リエージュ・バストーニュ・リエージュ2025:世界チャンピオン強し!第111回大会はポガチャルがまたしても37㎞独走勝利!座ったまま上りで一気にライバルを突き放すパワー炸裂で今大会3勝目!


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5大モニュメントの一つ、リエージュ・バストーニュ・リエージュは今シーズン4つ目のモニュメントであり春先最後の大舞台だ。今シーズンここまで3つのクラシックはマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)が2勝、ポガチャルが1勝しているが、ポガチャルがさらにここに1勝を加えた。これでリエージュ・バストーニュ・リエージュ通算3勝目、今シーズンここまですべてのモニュメントで表彰台以上で2勝、モニュメント勝利数も通算9勝目としてコスタンテ・ジラルデンゴ、ファウスト・コッピ、ショーン・ケリーに並び歴代3位タイとなった。

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あまりにも鮮やかな加速だった。総距離252㎞、獲得標高4000m越えのレースが大きく動いたのは、残り37.4㎞、まるで弱虫ペダルの小野田坂道のようなシッティング加速で一気にライバルを突き放すと、そのまま10秒ほどの差で丘の頂上を超えていく。これによりメイン集団は一気に縦一列となり崩壊してしまう。レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)もここで前に出ることができず、どんどんと差が開いていってしまう。ポガチャルを負いアタックを仕掛けた追走集団を形成したのはトム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)、ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)、ジュリアン・アラフィリップ(チュードル・プロサイクリング)、ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)の4人、ここから協調してポガチャルを追い詰めるかに思われたが、平坦に入ってもポガチャルとの差はどんどんと広がっていく。

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ポガチャルが淡々とその差を広げていく中、後続では4名が駆け引きを繰り広げる。そしてその背後では追走集団がさらに分裂と吸収を繰り広げる。エヴァネポエルも何とか前を追うべく動くが、結局中断の集団の中に埋もれていってしまう。そして残り21.8㎞でポガチャルと後続との差はついに1分を超えてしまう。もうこうなればポガチャルの優勝は確定的、あとは後続の選手たちによる2位争いが激化することとなる。
残り13.8㎞ではエヴァネポエルが追走集団から脱落していくが、それと時を同じくして追走の4人からチッコーネとヒーリーが飛び出していく。追走集団はここからピドコックとアラフィリップを飲み込むが、チッコーネとヒーリーに追いつくことができない。ポガチャルは悠々自適、快適な一人TTををゴールまで続け、圧倒的な強さで最後は沿道のファンとハイタッチをする余裕を見せ、圧巻の勝利を飾った。

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2位争いは、追いつかれることを拒んだヒーリーが長時間牽引することとなり、その結果ゴールスプリントではチッコーネの後塵を拝し3位となった。しかしヒーリーの走りがなければ後続に飲み込まれていた公算が高く、必死の走りがもたらした表彰台と言えるだろう。
エヴァネポエルは大きく遅れてゴール、復帰戦で勝利して以降、調子を落としているように見えるのだが、復帰即ポガチャルと真っ向勝負はいささか負担が大きかったのではないだろうか。無理をし過ぎずに走り切ったとはいえ、フルにクラシックシーズンを完走したポガチャルに対し、最終盤数戦のみとなったエヴァネポエルにとっては、シーズン開幕前のケガがここまで尾を引くとは正直思っていなかったのではないだろうか。想像以上に開いてしまったこの差を、どのようにして詰めていくのか、改めてトレーニングからの見直しとなりそうだ。

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タデイ・ポガチャル(優勝)
「シーズン序盤のスケジュールを勝利で終えられるなんて最高の形だね。ここまでのシーズンは完ぺきだよ。これで心置きなく家に帰れるよ。あのタイミングでのアタックは予定していなかったんだよ。今日はペースが速くて、そのせいでチームメイトを随分失っていたからね。だからあの場面では様子見でペースを上げたんだ。だから頂上までにタイム差を開けたらそのまま仕掛け続ける、そうじゃなかったら一度戻ると決めていたんだ。あとはただ脚を回し続けるだけだったよ。その次の丘も難なくこなせてタイム差も広がったし、あとはゴールを目指すだけだったよ。本当に最高にうれしいよ。」
ギウリオ・チッコーネ(2位)
「ツアー・オブ・アルプスの疲れが抜けないままに参戦したので、前半はしんどかったよ。でも後半になるにつれて、体が慣れてきたよ。このレースは好きなレースの一つだし、表彰台に上がれてハッピーだよ。ポガチャルの後で2位だから、勝利に等しいとは言えないけど、満足のいく内容ではあるよ。どのみちポガチャルにはついていけなかったからね。その中で最善の結果を出せたのだから良しとしないとね。」
ベン・ヒーリー(3位)
「モニュメントでの表彰台、これは目標でもあったし、このために冬場のトレーニングを積んできたからね。とにかく嬉しいよ、ただそれだけだよ。もう何度となくポガチャルの閃光のようなアタックを見てきたからね。あれに着いていったら、こっちはあっという間に燃え尽きて灰になってしまうよ。だからひたすら、自分のリズムで走り続けたよ。ポガチャルの走りに今日は誰もついていけなかった、彼だけが一人別の次元にいたんだよ。」
レムコ・エヴァネポエル
「こういうレースは嘘はつかないよね。調子が良ければずっと前にいれたはずだよ。がっかりはしていないよ。でも最終局面で調子が上がらなかったことは恥ずかしいよ。でもそれが現実なのだと受け入れるしかないよ。奇跡は起きないんだよ。調子を上げていくにはまだまだトレーニングをしなければならない、レースには復帰できたけれど、まだまだ質量ともに必要なトレーニング強度には至っていないことが今日のレースではっきりとしたよ。」
リエージュ・バストーニュ・リエージュ2025順位
優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 6h00’09”
2位:ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +1’03”
3位:ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)
4位:シモーネ・ヴェラスコ(XDSアスタナ) +1’10”
5位:ティボー・ネイス(リドル・トレック)
6位:アンドレア・バジョーリ(リドル・トレック)
7位:ダニエル・マルチネス(レッドブル・ボーラハンスグロエ)
8位:アクセル・ローレンス(イネオス・グレナディアス)
9位:トム・ピドコック(Q36.5プロサイクリング)
10位:ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)
H.Moulinette