ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第14st:今年のブエルタは変?山岳ステージでスプリンターたちがゴール勝負の怪、グローヴスがファン・アールトを撃破し今大会2勝目
今年のブエルタはどこかおかしい。山岳ステージが18ステージもあるのだが、総合バトルがあまり活発でないせいか、逃げ切り勝利が多いばかりか、なんと1級山頂越えの山岳ステージでスプリンターたちの競演となった。そんなステージは上りスプリントとなったが、スプリンターたちが勢ぞろいし真っ向勝負、カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)の今大会2強スプリンターが横一線の勝負となった。そして勝利の軍配はグローヴスに上がり、大差をつけられているポイント賞争いで一矢報いる形となった。
ステージ4勝目こそ逃したが、ファン・アールトは1級山頂を先頭で通過し山岳賞をがっちりとキープ、今大会山岳賞とポイント賞の2刀流を貫くようだ。総合争いは全く勃発せずこの日も沈黙、1級山岳からゴールまでの下りで総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)がパンクしバイク交換を余儀なくされたが、それでも総合バトルは最後まで動きないままにスプリント勝負へと持ち込まれた。ここまでは今シーズンのグランツールの中で間違いなく最も動きの乏しい総合争いとなっている。
第14ステージは今大会最長の200.5㎞、昨日まで同様に逃げ切りが容認される可能性が高いと想定されたが、それと同時にファン・アールトが前日、「僕向き」と発言したことで、スプリンターチームが勝利の可能性ありと睨み、戦略を立ててきた。予想通りスタート直後から激しいアタックの応酬が始まる。しかも緩やかな登りにもかかわらず平均時速50㎞で最初の1時間を駆け抜けるなど、かなりのハイペースで展開する。そのため逃げが決まるまでにおよそ50㎞を要し、ようやくこの日の逃げが決まる。
だが昨日までと違い容認されたのは僅か6人、ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス)、ヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー)、ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)、マルコ・フリゴ(イスラエル・プレミアテック)、ザンドロ・マウリス(アルペシン・ドゥクーニンク)、アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ)となった。今大会何度となく逃げに乗っているメンバーが多く、実力者でもあるが、僅か6人の逃げとなったのにはスプリンターチームが大所帯の逃げを嫌ったからだ。その為この逃げはあまり多くのタイムアドバンテージを与えてもらえない。
長い逃げの末残り40㎞でナルバエスが勝利の可能性を手繰り寄せるためにアタックを敢行すると、残ったのはフリゴとテハダだけとなった。しかし後続のメイン集団のペースも衰えず、残り30㎞でその差はわずか40秒しかない状況だった。何とか1級山岳の頂上まで逃げきれれば、下りで再び飛び出せると踏んだナルバエスはもう一度アタックを仕掛け単独先頭となるが、結局後続のメイン集団はこれをよしとせず残り20㎞、頂上まで3㎞ほどを残しナルバエスの夢もろとも呑み込んでいった。
この上りで勃発するかに思われた総合バトルも結局勃発せず、翌日の勝負所の山岳ステージを見越してか全く動きにないまま展開、ただひたすらに淡々と上り続けるにとどまった。そして頂上ではファン・アールトがしっかりと先頭通過しポイントを積み重ねると、ここから下りでスプリンターチームの覇権争いが始まる。各チームエーススプリンターを残したことで勝負に向けての位置取りが始まるが、ゴール前に設定された複数のコーナーでの位置取りが結果すべてとなる。先頭で最後のコーナーを抜けたのはアルペシン・ドゥクーニンクのリードアウト、そしてその背後にはグローヴスが控え、更にその背後にファン・アールトがぴたりと貼りついている。
そして始まったスプリント、横一線で一歩も譲らない二人だけが抜きんでた形となり、勝負はゴールラインまで続いた。結果僅差でグローヴスに軍配、ファン・アールトは2位に終わり今大会4勝目はお預けとなった。
カデン・グローヴス(ステージ1位)
「最高だね!強がスプリントステージになるとは思わなかったけど、これはヴィズマ・リースアバイクのレースコントロールのおかげだね。そしてファン・アールトと真っ向勝負できたのは最高に楽しかったよ。アタックが少なく一定ペースで進んだことで、脚を最後まで残せたんだよ。今日はチームも素晴らしいリードアウトをしてくれたけど、今回は自分自身もいい走りができたと思う。第2ステージ勝ってから、2位や3位ばかりだったからね。正直僕があの上りをこなせたのはレアケースだと思うよ。」
ワウト・ファン・アールト(ステージ2位、山岳賞、ポイント賞)
「今日はきつかったよ。一日中平均で290Wぐらい出ていたからね。それにチームがあれだけの仕事をしてくれたのに、結果が出なかったことに本当にがっかりしているよ。勝てるという確信があったんだけど、残り50mで足がつってしまったよ。本当に少しだけグローヴスが強かったんだよ。でも今日のハイライトはやっぱり山岳ステージでスプリンターチームがスプリント勝負のためにレースを最後までコントロールし続けたことじゃないかな。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージ順位
1位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク) 4h21’34”
2位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
3位 コルビン・ストロング(イスラエル・プレミアテック)
4位 マティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)
5位 ポー・ミケル(エキッポ・ケルンファルマ)
6位 フィリッポ・バロンチーニ(UAEチームエミレーツ)
7位 サイモン・ググリエミ(アルケアB&Bホテルズ)
8位 アリアン・リヴェンス(ロット・デスティニー)
9位 シャビエル・ベラサテギ(エウスカルテル・エウスカディ)
10位 カルロス・カナル(モビスター)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 52h10’15”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +1’21”
3位 エンリック・マス(モビスター) +3’01”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +3’13”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +3’20”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’12”
7位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +4’29”
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +4’42”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’44”
10位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’17”
H.Moulinette