ロンド・ファン・フランデーレン2025:最強のぶつかり合いはポガチャルに軍配!波状アタックの末ファン・デル・プールを振り切り今大会2勝目でモニュメント通算8勝目!2位は好調ピーダースン


©Ronde van Vlaanderen
春のクラシックレース最大の一つ、ロンド・ファン・フランデーレンは石畳と丘が繰り返されるサバイバルバトルだ。そんな激しく険しいバトルを制したのは優勝候補の筆頭、歴代最強のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG)だった。もう一人の優勝候補、最強クラシックライダーのマシュー・ファン・デル・プール(アルペシン・ドゥクーニンク)とこの大会でも激しいバトルを繰り広げた。そして最終的に圧倒的な攻撃の手数でポガチャルが最強ライバルを圧倒、他のライバルや数的不利もものともせず、残り18㎞でファン・デル・プール を振り切り独走での勝利を決めた。これで今大会通算2勝目を挙げるとともに、これで5大クラシックであるモニュメントも通算8勝目とし、現役最多、歴代6位に躍り出た。ロンド・ファン・フランデーレンで2勝、リエージュ・バストーニュ・リエージュで2勝、ジロ・ディ・ロンバルディアで4勝となり、次に狙うのは最高難度の石畳のレース、来週行われるパリ~ルーベとなった。もし勝利すればモニュメント通算9勝目、歴代3位タイまでその地位を上げることとなる。

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269㎞の石畳と丘のこのレース、昨年度は雨に祟られ激坂石畳で多くの選手たちが歩く姿が見受けられたが、今年は快晴、完全に乾燥した石畳はハイスピードバトルとなった。序盤から逃げが決まり、これがレースのペースを作る。そして中盤でファン・デル・プールが落車に見舞われてしまう。すぐに起き上がり追走を始めるが、狭くくねった石畳では、チームカーの隊列自体も障害物となってしまう。何とかメイン集団へ復帰をするが、不要な体力の消耗を余儀なくされてしまった。
そしてそんなレース中盤で元気な姿を見せたのがマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)、今シーズンはクラシックライダーとして圧倒的な存在感を見せるとともに、ポガチャルとファン・デル・プールの早さに対抗できている数少ないライダーでもある。そしてピーダースンはこの日も最後までその好調さを見せることとなった。
レースが大きく動いたのは予想通り残り56㎞で迎えた名物セクターのオウデ・クワレモントだった。2200m最大勾配11%のこのセクターを選手たちは3度上るが、その最初の通過でポガチャルが動く。先頭にはフィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)やステファン・キュング(グルーパマFDJ)らが1分ほど先行するが、それを追うようにポガチャルが一気に加速をすると、それにまず反応したのはワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)だった。今シーズンはここまで切れ味がないものの、そもそもはシクロクロスとロードでのファン・デル・プールの最大ライバルであり優勝候補の一角である。ファン・アールトと共に、マッテオ・ジョルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)が追走をし、さらにそこに遅れてファン・デル・プール が合流を果たす。

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ライバルたちは皆ポガチャルをマーク、誰も前に出て積極的に牽引をしようとしない。すると再び後続が合流を果たし集団は大きくなるが、この優勝争いへのバトルはもはや異次元の空中戦となっていた。合流と同時にファン・デル・プール がアタックを決め再び集団を分断、すると今度はファン・デル・プール、ピーダースン・ポガチャルの3人となり、そこにファン・アールト、ジョルゲンセン、ヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック)が加わり、さらには先日のドワース・ドア・フランデーレンを制したニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)らが合流を果たし9人となる。
この時点でポガチャルは数的不利な状況となる。自らはすでにすべてのアシストを使い切っており、逃げにもチームメイトはいない。対してヴィズマ・リースアバイクはファン・アールトら3人、リドル・トレックは2人、ファン・デル・プールも先行する逃げにチームメイトがいる状況となる。
残り45㎞では最大勾配22%の激坂セクターのコッペンべルグでポガチャルがアタックを決めると、あっという間に先頭集団に追いついてしまう。ここで一度はヴィズマ・リースアバイク勢とトレック・セガフレド勢は後れを取るが、ポガチャルは自らが牽引し続けることを嫌いペースが緩むため、再び合流することに成功する。すると今度は残り41㎞でピーダースンがアタック、そして残り40㎞でポガチャルがアタック、更には残り38㎞でもう一度ポガチャルアタックを仕掛けるなど揺さぶり続ける。このふるい落としで先頭の人数は徐々に人数を減らしていく。

