パリ~ルーベ2025:最強クラシック男ファン・デル・ポエルが史上3人目の大会3連覇!ポガチャルに並ぶモニュメント8勝目、ポガチャルは落車とパンクも単独2位、ピーダースンがスプリントを制して3位


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北の地獄、最悪の悪路の石畳バトルは今年も熱いバトルが繰り広げられた。そんな大会を盛り上げたのは今シーズンクラシックで真っ向勝負を演じ、ここまでもクラシック最高峰の5大モニュメントで1勝1敗と互角の勝負を演じてきたマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)とタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)だった。クラシック最強の男と史上最強の男の異次元の真っ向勝負は、この日もノーガードの打ち合いのようなアタックの応酬、しかし最後は悪路の走破に一日の長があるクラシック最強のファン・デル・ポエルに軍配が上がった。これでファン・デル・ポエルは45年ぶり、史上3人目の大会3連覇を達成し、通算でもモニュメント8勝目となり、先日のロンド・ファン・フランデーレンで通算8勝目を挙げていたポガチャルに並び、現役最多のモニュメント勝利数となった。
ポガチャルは真っ向勝負を仕掛け続けたが、石畳のコーナーでオーバーランし転倒、チェーンが外れてしまい復帰に時間を要してしまった。そしてこの落車の影響でその後バイク交換も余儀なくされ、この日は計2回のバイク交換をしながらも、決して集中力を切らすことなく最後まで単独でファン・デル・ポエルを追い続け、初出場ながら2位表彰台に上がった。そして今シーズンこの二人に続く走りを見せているマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)は途中のパンクで後退してしまったものの、そこから粘りの走りで3位集団をリード、そして最後はワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)とフロリアン・フェルメールス(UAEチームエミレーツXRG)とのスプリント勝負を制した3位表彰台を確保して見せた。

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259.2㎞、第122回を迎えた今年のパリ~ルーベの優勝へ向けた戦いの口火は、想像よりもはるかに速い残り103㎞から始まった。名物の難易度五つ星のアランベールの石畳の一つ前の石畳のセクターで、先行する逃げ集団へ1分ほどに迫る中でポガチャルがまず揺さぶりをかける。これにはファン・デル・ポエルらも対応するが、ここで一気にその数は絞られることとなる。更に残り101.5㎞、アランベール手前の舗装路区間でもポガチャルはアタック、更に揺さぶりをかけライバルたちを振るい落としていく。この段階ではまだファン・アールトらも食らいついており、実力派の選手たちが顔を揃える。

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そして突入した第19セクターのアランベール、過去多くの選手たちを地獄へと突き落としてきた荒れた石畳のセクターでもポガチャルの勢いは衰えない。そしてここでは今度はファン・デル・ポエルも先頭へ出てペースを上げていく。これで先頭で逃げていた集団はほぼ捉まり、アランベールを抜けた直後には、すべての逃げを吸収、そして先頭集団は残り92.5㎞で10名に絞られた。そしてここからはファン・デル・ポエルが連続してアタックを仕掛け、ポガチャルに揺さぶりをかける。対してポガチャルも第15セクター、4つ星の石畳セクターでアタック、このタイミングで運悪くパンクを喫したのはピーダースン、これで一気に優勝争いから脱落してしまう。これにより一時的に先頭はファン・デル・ポエルとポガチャルの2人のみとなるが、数キロ後にここにヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)が合流し、ポガチャルに対して2対1と数的優位を作る。

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この数的優位はアルペシン・ドゥクーニンクにとっては圧倒的に有利な状況となるが、ここからしばらく硬直状態が続くこととなる。しかし残り46㎞で遂にファン・デル・ポエルが動く。だがこれにポガチャルは反応できたが、フィリップセンが反応しきれない。これを見たポガチャルはカウンターアタックでフィリップセンを突き放してしまう。これにより勝負はファン・デル・ポエルとポガチャルの一騎打ちとなる。そして迎えた第9セクターの三ツ星の石畳でポガチャルがまたしてもアタック、そしてそのハイペースのまま時速60㎞を超える速度で石畳を駆け抜ける。だがここで思わぬ落とし穴が待っていた。完全にオーバースピードで石畳の直角コーナーへと侵入、完全に膨らんだポガチャルはそのまま脇のバナーフェンスに接触し、そのまま転倒してしまう。対してファン・デル・ポエルは一瞬早くブレーキングをしたことでかろうじてこれを回避、さらにうまくポガチャルを避けシクロクロスで培った抜群のボディーバランスでそのまま先頭に躍り出た。ポガチャルは激しく落車はしなかったものの、チェーンが外れてしまい再スタートに時間を要してしまった。

