ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第18st:下剋上三度!プロツールのエキッポ・ケルンファルマが今大会3勝目!ベラーデがアタック一閃で逃げ切り勝利!ステージ最大の敗者はランダ
今大会は予想できないことが多い。そのうちの一つが逃げ切り勝利があまりにも多いこと。通常総合勢の争いが勃発すると、逃げ切りの可能性がぐんと下がり、一つのグランツールで数回逃げ切りが見られるのが平均的だが、今大会はこの第18ステージでも逃げからの勝利が決まり、早くも8回の逃げ切り勝利が発生したことになる。そしてそのうちの3回の勝利は、ワールドツアーチームより格下のプロツアーチーム、エキッポ・ケルンファルマが挙げているというのも極めてまれなケースと言えるだろう。そのチーム3勝目をチームにもたらしたのはウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ)、42名の大所帯の逃げが徐々に崩壊していく中でも生き残り続け、そして残り5㎞で単独アタックを決めると、ゴールまで独走し続け、ついに今大会自身初の勝利を挙げた。実は今大会ではすでに2度のステージトップ10入りを果たしており、3度目の正直となった。
そしてこのステージでは3位にもポー・ミケル・デルガド(エキッポ・ケルンファルマ)が入り、チームとして1-3を達成した。そのミケル・デルガドも今大会5度目のトップ10フィニッシュ、今大会エキッポ・ケルンファルマはチームとして大躍進を遂げている。
そして総合争いは逃げの後方で勃発、完全にチーム戦略が裏目に出たT-REX・クイックステップは エースで総合5位のミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ)が遅れたタイミングでアシストの多くが逃げに乗っておりサポートできない状況となってしまった。これにより逃げから順位を下げさせてアシストに回らせたが、これもタイミングを逸した形となってしまう。その間に総合トップ4のベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル、プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)、エンリック・マス(モビスター)、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)はドンピシャのタイミングで逃げから番手を下げてきた面々がアシストに入りペースアップ、ランダにアシストが合流する前に引き離すことに成功し、この日だけで3分以上タイムを失ったランダはこれで総合表彰台争いから脱落、一気に総合10位まで順位を下げた。
179.5㎞のステージでも逃げ切り容認の雰囲気が漂うが、この日はなかなか逃げが決まらない。しかし残り122㎞で遂に大所帯42名の逃げが決まることとなる。するとその逃げにのった山岳賞2位につけている第16ステージ勝者のマルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が、不調の現在山岳賞のチームメイトのジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)からチーム内でのジャージ引き渡しを狙う。2級山岳、1級山岳を共にソレルは先頭で通過し、これで実質的に山岳賞争いのトップに躍り出る。
さすがに大所帯となりすぎた先頭集団は、徐々に崩壊しその人数を減らしていく。メイン集団はこの日も逃げを完全容認、デカスロンAG2Rモンディアルは全くそれを追う様子を見せず、タイム差はどんどんと開き10分を超えていく。
そんな中先頭集団ではソレルが先頭通過した1級山岳でバトルが始まる。ゴールまではまだ遠いが、カラパズがまず動きを見せる。この段階で遅れたのはランダ、総合表彰台争いのライバルを脱落させるためにEFエデュケーション・イージーポストとカラパズは容赦ないペースアップを図る。これにあわや犠牲者になりかけたのが総合リーダーのオコナー、だが何とか粘りの走りで食らいついていく。
先頭の逃げがどんどんとその数を減らし12名となるが、なんとそこに3名を残したのはエキッポ・ケルンファルマ、すでに2勝を挙げているパブロ・カストリーリョ(エキッポ・ケルンファルマ)、さらにベラーデとミケルの3人が戦況を大きく揺さぶる。人数の利は戦略の利、そして下克上を狙うは失うものはない選手たち、それに対してライバル選手たちは警戒せざるを得ない状況が続く。
そしてメイン集団は脱落してきた逃げを次々吸収、そこにはEFエデュケーション・イージーポストら総合系擁するチームの選手たちもおり、これがランダにとっては不運な結果となる。同じように逃げ頭集団から番手を下げてきた選手たちがランダに合流を果たすには、先に攻めたカラパズらよりも時間がかかってしまい、結果これが致命的となる。自らのアシストが合流を果たすまでの間、ランダは自力で追わねばならない状況が続き、結果的にこの日最大の敗者となってしまった。
そして先頭集団ではスティーヴン・クライズワイク(ヴィズマ・リースアバイク)がアタック、そしてそれに反応したのはベラーデだった。このベラーデの動きを後押しする世に、カストリーリョとミケル・デルガドの2人が追走を発生させないアンカーの役割を完ぺきにこなす。残り1㎞で15秒差のアドバンテージを持ったまま、ベラーデは渾身のペダリングを続け、スプリントで迫る後続に追いつかれることなく大金星を挙げた。更にその背後ではミケルがスプリントで今大会2度目のステージ3位でゴールした。
最後まで続いたメイン集団のハイペースは、結果として総合争いでランダ一人を大きく脱落させることとなり、3分20秒差でゴールしたランダには、ツール・ド・フランスからの連戦の疲れが見て取れた。
ウルコ・ベラーデ(ステージ1位)
「ブエルタが始まる前に、監督が”今大会で目立って有名になれ”と言っていたんだ。でも正直世界最高峰のレースでそれは難しいと思っていたんだ。今まで特に目立った戦績もないからね。でもこの勝利で少しは名前を覚えてもらえたと思うよ。」
ベン・オコナー(総合1位)
「カラパズのアタックがランダを振り切るためだとは知らなかったよ。でも結局その恩恵にあずかることになったね。でもついていくのがやっとだったよ、なんせハイペースでどんどんと攻めていくんだもん。今年のブエルタに易しい日なんて全くないよ。まあ明日以降のステージでも、皆疲れているだろうから、条件は五分五分なんじゃないかな。また一日総合ジャージを守れたんだから、大満足だよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージ順位
1位 ウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ) 4h00’52”
2位 マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ) +04”
3位 ポー・ミケル(エキッポ・ケルンファルマ)
4位 マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)
5位 アレクサンダー・ヴラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
6位 オイエル・ラズカノ(モビスター)
7位 ヨン・イザギーレ(コフィディス)
8位 マティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)
9位 パブロ・カストリーリョ(エキッポ・ケルンファルマ)
10位 スティーヴン・クライズワイク(ヴィズマ・リースアバイク) +11”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 72h48’46”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +05”
3位 エンリック・マス(モビスター) +1’25”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’46”
5位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +3’48”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +3’53”
7位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +4’00”
8位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +4’27”
9位 パヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ) +5’19”
10位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +5’38”
H.Moulinette