フレッシュ・ワロンヌ2025:激坂ユイの壁で決着!圧倒的アシストがエースをサポートしたUAEがポガチャルで圧勝!座ったまま傾斜20%で加速で後続引き離す!エヴァネポエルは伸びず9位


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クラシック最高峰レースの一つ、激坂最大勾配20%のユイの壁が選手たちを迎えうつ難関レースは、最後のこの丘で決着が決まることが多く、大差がつかないレースだ。ここしばらくのクラシックレースでよくみられる長距離アタックではなく、いかに最後のユイの壁まで消耗せずにたどり着き、そこでの一発勝負に賭けるかが常套戦略と言えるだろう。そして今年も決着は最後のユイの壁まで持ち越された。そしてその勝負を制したのは世界チャンピオンのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)、ほぼすべての選手が腰を上げて上る激坂を、座ったまま加速してライバルを置き去りにする驚異の走りで2023年に続いての今大会2勝目を挙げた。ゴールまでは力を緩めて口を閉じたままガッツポーズ、余裕さえ感じる走りで勝利を締めくくった。これでクラシック通算勝利数で18勝目(モニュメント8勝、クラシック10勝)とした。このまま次に狙うのは週末のリエージュ・バストーニュ・リエージュとなる。
2位にはケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)が2年連続で入り、トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)がジワリと順位を上げて表彰台を確保して見せた。アムステルゴールドレースでポガチャルとレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)を下したマティアス・スケルモース(リドル・トレック)は途中で落車に巻き込まれ、エヴァネポエルはチームはしっかり仕事をこなしたが、それにこたえることができずに9位に沈んだ。

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雨のフレッシュ・ワロンヌはチームスポーツであるロードレースの醍醐味を味わえるレースだった。逃げ切りが難しいという事は、いかにライバルのアシストを削りながら最終局面へと持ち込むかが勝敗を分けることとなる。そしてチーム組織力に優れたUAEチームエミレーツXRGは極めてクレバーな走りを見せた。レース中盤ではほとんど動かず、後半に入っても最大ライバルのソウダル・クイックステップらに主導権を握らせたまま展開する。
残り25㎞を切り先行するのは逃げの残党、ノルウェイ3人衆、トビアス・フォス(イネオス・グレナディアス)、フレドリック・デヴァースネス、アンドレアス・レクネセン(共にUNO-Xモビリティ)が必至の走りで踏ん張り続ける。それを追うメイン集団の先頭はソウダル・クイックステップがペースをコントロールし、その3人を捉まえるタイミングを見計らっている。それに対してUAEチームエミレーツXRGはここでもそれを容認し、展開を見守る。

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残り18.6㎞でいったんは5秒差にまで縮まったが、そこから一旦タイムは広がっていく。早くとらえてしまえばそれを機にカウンターアタックをする絶好のチャンスを与えてしまうだけに、慎重に吸収するタイミングを見計らっている。そして残り7㎞で遂に逃げを捉えると、レースは一気に加速していく。今までなりを潜めていたUAEチームエミレーツXRGがここにきて先頭に集結、一気にペースを上げていく。縦一列になっていく集団の先頭ではアシストに引かれてポガチャルが淡々と刻んでいく。そして更なる加速で集団はいったん先頭5人が後続を引きちぎる格好となる。これはまずいと猛追を仕掛ける後続に対して、高いペースを維持し続けるUAEチームエミレーツXRGの優位は明らかだった。

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多くのクラシックに出場しているポガチャルは、先日のレースでは疲れも感じられる瞬間があったが、この日はそんなことを一切感じさせない驚異の走りをここから見せることとなる。この日3度目、最後に上るユイの壁は疲れ切った選手たちの体に重くのしかかる。先行したのはベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)、それに反応したポガチャルは後続を確認すると、そのまま座ったポジションでグイグイ加速、あっという間に後続を突き放してしまった。上位の選手のほとんどが腰を上げてダンシングしながらクリアしていく勾配20%の激坂区間を、まるで平坦を走っているかの如く腰を落としたままくるくると小気味よくクランクを回し続け、ヴォークランに10秒のタイム差をつけ余裕の勝利を決めた。
激戦となったのが2位争い、入り乱れての上り勝負はヴォークランが一人抜け出して単独2位でゴール、昨年に続いての2位は降格争い真っただ中のチームに貴重なポイントをもたらすこととなった。ピドコックは最後に登坂力を発揮し3位、こちらもチームに貴重なポイントをもたらした。
タデイ・ポガチャル(優勝)
「またここで勝ててうれしいよ。きつい上り、美しい景色、でも誰もが好きなわけではないよね。この寒さの中で勝てたのは大きいよね。今日はチームとして最高の走りができたよね。戦略通りに走れたし、脚もよく回ったよ。ほぼ同じメンバーで週末のリエージュ・バストーニュ・リエージュに向かうので、同じように素晴らしい走りで勝利が狙えそうだね。」
トム・ピドコック(3位)
「今まで出場したフレッシュ・ワロンヌよりはましだったよ。でも寒くてまいったね。まだ寒いよ。それを考えれば、よく表彰台に登れたなと思うよ。ここでは早く仕掛けない、我慢するのが大事なんだよ。でも上り始めでギアがうまく入らなくてそれで損をしてしまったね。でもそれでもいい登坂ができたと思うよ。いい感触だったけど、でもポガチャルは別次元だったよ。このレースは僕向きと言われ続けてきたけど、でもここではいつも苦労させられたんだ。だから表彰台に上がれてほっとしているよ。」

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レムコ・エヴァネポエル(9位)
「僕のミスはレインコートを早く脱ぎ過ぎたことだよ。最初にユイの壁を上った時に、暑かったので脱いだんだよ。雨が止むと思っていたんだけど、そこからさらに降り続けたんだよ。それが結局体温を下げてしまって、体力を消耗してしまったよ。これは僕のミスだよ。」
フレッシュ・ワロンヌ2025順位
優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 4h50’15”
2位:ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) +10”
3位:トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング) +12”
4位:レニー・マルチネス(バーレーン・ヴィクトリアス) +13”
5位:ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +16”
6位:サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位:ロメイン・グレゴワール(グルーパマFDJ)
8位:ティボー・ネイス(リドル・トレック)
9位:レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
10位:マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ) +19”
H.Moulinette