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そして残り37㎞のタイエンベルグでポガチャルがまたしてもアタック、これにすぐさま反応できたのはピーダースンだった。しかしこのアタックも収束すると、2度目のオウデ・クワレモントを目前に残り29㎞でまたしてもポガチャルがアタックを仕掛ける。これにはファン・デル・プールとピーダースンが反応し、ポガチャルの飛び出しを許さない。残り20㎞を切り先頭の人数は5名にまで絞られ、そして残り19㎞で迎えた最後のオウデ・クワレモントではファン・アールトが仕掛ける。だが切れ味鈍く、これに追いつき様にまたもポガチャルがアタックを仕掛ける。これにファン・デル・プールが反応したが、ここからじわじわと引き離されて行ってしまった。ここからポガチャルの独走が開始される。

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ポガチャルはそのまま最後の最大勾配20%のパテルベルグも単独で超えていくと、後続との差をさらに広げていき、最終的には1分以上の差をつけて大会を制した。レース前に「荒れた展開になって欲しい」と語ったポガチャルは、結局自らの哲学である「攻撃は最大の防御」を繰り出し、自らの力で展開を自分好みの荒れたものへと導いていった。
4人でのスプリント勝負となった2位争いは、もともとスプリンターとして勝利を量産していたピーダースンが入り、これで今シーズンここまで参加しているクラシック(モニュメント含む)で3度目の表彰台獲得となった。そして3位にはファン・デル・プールが入り、6大会連続で表彰台獲得(優勝3回、2位2回、3位1回)となった。ファン・アールトは4位に沈み、ストゥーヴェンが5位に入った。
タデイ・ポガチャル(優勝)
「もちろん目標は勝利だったよ。でもやっぱりそこまでの余裕はなかったね。不運もあったけど、チームはしっかりと機能したし、この世界チャンピオンの証であるアルカンシエルで勝てたことは最高の気分だね。オウデ・クワレモントから仕掛けるのは決めてあったんだ。そこまでにチームメイト3人が落車して2人を失ってしまったけど、まずはその状況までもっていけたことが成功だったんだよ。そこからは僕の仕事だったんだ。次はパリ~ルーベだけど。あれは別物だね。でもチャレンジはするつもりだよ。僕的にはフランダースのほうが自分向きなのは理解しているけど、でもやってみなければわからないこともあるからね。今のこの調子なら挑むべきだと思うよ。」
マッズ・ペデルセン(2位)
「チームはマイレース勝利を目指して走っているからね。それはポガチャルがアタックをする前からずっとだよ。それでも負けたのであれば、ただ僕らよりポガチャルが強かったという事。全く後悔はないし、彼が真っ向勝負で僕らを蹴散らしたという事は受け入れなければならない現実だよ。世界最高の選手が自転車界をこれだけ盛り上げてくれていることには恩恵に預かれているからね。それにしてもポガチャルとファン・デル・ポエルとやりあうのはマジしんどいわwでも彼らと今は知れていることは最高の時間だよ。」
マシュー・ファン・デル・プール(3位)
「勝てる気はあまりしなかったよ。結構早い段階からキツイと感じていたからね。まあ落車は余分だったね。でもそこからよく持ち直したと思うよ。だから3位表彰台は納得しているし嬉しいよ。次のパリ~ルーベはこのロンド・ファン・フランデーレンほどは難しくないよ。ただより多くの運を求められるレースだよ。」

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ロンド・ファン・フランデーレン2025順位
優勝:タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツXRG) 5h58’41”
2位:マッズ・ピーダースン(リドル・トレック) +1’01”
3位:マシュー・ファン・デル・プール(アルペシン・ドゥクーニンク)
4位:ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク) +1’04”
5位:ヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック) +1’53”
6位:ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)
7位:ステファン・キュング(グルーパマFDJ) +2’19”
8位:フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアス)
9位:イヴァン・ガルシア(モビスター)
10位:ダビデ・バレリーニ(XDSアスタナ)
H.Moulinette