ドワース・ドア・フランデーレン2025:ヴィズマ・リースアバイクの三銃士をパウレスがスプリントで撃破し鮮やかな勝利!ファン・アールトへはお膳立ても届かず、戦略ハマったが勝負には敗北


©Visma Lease a Bike
勝負というのは最後まで何が起こるかわからないから面白い。先日のヘント・ウェヴェレヘムを制したマッズ・ピーダースン(リドル・トレック)とワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)が優勝候補の筆頭に上がる中、戦略で上まったのはヴィズマ・リースアバイクだった。あまりにも見事にはまった作戦で背番号1、2、3を着用するマッテオ・ヨルゲンセン、ファン・アールト、ティス・ベノートの最強トリオ3人がメイン集団から抜け出し逃げを形成する。それに唯一ほかチームから紛れ込んだニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)の4名は、ペデルセンらをまんまと出し抜き先頭で次々と石畳のセクターを抜けていく。強力な3人の牽引に対してパウレスは脚を温存しながらついていく。そしてスプリントまで持ち込んだ結果、最高のお膳立てからスプリントを仕掛けたファン・アールトを、あっさりとパウレスが仕留め、あまりにも鮮やかすぎる勝利を挙げた。
ヴィズマ・リースアバイクは戦略的には最大のライバルを置き去りにすることに成功したが、コバンザメのごとく張り付き続けた伏兵にまんまと勝利をさらわれる結果となった。昨年のジャパンカップでも勝利しているこれでパウレスは、クラシカ・サン・セバスチャン、グラン・ピーモントに続くクラシック3勝目、今シーズンの初勝利となった。対してヴィズマ・リースアバイクはここまでクラシックでなかなか勝利を挙げられないまま、今週末のクラシック最高峰のモニュメントの一つ、ロンド・ファン・フランデーレン(ツアー・オブ・フランダース)に挑むこととなった。

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昨今のレース同様に仕掛けは早い段階で起きた。残り60㎞台となり、ヴィズマ・リースアバイクが仕掛ける。これで形成されたのはファン・アールトらヴィズマ・リースアバイク3名に加え、ペデルセン、パウレスら7名、だがここから更なる仕掛けが待っていた。残り60㎞を切り迎えたノッテベルグで、先に仕掛けたペデルセンを置き去りにして、黄色い三銃士、ヨルゲンセン、ファン・アールト、べノートが加速していく。しかしこれにペデルセンは対応できず、唯一ついていけたのはパウレスだけだった。
ペデルセンは逃げにいた残り二人に加え、メイン集団から追いついてきた面々と共に追走を仕掛けるが、これが絶妙な距離のまま縮まっていかない。30秒ほどのタイム差が近くて遠く、追走すべき集団も一枚岩になり切れずお互いにアタックを仕掛けあってしまい決定的にタイムを縮めることができない。タイム差も大きくは広がらないのだが、10㎞に5秒ほどずつジワリジワリと広がっていくことが、メイン集団にプレッシャーをかける。追いたいが脚を使いたくない、この心理が見事なまでにブレーキとなり、追走はアタックと吸収を繰り返し続けた。
残り20㎞を切りようやくペデルセンら6名の追走が必死の走りを見せるが、40秒ほどまで縮まったタイムもそこから動かなくなる。先頭ではヴィズマ・リースアバイクの3名がローテーションしながらペースを保ち、それに加わるよう促されるパウレスだが、首を振りあまり加わらない。数的不利な状況下で、自分が脚を使うメリットは何もないパウレスにとっては、これが唯一勝機を見いだせる戦略だけに、ひたすら3人に食らいついていく。

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ゴールを前にして早仕掛けもあるかと思われたが、結局ゴール前のスプリントまで持ち込まれてしまうと、チームメイトのリードアウトからファン・アールトがコース左端を駆け上がっていく。それに対して大きく開いたコース中央に展開したパウレスは、そのまま一気にファン・アールトを追い抜くと、ファン・アールトは負けを認めペダルを止めた。これで勝負あり、ピンクのひときわ鮮やかなジャージが黄色3枚をぶち抜きチーム関係者と抱き合い勝利の雄たけびを上げた。
ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト)優勝
「もう一回ゴールシーンをビデオで見たいよ。まだ信じられないからね。でも表彰台の中央に立ったから現実だよね。間違いなく表彰台には上がれるとは思ったけど、でもチャンスだから囲まれで進路を失わないことだけを考えたんだよ。そして2位以内は自信があったけど、そのまま勝てるとは思わなかったよ。間違いなく自身最高の勝利だよ!残り100mで勝利を確信できるまでは、全く勝つイメージすらできていなかったよ」

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ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)2位
「本当にがっかりだよ。責任を感じるよ。4人中3人がうちのチームで、勝てないなんてよほどのミスがない限り起こりえないからね。ただ僕が勝利を欲し過ぎたんだよ。スプリントにしようと早い段階で決めたのも僕だし、リードアウトまでしてくれたらそれで大丈夫だと思っていたんだ。僕の勝手な思い込みで勝利を逃してしまった。過信してたことで、僕が足がつってしまいそれで敗北したんだよ。もっとチーム戦略で、色々な勝負のパターンを考えておくべきだったんだよ。」
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ドワース・ドア・フランデーレン2025順位
優勝:ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト) 3h57’14”
2位:ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
3位:ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)
4位:マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +05”
5位:マッズ・ピーダースン(リドル・トレック) +45”
6位:ティボー・デル・グロッソ(アルペシン・ドゥクーニンク)
7位:ドリエス・デ・ボンド(デカスロンAG2Rラモンディアル) +47”
8位:アリヤン・リヴェンス(ロット)
9位:ステファン・キュング(グルーパマFDJ)
10位:アレック・シーガート(ロット)
H.Moulinette