イル・ロンバルディア2024:シーズン最後のモニュメントでまたもポガチャルが48㎞独走勝利!75年ぶりの大会4連覇、シーズン25勝、もはや敵なしの圧倒的な力にエヴァネポエルも脱帽
今シーズン最後のクラシック最高峰のモニュメントレース、イル・ロンバルディアの注目は、なんといっても新世界チャンピオンのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が大会4連覇を果たすのかどうかだった。255㎞の長丁場のレースで、圧倒的なチーム力を見せたUAEチームエミレーツが、鬼引きのペースアップで集団を削りまくり、更には先行する逃げのタイムも削り続けると、残り48㎞を残してまたしてもポガチャルが躊躇なきアタックを敢行して見せた。今シーズン何度となく見てきた圧倒的な独走力、早すぎるとも思えるアタックもポガチャルにしてみればただの攻撃の一手、追いつかれれば作戦を変える、追いつかれなければそのまま走り続けるというシンプルな2択の戦略に過ぎなかった。
あっという間に先頭に躍り出たポガチャルは、そのまま後続との差をぐんぐんと広げていく。オリンピック金メダリストのレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)もポガチャルのアルカンシエルバイク同様に金色のスペシャルバイクを駆るが、ワンテンポ遅れてエンリック・マス(モビスター)とレナート・ファン・エートフェルト(ロット・ソウダル)と共にポガチャルを追走するが、協調した走りができずにただその差がどんどんと広がっていく。しびれを切らせたエヴァネポエルは下りで飛び出し単独2位で懸命の走りを見せる。オリンピックと世界選手権の両方で頂点に立った男はポガチャルとのタイム差を詰めるべく攻めの走りを続ける。しかし徐々にその差は広がっていき、モトバイクにタイム差を確認したエヴァネポエルはただ首を横に振った。
ポガチャルはゴールしバイクを掲げ、満面の笑みで大会4連覇を自ら祝った。大会4連覇はファウスト・コッピが75年前に記録して以来、そして通算4勝目もコッピの5勝に次いでの歴代2位となった。モニュメント制覇もこれでトム・ボーネンとファビアン・カンチェラーラと並ぶ7勝目、着実に記録を積み重ねている。勝利数は今シーズン25勝目、レース出走57日にして25勝という圧倒的な勝率を叩き出して見せた。特にシーズン終盤の出走8日でこれで7勝目という驚異的な勝率、もはや敵なしだ。最終的にエヴァネポエルは3分以上引き離されてのゴール、「その他大勢の先頭を取れて満足」と敗北感を露にした。またゴール直後には4年前落車して背骨を骨折した、トラウマとなっていたレースを走り切った安堵感に涙した。
3位争いも激化、エヴァネポエルに置き去りにされたマスとファン・エートフェルトに、まずポガチャルのアシストを終えても粘り続けたパヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)が追い付く。更にゴール手前で猛追してきたギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)が合流、すると足を休めることなくそのままアタックを仕掛けていく。ヨン・イザギーレ(コフィディス)もマスらに追いつくが、僅かな差をつけたチッコーネがそのまま逃げ切り表彰台最後の一角をものにした。
255㎞のレースは序盤から23名の大逃げが決まる。しかしメイン集団ではUAEチームエミレーツが終始ペースをコントロールし続ける。平坦では最大4分半までその差が広がったが、アップダウンが多く厳しい上りが続くこのレースでは、UAEチームエミレーツの登坂能力がものをいう。残り80㎞を切り一気に縮まっていく。攻めどころを絞っていたUAEチームエミレーツは、その場所までに先頭集団を捉えるというわかりやすいペース配分でラファル・マイカ、マルク・ヒルシ、アダム・イェーツと豪華な主力級選手がアシストをし、最後はシヴァコフのアシストから満を持して残り48.4㎞で発車をすると、一気にその差を広げていく。
何度か後ろを振り返り確認をするが、追手がかからないことを確認するとここからTTモードに入る。下りのコーナーでも躊躇なく攻め込んでいくが、この日のコースはところどころ路面が濡れており、何度かオーバーランしそうにもなるが、それでも攻めの姿勢はゴールまで変わらなかった。
背後では追走のエヴァネポエルが眩しい金色のバイクで同じくTTモードで攻め続けるが、それでもタイム差はじわじわと広がっていった。エヴァネポエルはこのレースで落車大怪我をしたことがトラウマになっているためか、濡れたコーナーでの攻め方がそのままタイム差へと直結していく。
ポガチャルは完勝ともいえるタイム差で勝利、2位とのタイム差がこれほどまでに大きく広がったのも伝説のエディ・メルクスの勝利以来となった。メルクス自身が自分を超えていると認めたポガチャルは、このレースでもメルクスの記録が引き合いに出される走りを披露、史上最強の男の勢いは、開幕から最終レースまで続いた。
タデイ・ポガチャル(1位)
「今日もチームが最高の仕事をしてくれたよ。勝利のためにすべてを捧げ、それを結果に変えていく、今シーズンずっとやってきたことをここでもやったまでのことだよ。アタックしたのも予定通りだよ。残り40㎞からは個の力の勝負になるのはわかっていたからね。だからアタックを仕掛けて、タイム差が開いたのでそのまま逃げ続けることにしたんだよ。沿道の応援と声援を目いっぱい楽しめたし、今はシーズンオフが楽しみだよ。
レムコ・エヴァネポエル(2位)
「その他大勢の先頭でゴールできたことには満足だよ。4年前のこのレースで橋から転落して大怪我を負ってトラウマになっていたんだよ。まずはそれを乗り越えられたことに安どしているよ。ポガチャルが最難関スポットで仕掛けるのはわかっていたよ。連れの2人を振り落としてからは全力で個人TTをやったよ。ポガチャルと一対一になったけど、結局あれだけのタイム差をつけられれてしまった。今誰が最高の選手なのかを皆改めて確認できたよね。だから彼は勝者に相応しいんだよ。トラブルもなく、最高の走りができたけど、僕の前には”僕にとっての最高の不運”が走っていたよ。でもまあ最高の形でシーズンを締めくくれたんじゃないかな。」
ギウリオ・チッコーネ(3位)
「背後から追いついた瞬間に、彼らがお見合いを下からそのまま仕掛けたんだよ。最高の形でシーズンを終えられたと思うよ。僕の夢はこのイル・ロンバルディアでの勝利なんだよ。でもまあポガチャルとエヴァネポエルの後ならもはや勝利に等しいね。」
イル・ロンバルディア2024
優勝 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 6h04’58”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +3’16”
3位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +4’31”
4位 ヨン・イザギーレ(コフィディス) +4’34”
5位 エンリック・マス(モビスター)
6位 パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)
7位 レナート・ファン・エートフェルト(ロット・デスティニー)
8位 ニールソン・パウレス(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’58”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
10位 ザンドロ・マウリス(アルペシン・ドゥクーニンク)
H.Moulinette