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ここからは最強2人による追いかけっこが始まる。20秒以上にまで開いたタイム差は、猛追を仕掛けるポガチャルの走りでじわじわと縮まっていく。残り30㎞付近では12秒差までその差を縮め、ファン・デル・ポエルの背中を射程圏内に捉える。しかしこのときファン・デル・ポエルは無線が壊れており、正確にポガチャルとのタイム差を把握できていない。その為ファン・デル・ポエルは迷いなく全力で踏み続ける。するとここからタイムが徐々に広がり始める。残り28㎞では18秒まで広がると、ここから20秒差まで広がっていく。明らかに苦しそうな走りのポガチャルだったが、ここで前輪のパンクにより、この日2度目のバイク交換を余儀なくされる。これでその差はさらに広がり、ついに1分を超えてしまう。そしてその背後では2分以上差をあけて、ファン・アールト、ピーダースン、フェルメールスら3人に絞られている。

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そして迎えたこの日最後の5つ星の第4セクター、難関カルフール・ド・ラルブルへと突入していく。ポガチャルとのタイム差を確認しきれないファン・デル・ポエルはここでも猛プッシュをするが、それによりパンクを喫してしまう。慌ててバイクを投げ出しスペアバイクをチームカーから受け取ると、そのまま再スタートをするが、流れるようなチームワークにタイムロスは僅か10秒ほどにとどめることができた。
最後はペースこそ落ちたが、独走でゴール地点のトラック競技場へと入ると、歓声が沸き起こる中3連勝を意味する3本の指を突き立てて笑顔でゴール、最後は自らのバイクを掲げて観衆の声援に応えた。そして遅れて競技場に入ってきたポガチャルにも同様に大きな声援が送られると、最後は笑顔で手を振りゴール、初めての最難関地獄の石畳への挑戦を2位という素晴らしい結果で終えた。全てのモニュメントを勝利したいと宣言しているポガチャル、今シーズンはまだ未勝利だったミラノ・サンレモとパリ~ルーベ、その両方でファン・デル・ポエルにその夢を阻まれる結果となっている。どちらも勾配の無いレースであり、ポガチャルにとっては平地と悪路のどちらでも強さを見せるファン・デル・ポエルが立ちはだかった。しかしこれで全てのモニュメントでの表彰台は達成した。
またツール・ド・フランス覇者が翌年のパリ~ルーベで2位というのは、50年前にエディ・メルクスが記録して以来の2人目の記録となった。

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このレースでは残り33㎞で独走しているファン・デル・ポエルに対して沿道のファンが満タンのボトルを投げつけるという蛮行が起きた。一歩間違えれば大事故に繋がりかねないだけに、このような行為は絶対に避けなければならない。ファン・デル・ポエルは「時速50㎞で走っていて、500gぐらいのものとぶつかっているんだよ、場所が悪ければ骨折だってあり得たよ。石とぶつかったようだったよ。結構痛かったからね。」と語った。ファン・デル・ポエルはこれ以外にも液体をかけられるなど、今大会も何度となく妨害行為をされたた。今後主催者は今回の一件に関して法的措置を取る予定だ。
マシュ・ファン・デル・ポエル(1位)
「本当にきつかったよ。ポガチャルがあのコーナーでミスしたときは、速すぎるとおもったんだ。でもうまく切り抜けられたんだよ。でも自分の背後ではどうなっているかはわからなかったんだ。あとはそこから必死だったよ。特に最後の方のセクターは向かい風だったから本当に苦しかったよ。あのミスを彼がしなければ、スタジアム勝負となっていただろうね。来年リベンジに挑んでくるかが楽しみだよ。初めてのパリ~ルーベでこれだけの結果を出してくる、それができるのがポガチャルというスーパーな存在なんだよ。」
タデイ・ポガチャル(2位)
「今日の教訓は、38㎞には直角右コーナーがある、という事だよ。追い風でスピードが乗りすぎて一瞬早く切り込み過ぎたんだよ。それで修正しようと思ったけど、もうブレーキを掛けられないタイミングだったんだ。今後勝てると思うかって?間違いなく勝てる可能性を感じたよ。初挑戦で2位、来年どうするかはまだ決められないけど、いつかね。」

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パリ~ルーベ2025順位
優勝:マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク) 5h31’27”
2位:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) +1’18”
3位:マッズ・ピーダースン(リドル・トレック) +2’11”
4位:ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
5位:フロリアン・フェルメールス(UAEチームエミレーツXRG)
6位:ヨナス・ロッシュ(インターマルシェ・ワンティ) +3’46”
7位:ステファン・ビセガー(デカスロンAG2Rラモンディアル)
8位:マークス・フールゴー(UNO-Xモビリティ)
9位:フレッド・ライト(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’35”
10位:ローレンス・レックス(インターマルシェ・ワンティ) +4’36”
H.Moulinette