ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第21st:最終個人TTを制したのはキュング!総合は腹痛のログリッチが4度目の制覇、今年のグランツールはすべてスロベニア人が制覇、オコナー2位キープ
グランツールの最終日はパレードステージをイメージしてしまうがブエルタ・ア・エスパーニャはそんな軟弱さは許さないとばかりに、最終日に個の力が試される個人TTを持ってきた。総合順位の入れ替えさえ起きかねないそんなステージだったが、今大会の個人は総合系はほとんどステージ優勝争いに絡まず、そして総合順位のシャッフルもわずかに起きるだけのステージとなった。裏を返せば、それほどまでに総合トップ10の力が拮抗していたという事だ。
そんな採取ステージを制したのはスイスチャンピオンジャージを身にまとうステファン・キュング(グルーパマFDJ)、一人圧倒的なパフォーマンスでステージ勝利を挙げ、今月地元スイスで開幕する世界選手権へ向け最高の調整となった。そして2位には総合優勝のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)が入った。3位にはマッティア・カッタネオ(T-REX・クイックステップ)、4位にはフィリッポ・バロンチーニ(UAEチームエミレーツ)、そして5位にはマウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ)と、あまりなじみのない面々がステージ上位を占めた。
通常総合上位勢がこういった個人TT上位を占めることがいいのだが、ログリッチに続いたのは総合6位のマティアス・スケルモースがステージ8位、そしてその次にはなんとベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)が予想以上の走りを披露しステージ11位と奮闘、これにより総合3位のエンリック・マス(モビスター)をさらに突き放して見事地力で総合2位を確定させた。
UAEチームエミレーツは当初ジョアオ・アルメイダとアダム・イェーツのダブルエースを投入して、昨年ヴィズマ・リースアバイクが達成したグランツールのスイープの再現を狙っていた。だが序盤でつまずき総合争いで苦境に立たされると、アルメイダがコロナウイルス感染による体調不良でリタイア、そしてAイェーツも総合で脱落し、チームは燦燦たる状況となる。だがここでチームの目標を変更し、その結果マルク・ソレルとAイェーツがステージ優勝、ジェイ・ヴァインが山岳賞、そしてチーム総合優勝を結果的に成功と言えるまでのV字回復をして見せた。またソレルは総合敢闘賞も獲得し、チーム力の層の厚さを改めて示して見せた。
カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)はオールトラリア人としてブエルタ初のポイント賞を獲得した。途中ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)のリタイアがあったからともいえるが、それでもステージ3勝を挙げているだけに、ポイント賞に相応しい獲得をしたと言えるだろう。
これで今大会ログリッチは4回目となるブエルタ制覇を達成、更にこれにより今年はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスをタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)を制していることから、全てのグランツールをスロベニア人選手が制する形となった。あまり多くの選手を輩出しているわけではない国だが、それぞれが見事と言わざるを得ない結果を残している。
そのログリッチも含め、この日は残ったレッドブル・ボーラ・ハンスグロエのメンバーが軒並みチーム内で蔓延した食中毒の影響であまり寝れていない状況で出走、最後は根性で乗り切った姿にはプロとしての本能と根性を見た気がした。
ステファン・キュング(ステージ1位)
「最高だね。全てのステージで常に勝利を狙って走っているからね。だから今日こそはと思っていたんだ。今日のコースは熟知していたんで、スタートから飛ばして、あとはいかに失速しないかが重要だったんだ。そしてその通りやり切ったよ。今日は本当にきつかった。でもブエルタの最終日はみなそうだよね。だからそんな状況下で掴み取ったこの勝利に価値があるよね。これが僕にとって初めてのグランツール勝利、ここまで長かったよ。そして30秒以上のタイム差をつけての勝利は本当に気分がいいよ。それは自分がすべての選手の中で最高のコンディションにあったという証だからね。」
プリモズ・ログリッチ(総合1位)
「今日は20回ぐらいトイレに行ったよ。でも最終的には何とかまとめなければならなかったからね。体調不良で起きうる最悪をいかに回避するかだったよ。今は勝利をただ祝いたいよ。」
ベン・オコナー(総合2位)
「4位以外でよかったよ。2位は勝利みたいなものだね。ここまで総合優勝に違いポジションになったことがないから最高だよ。 2021年ツール・ド・フランスと今年のジロ・デ・イタリアで総合4位だったからね。ようやく表彰台に上がれたよ。僕らしくはないけど、うまくTTをまとめられたよ。それを誇りに思うよ。様は自分の本能をいかに信じられるかだよ。今回みたいにうまく自分の本能を信じられたら、それは結果につながるよ。グランツールの中でいかにその瞬間を作るかだよ。それが成功へのカギだね。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第21ステージ順位
1位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ) 26’28”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +31”
3位 マッティア・カッタネオ(T-REX・クイックステップ) +42”
4位 フィリッポ・バロンチーニ(UAEチームエミレーツ) +43”
5位 マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ) +46”
6位 マティアス・ヴァチェック(リドル・トレック) +52”
7位 ヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー) +54”
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +1’02”
9位 ハリー・スイーニー(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’03”
10位 ブルーノ・アルミラル(デカスロンAG2Rモンディアル)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) 81h49’18”
2位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) +2’36”
3位 エンリック・マス(モビスター) +3’13”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’02”
5位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +5’49”
6位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +6’32”
7位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +7’05”
8位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +8’48”
9位 パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ) +10’04”
10位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +11’19”
山岳賞
ジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)
ポイント賞
カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
新人賞
マティアス・スケルモース(リドル・トレック)
チーム総合
UAEチームエミレーツ
総合敢闘賞
マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)
H.Moulinette