ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第13st:直線激坂頂上ゴールを制したのはウッズ!UAEは厄日、総合争い勃発でログリッチ淡々とハイケイデンスで他を圧倒、オコナー失速も死守、総合激化
山岳というのは九十九折れになるほどきつそうに見えるが、実はそうではない。ひたすら直線で勾配がきつくなっていくほうがよほどつらいのだ。なかなか近づいて来ないその遠景が苦しみをさらに強調する。この日の山頂ゴールの1級山岳、プエルト・デ・アンカレスがまさにその難関そのもの、残り7.5㎞で何度となく15%越えの激坂が現れて選手たちを絶望へと追い込んでいく。
この日も勝負は2部制となり、逃げによるステージ優勝争いと、総合勢によるバトルの二本立てとなった。逃げはUAEチームエミレーツがマルク・ソレル、ジェイ・ヴァイン、ブランドン・マクナルティの3人を送り込み優位に立つ。だが同じく逃げに乗ったポイント賞のワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)がこの日もポイント賞に加え手山岳賞も荒稼ぎし、山岳ジャージも手にしてしまう。そのジャージを狙える位置にいるヴァインだったが、一つ手前の山岳の下りで落車しで斜面に落ちていってしまったマクナルティーのバイクに突っ込んでクラッシュ、UAEはステージ勝利を狙っていたがここで一気に二人を失ってしまう。
そうなると最後の頂上ゴールへの上りにはUAEはソレルしか残っておらず、ファン・アールト、マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ)、マイケル・ウッズ(イスラエル)、サム・オーメン(リドル・トレック)の5人での勝負となる。だが雌雄はあっさりと決した。総合力のあるクライマー、カナダチャンピオンジャージのウッズが一気に仕掛けると、あっさりとこれが決まりゴールまで逃げきって見せた。これでブエルタは通算ステージ3勝目、ナショナルチャンピオンジャージを着用しての勝利に満面の笑みだった。シュミット、ソレル、オーメンと続き、レース中盤としては山岳賞とポイント賞の両方を有する珍しいケースとなったこととなったファン・アールトは5位でステージを終えた。
そして同じく最後の上りで総合バトルも勃発する。一気にペースを上げたのはレッドブル・ボーラ・ハンスグロエ、ダニエル・マルチネス(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)らの急激なペースアップで、ライバルチームの隊列は一気に崩壊していく。剥き出しとなった各チームのエースに対して追い打ちをかけるように、最後は総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)が淡々とハイケイデンスでペースアップ、切れ味鋭いというよりはぬるりと加速をすると、それについていけたのは総合3位のエンリック・マス(モビスター)と大会連覇を狙うセップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)、少し離れてミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ)だけだった。
この段階でオコナーは早々に脱落、また総合7位で上位を狙うアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)もここで脱落、そしてリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)やカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)、ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)らは何とか自分のペースでログリッチとのタイム差を抑えるべく奮闘を続ける。だがここでランダ、クスに続いてマスのまでもが脱落してしまう。
ログリッチはそのままゴールまで黙々とペダリングを緩めずゴール、それに対してマスは一気にペースダウンし、次々と後続に抜かれていってしまう。結局総合ではランダ、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)、Cロドリゲス、ガウドゥ、フロリアン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)、カラパズ、マスの順でゴール、このメンバーはログリッチから1分以内にゴールしてタイムロスを最小限に食い止めた。対してオコナーは1分55秒を一気に失う形となった。当然上記の総合勢とも1分以上タイムを縮められることとなり、総合争いはさらに混戦模様となってきた。
この日のステージも昨日まで同様に、逃げが容認される可能性が高いことから、スタート直後から激しく選手たちが動いた。そして決まった24名の大所帯の逃げには3名のUAE選手が入り、Aイェーツへのアシストも含めての様々なケースを想定しての戦略が伺える。それに対してファン・アールトはポイント賞を積み重ねるべく、この日も元気に飛びだしていった。この日もタイムはぐんぐんと広がっていき、メイン集団との差は20分台に突入しそうなところまで行く。逃げ集団ではファン・アールトが山岳ポイントも積み重ねバーチャルで山岳賞リーダーに躍り出る。ポイント獲得時のみ仕掛けるわけではなく、常に集団を牽引するような走りを続けることで、集団自体のペースは保たれ続けた。
そして逃げによるステージ勝利争いが確定すると、UAEが動き出す。3枚の攻撃のカードを順に動かし、逃げの人数を削っていく。だが攻めすぎたツケか、ヴァインとマクナルティの落車で状況が一変する。そこまでこの二人を活かすべく仕掛けていたソレルにステージ勝利は託されたが、残り7.5㎞からの頂上への激坂はきつすぎた。ウッズが残り5.1㎞で仕掛けると一度はシュミットがついていくが、結局残り4.8㎞からは一人旅となる。そのままジワリと後続との差を広げたウッズが勝利をおさめ、UAEは結局ステージ勝利を逃し、また二人の主力が落車とそのバイクに突っ込むクラッシュ、更には一人で総合上位勢に挑むこととなったAイェーツもタイムを失うなど、攻めたにもかかわらず厄日となってしまった。
マイケル・ウッズ(ステージ1位)
「最高にハッピーだよ。僕の夢はこのカナダチャンピオンジャージで勝利することだったからね。今シーズンは体調不良にメカトラ、落車と散々だったから、ようやくこれで安堵できたよ。今日は逃げに乗れてラッキーだったよ。それにUAEがいいメンバーをそろえていたから必死についていったんだけど、落車をしてしまったのでちょっと尻込みしてしまったんだ。でもこれはチャンスなんだと切り替えて仕掛けたよ。」
ベン・オコナー(総合1位)
「まだ総合リーダージャージをキープできたから良しとしよう。ログリッチのアタックは見えなかったんだよね。あとは何とか体力を戻してこれからのステージでどこまでキープできるかに専念するよ。」
プリモズ・ログリッチ(総合2位)
「まだ自信があるわけではないよ。時には勝つし、ときには負ける。ただ今日は勝った、というだけのことだよ。ただいまできること、やるべきことを黙々とこなしていくだけのことだよ。」
エンリック・マス(総合3位)
「今日はログリッチに合わせてオーバーペースになってしまったよ。上り始めですっからかんだったのに、合わせてしまったらパンクしたよ。でもまだ総合優勝は諦めていないよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第13ステージ順位
1位 マイケル・ウッズ(イスラエル・プレミアテック) 4h19’51”
2位 マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ) +45”
3位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +1’11”
4位 サム・オーメン(リドル・トレック) +1’25”
5位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク) +2’56”
6位 ハイス・リーメリゼ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +3’33”
7位 ホセ・フェリックス・パラ(エキッポ・ケルンファルマ) +5’19”
8位 ミケル・ビズカラ(エウスカルテル・エウスカディ) +5’38”
9位 ルーカ・ヴェルガリート(アルペシン・ドゥクーニンク) +5’59”
10位 マティアス・レベレ(アルケアB&Bホテルズ) +6’15”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 52h10’15”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +1’21”
3位 エンリック・マス(モビスター) +3’01”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +3’13”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +3’20”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’12”
7位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +4’29”
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +4’42”
9位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +4’44”
10位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’17”
H.Moulinette