ジロ・デ・イタリア第13st:激坂頂上スプリントを制したのはピーダースン!総合勢をも置き去りにする爆発力でファン・アールトを下してステージ4勝目!デル・トロはまたも3位でボーナスタイム獲得


©Giro d’Italia
この日のステージはゴール手前1㎞から勾配がきつくなり、残り700mから一気にきつくなり12%になるというクラシックさながらのステージだ。総合上位勢が僅差でひしめき合う事から、当然のように総合勢によるボーナスタイム獲得を狙ったゴール勝負になるかと思われた。しかしそんなステージで爆発力を発揮したのは今シーズン絶好調すぎるポイント賞ジャージのマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)だった。同じくクラシックスペシャリストのワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)、更には総合リーダーのアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG)の3名のでのアップヒルスプリントとなったが、パワーと爆発力を兼ね備えたピーダースンがデル・トロを完全に撃沈させ、ファン・アールトを従えてのステージ勝利を挙げた。
これでリドル・トレックは13ステージで5勝目、そのうちピーダースンがこれでステージ4勝目となった。これで自身通算54勝目昨年度総合優勝を果たした史上最強のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)がステージ6勝を挙げたが、全く異なるスタイルと得意分野のピーダースンがこの記録に挑むこととなりそうだ。これでポイント賞争いはもはや1強状態となっている。
総合リーダーのデル・トロは二人のクラシックアタッカーについていこうとしたが、その馬力に屈したが、それでもまたしてもボーナスタイムを獲得、地道にタイム差を稼ぎ出している。総合上位勢があまり動かない中で、21歳の若きリーダーは積極的な動きを見せている。

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この日も逃げ切りが決まりやすいステージ、ただゴール勝負へと持ち込みたいリドル・トレックとヴィズマ・リースアバイクが大所帯の逃げが発生することを警戒する。それにより容認されたこの日の逃げは9名、だがその後もメイン集団は常時この逃げを射程圏内に捉えた状態でレースを展開する。その為レースの平均時速は序盤100㎞で55㎞を記録する。そしてこの後集団のペースはさらに上がっていく。
後半の上りセクションイネオス・グレナディアスがペースを上げると、メイン集団は一気にその人数を減らしていく。デル・トロは終始集団の先頭付近で余裕の表情を見せるが、総合2位のチームメイトホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG)の姿は常に集団中盤から後方で推移する。総合上位を狙うデレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)、更にはトム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)がここで揺さぶりをあっけるアタックを仕掛けるが、これを捉えたメイン集団はいったん沈静化することとなる。これで遅れていた面々が再びメイン集団へと合流を果たした。

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先頭では逃げから飛び出したクリスチャン・スカローニ(XDSアスタナ)とロレンツィオ・ジャルマーニ(グルーパマFDJ)が逃げ続けるが、残り10.4㎞で迎えたレッドブルキロメーターでメイン集団のペースも上がり、ジャルマーニを吸収する。だがすかろーには何とか先着、賞金を手にした。その背後ではアユソが2位通過を果たす。
するとロメイン・バルデ(ピクニック・ポストNL)とマティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)が残り8.4㎞で飛び出していく。2人は残り5㎞で16秒差まで広げるが、この日のゴールは激坂区間、総合上位勢を抱えるチームが隊列を整えながら迫っていく。残り1㎞で8秒差あったが、集団のペースアップの前にゴールまで残り500mを残し、二人の逃避行は終了する。

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するとここで一気に動いてきたのはピーダースンだった。残り200mで爆速加速をすると、これに反応できたのはファン・アールトとデル・トロのみだった。全く力を緩めないパワー走行に、デル・トロは完全に力負け、ファン・アールトは粘ったが、拮抗した出力バトルでは、先に仕掛けたほうが有利だった。ピーダースンはまたしてもステージ勝利、今回は純粋なスプリントではなくクライマーや総合系向きのコースでありながら、そんなこと丘まないなしに勝利を奪い取って見せた。
総合上勢ではアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツXRG)とサイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)の2人が総合トップ10から脱落したが、この辺りは10秒以内に5人がひしめき合う状況ではあるので、大きな問題はないだろう。

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マッズ・ピーダースン(ステージ1位)
「ちょっと早めに仕掛けたけど、速い展開と激坂フィニッシュではみんな疲れていると思ったからね。ポイントを積み重ねられて、さらに勝利できたんだから文句ないね。ヴァチェックはここまで凄く献身的にアシストしてくれているので勝ってほしかったけど、タイム差が少なすぎたね。でもあの動きのおかげで僕はライバルの背後で脚を貯められたんだよ。だからチーム戦略としては結果オーライだと思う。」
アイザック・デル・トロ(総合1位)
「ピーダースンについていこうと思ったけど、全くついていけなかったよ(苦笑)。勝てるかもしれないとは思っていたけど、僕よりも圧倒的に速い選手が二人もいたからね。ちょっとずつだけどボーナスタイムを取れているのはいいことだよね。」
ジロ・デ・イタリア第13ステージ順位
1位 マッズ・ピーダースン(リドル・トレック) 3h50’24”
2位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
3位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) +02”
4位 レミー・ロシャス(グルーパマFDJ) +05”
5位 ドリアン・ゴードン(デカスロンAG2Rラモンディアル)
6位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)
7位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)
9位 オールイ・アルラール(モビスター)
10位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツXRG) 46h32’59”
2位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツXRG) +38”
3位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +1’18”
4位 サイモン・イェーツ(ヴィズマ・リースアバイク) +1’20”
5位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +1’35”
6位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’07”
7位 ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +2’20”
8位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツXRG ) +2’40”
9位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス) +2’50”
10位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +2’54”
H.Moulinette