誰に何が起きるかわからない、だから総合上位には”運”が必要なんだよ。」
マッズ・ピーダースン(ポイント賞)
「チッコーネは総合争いから脱落してしまったから、ステージ優勝争いに切り替えざるを得ないね。いい日もあれば悪い日もある、これがレースだし仕方がないね。」

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ジロ・デ・イタリア第14ステージ順位
1位 キャスパー・アスグリーン(EFエデュケーション・イージーポスト) 4h04’40”
2位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク) +16”
3位 オラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク)
4位 オールイ・アルラール(モビスター)
5位 ステファノ・オルダーニ(コフィディス)
6位 ミルコ・マエストリ(ポルティ・ヴィジットマルタ)
7位 デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)
8位 トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)
9位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 ミケル・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 50h37’55”
2位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’20”
3位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +1’26”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’07”
5位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +2’23”
6位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +2’54”
7位 ダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’55”
8位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +3’02”
9位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +3’38”
10位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +3’45”
H.Moulinette