ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第20st:最終山岳勝負を制したのはダンバー、今大会2勝目、レッドブルは食中毒多発もログリッチは問題なく総合キープ、オコナーも快走で総合2位をキープ
最終日の個人TTを前に最終山岳ステージは激坂の山頂ゴールまでもつれる展開となった。総合勢のほとんどが顔を揃える中、この日最大の敗者となったのは昨日まで僅差の新人賞争いを繰り広げて総合7位だったカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)だった。その代わりにこのステージで大きく輝いたのはエドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ)、勾配がきつくなるセクションでするりとプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)中心の総合系集団から抜け出す、と第11ステージに続く今大会2勝目を挙げて見せた。これで総合でも11位までジャンプアップ、最終日の個人TTでの逆転トップ10入りを狙うこととなった。
そんなステージは残り7.9㎞からの最大勾配18%越えの山頂ゴールでの駆け引きとなったが、今大会を通して常にトップ10争いをし続けた主要メンバーがほぼそろい踏みでのバトルとなった。レッドブル・ボーラハンスグロエはチーム内で食中毒が発生、幸いなことにログリッチは影響がなかったがアシストを失っていたため、この日は積極的な攻撃ではなく防戦一方となる。しかし最終日の個人TTを考えれば、ログリッチにはそれで十分だった。
対してエンリック・マス(モビスター)とリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)は何とかして昨日までの総合リーダーであり、この日はチームジャージに戻ったベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)を総合2位から引きずり下ろすべく積極的なペースアップを見せる。だがこの日はフェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル)のアシストがあっただけではなく、総合リーダージャージの呪縛から逃れたオコナーは今まで以上に素晴らしい走りを見せる。
更には今大会大躍進のエキッポ・ケルンファルマのウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ)がこの日は最強のグランツールライダーと対等に渡り合って見せた。更にログリッチらを相手にアタックを仕掛けるなど、最後までその可能性の片鱗を見せ続けた。
そしてゴールではダンバーに続いてマスが7秒遅れで飛び込んでくる。更にログリッチがダンバーから10秒遅れでステージ3位、それにカラパズが続くと、先頭から14秒差でベラーデとオコナーがゴール、これでこの日もオコナーは総合2位をキープして見せた。それどころか最終日を前に総合トップ3脱落の危機どころか総合2位の可能性すら残す快走となった。
これで総合ではログリッチ、オコナー、マス、カラパズの4人がが3分以内にひしめき合い、総合9位のパヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)までが一桁の9分以内という接近戦で最終日を迎えることとなった。
このステージではUAEチームエミレーツが一体マルク・ソレルとジェイ・ヴァインのどちらに山岳賞ジャージを取らせるかに注目が集まった。その二人はお互いに逃げに乗るとポイントを積み重ねていく。そして、なんと同点の76ptでゴール手前の1級山岳を迎える。だがこの時点でメイン集団のペースが上がり、山頂を前に捉えられてしまう。この段階でソレルはすでに集団からも脱落していたが、ヴァインはログリッチらの総合集団に踏みとどまってチャンスを伺う。この1級山岳で5位以内に入り1ptでも取ればヴァインが山岳賞、取れなければソレルが山岳賞という状況で、なんとメイン集団で走り続けていたシヴァコフがステージ優勝を狙うために飛び出していく。総合でもトップ10の選手であり、この段階でアタックの応酬が始まればヴァインの山岳賞の夢は潰えたが、誰も動くことなくヴァインは4位で山頂を通過、これで山岳賞を確定させた。
更に今大会を通して10秒以内でジャージが目まぐるしく入れ替わった新人賞ジャージ争いもマティアス・スケルモース(リドル・トレック)がステージ10位でライバルのフラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)と同タイムでゴールした。Cロドリゲスが脱落したことでマッチレースとなったが、最後まで一歩も譲らぬ走りを披露した。
エドワード・ダンバー(ステージ1位)
「第11ステージで勝利したときに、周囲には自分らしくない勝ち方で、グランツールでの勝利のイメージと違っていたことを話したんだ。僕の中では逃げ切りであろうと総合争いであろうと、山頂を制して勝つのがイメージに合ったからね。だから今日の勝利のほうが嬉しいよ。総合での影響がないので誰も反応しないだろうと思っていたからね。とにかく最高の気分だよ。
プリモズ・ログリッチ(総合1位)
「まだ終わってないよ。そりゃ2分リードがあるほうが5分のビハインドよりはいいよ。明日は全力を尽くすだけだよ。ゴールするまで何も確定ではないんだよ。」
ベン・オコナー(総合2位)
「総合リーダージャージを着ていた呪縛でもあったのかな、今日のほうがよりクレバーに走れたよ。だから最後まで余力を残して対応できたよ。明日の個人TTは表彰台を目指して時計との戦いだね。自信はあるけど、レースは生き物、最後まで何があるかわからないからね。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第20ステージ順位
1位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) 4h38’37”
2位 エンリック・マス(モビスター) +07”
3位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +10”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +12”
5位 ウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ) +14”
6位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)
7位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +21”
8位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +23”
9位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +37”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) 81h22’19”
2位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) +2’02”
3位 エンリック・マス(モビスター) +2’11”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +3’00”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’48”
6位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +5’18”
7位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +6’26”
8位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +6’57”
9位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +8’50”
10位 パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ) +10’31”
H.Moulinette