ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第19st:レッドブル・ボーラ・ハンスグロエがチーム総攻撃で逃げもライバルもシャットアウトの完勝、エースログリッチ独走勝利で総合首位返り咲き
今大会、総合勢のバトルがあまりにも動きが鈍く、逃げ切りが数多く容認されてきたが、このステージを勝負所に定めていたレッドブル・ボーラ・ハンスグロエが終始集団の主導権を握り続ける。この日は逃げ切りは許さないとばかりに大きなタイム差を与えず、常に射程圏内で展開すると、勝負どころでは一気にチームTTモードで加速、そして最後の山岳に入るとレッドブル・ボーラ・ハンスグロエ最後のリードアウト2枚、ダニエル・マルチネス、そしてアレクサンダー・ヴラソフが一気にペースを上げライバルたちにアタックを仕掛ける間も与えないまま粉砕する。そしてそこからハイケイデンス走法で発車した総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)がハイペースでタイムを刻んでいく。
それに対応できなかったライバルたちがどんどんと遅れていく中、そこからエンリック・マス(モビスター)が飛び出していくが、そのタイム差は縮まらない。更にその背後からダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)が合流し、ゴールを目指す。しかし昨日までの総合リーダー、ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)の姿はそこにはなかった。何とか総合表彰台争いをしているリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)をーあむしていたが、結局オコナーはずるずると後退、それでも粘りの走りでなんとか1分49秒遅れでゴールした。
これによりログリッチには総合リーダーの座を奪われたが、総合2位はキープすることに成功した。だがマストは僅差、カラパズともタイム差が縮まったことで、残り2ステージでの総合表彰台キープに全力を注ぐこととなった。マスはボーナスタイムが欲しかったが、結局ガウドゥとスケルモースに次いでのステージ4位に終わった。何とかカラパズとのタイム差は広げたが、こちらも総合表彰台争いを残り2ステージに賭けることとなった。
173.5㎞の第19ステージは、残り少ないステージから考えても総合勢が動かざるを得ない状況であることは明白だった。そのことからも逃げ切りが容認される可能性は少なかったが、それでもステージ勝利を挙げていないチームにとっては挑まざるを得ない。一時は23名の逃げが決まるかに思われたが、これはメイン集団が吸収、そしてスタートから30㎞を過ぎてようやくアイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ)ら5名の逃げが容認された。
しかしタイムを与えてもらえない5名の逃げは、必死の逃避行を続けることとなる。最大で4分ほどまでタイム差は広がったが、その後は2分半ほどで推移し続ける。デカスロンAG2Rモンディアルとレッドブル・ボーラ・ハンスグロエはそれぞれ思惑をもって主導権争いを繰り広げるが、レッドブル・ボーラ・ハンスグロエの作戦はシンプルだった。常にハイペースで展開し、そのままライバルたちに駆け引きをさせないままにゴール勝負までもっていくという形だった。
逃げ切りは風前の灯火、レッドブル・ボーラ・ハンスグロエのペースアップに残り11㎞で逃げは吸収され、勝負は総合勢による直接バトルになると思われた。だがライバルたちに仕掛ける間も与えないほど、レッドブル・ボーラ・ハンスグロエの攻撃は洗練されていた。ハイペースのまま残り5.8㎞から最後の攻撃に出ると、あとはログリッチの独り舞台だった。そして総合のライバルはその引き立て役に過ぎなかった。
プリモズ・ログリッチ(ステージ1位、総合1位)
「ここの上りにはいい思い出があったからね。そして今回もいい夢を見させてくれたよ。今日は別にステージ勝利は狙っていなかったんだよ。でもそれをチームメイトが無視してどんどんとペースを上げてくれたんだよ。まあ他にやることもなかったしね。だからあとは僕が”やる”と一言号令をかけただけだよ。足並みをそろえなければチームは機能しないからね。まあまだ明日のクイーンステージもあることだし、まだ何も確定ではないよ。明日の山岳も、TTも大きく展開を変える可能性を秘めているからね。」
ベン・オコナー(総合2位)
「まだ終わってないよ!今日は最後ぶっ壊れたけどね。途中まではいい感じだったんだけど、途中で限界を超えたね。でもまだ第19ステージだからね。レッドブル・ボーラ・ハンスグロエの攻撃は予見していたから驚かなかったけど、でも自分があそこまで走れないとは思わなかったよ。平均的な走りしかできなかったけど、それが現実なんだとは思ったよ。まあ月曜日にはテラスでリラックスしながらビールを飲んでいるだろうね。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージ順位
1位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) 3h54’55”
2位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +46”
3位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック)
4位 エンリック・マス(モビスター) +50”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +57”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)
7位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) +1’01”
8位 セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)
9位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’03”
10位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +1’23”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) 76h43’36”
2位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) +1’54”
3位 エンリック・マス(モビスター) +2’20”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’54”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’33”
6位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +4’47”
7位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’55”
8位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’55”
9位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ +6’40”
10位 )パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ) +7’39”
H.Moulinette