ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第12st:昨日亡くなったチーム創業者に捧げる大金星!カストリーリョが逃げから飛び出し1級山岳頂上ゴール制すジャイキリ!総合勢バトルなく集団ゴール
チームの創業者の死、喪章をつけてレースに挑んだエキッポ・ケルンファルマ、チームにとっては忘れられないステージとなった。10人に逃げが容認されたこのステージ、ワールドツアーチームの中でもかなりの強豪ぞろいとなった面子、そこに唯一のプロツールチームで名前を連ねたのは23歳のパブロ・カストリーリョ(エキッポ・ケルンファルマ)だった。誰も予想すらせず、マークもしなかったカストリーリョは1級山岳への頂上ゴールへの上りで、残り10㎞で躊躇なくアタックを決める。だが完全未知数のカストリーリョを誰も警戒していなかったことで、積極的な追走は掛からない。
しかしステージ勝利を狙うには攻めなければならない。スイスチャンピオンジャージのマウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ)は単独でカストリーリョを追走し、一時は12秒差まで迫るが、そこからじわじわと離されてしまう。さらにそこへヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス)、マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ)が合流を果たし4人となるが、カストリーリョとの30秒差は近くて遠かった。残り3㎞、2㎞、1㎞とカウントダウンのように進んでいくが、そのタイム差は一向に縮まらない。ゴール手前で猛然とプールがスプリントで迫ろうとするが、何度も後ろをチェックしながら走り続けたカストリーリョは、お世辞にもスムースとは言えないながらも最後までがむしゃらにペダルを踏み続けて見事に山頂を制し雄たけびを上げた。
カストリーリョ自らにとってのプロ初勝利はチームにとってもグランツール初勝利、しかもワールドツアーチームを撃破しての山頂ゴール制覇のジャイキリ達成は、記憶に残る勝利となった。チーム関係者皆が涙する勝利、価値ある一勝となった。プールは昨日も逃げてのステージ3位だったが、この日も2位とまたしても勝利には一歩届かなかった。3位にはソレルが入った。
この日は総合勢は完全に沈黙した。昨日リチャード・カラパズ(EFエデュケーションイージーポスト)を転倒させたとしてデカスロンAG2Rモンディアルは選手3名と監督が、ポイントやタイム剝奪、さらには罰金のペナルティーを受け、更に総合リーダーのベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)がタイムロスと散々なステージとなった。それでも総合リーダーチームとしてこの日も不慣れな集団コントロールを懸命に続けた。しかしこの日はプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ、エンリック・マス(モビスター)らが誰も動かなかった。今シーズンポガチャルを中心とした「攻撃は最大の防御」をモットーとした”常時アタック合戦”を見てきているだけに、拍子抜けしてしまう結果となった。結局総合は順位変わらず、頂上ゴールのステージとしては寂しい総合争いとなった。
今大会最も短い137.5㎞のステージ、だが総獲得標高は3000m越えの難関山岳ステージだ。だが今大会総合勢が積極的な追走をしないことが多く、このステージも逃げ切りが容認される可能性が高いと考えた各チームと選手は、スタート直後から激しいバトルを繰り広げる。そしてようやくカストリーリョやプール、ソレルを含む9名の逃げが決まる。だがそれを追うようにワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)らが追走を仕掛けるが、これが吸収されると、今度はナルバエスが単独で追走を仕掛け合流することに成功、この日の逃げの10名となる。
総合に影響がないこともあって、メイン集団は完全にこの逃げの10人を容認、それによりタイム差は10分を超えていくこととなった。しかしその後徐々にその差は詰まるが、この日の逃げ切りは早い段階で確定的となった。そして迎えた頂上ゴールバトル、まず最初に動いたのはソレルだった。そして次に仕掛けたのはカルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)、だがこれも不発に終わる。するとするするとカストリーリョが抜け出していく。全くノーマークだった若人に対し、誰も反応せず、ただそのアタックを見送ってしまう。立った一瞬のこの躊躇が、残りの選手たちにとっては悔やみきれないものとなった。カストリーリョはそのまま何度も後ろを振り返っては歯を食いしばってペダルを踏みこむを繰り返し、最後まで近くて遠い存在であり続けた。見事プロ初勝利、そして今大会スペイン人選手としても初勝利となった。
パブロ・カストリーリョ(ステージ1位、敢闘賞)
「信じられないよ。最高の勝利だよ。この勝利はチームとスタッフ、皆で勝ち取ったものだよ。正直ゴールした今でも、ブエルタでステージ優勝できたなんて現実味がわかないよ。この勝利は、家族、チーム、そしてこのチームにとって特別な存在、昨晩亡くなられたチームの創設者アズコナさんに捧げるよ。今日は彼のことを思いながら走ったよ。」
ベン・オコナー(総合1位)
「自信を失っていたかって?僕そんなこと言ってないよ。昨日はただたむをロスした、それだけのことだよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第12ステージ順位
1位 パブロ・カストリーリョ(エキッポ・ケルンファルマ) 3h36’12”
2位 マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +08”
3位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +16”
4位 マウロ・シュミット(ジェイコ・アルーラ) +23”
5位 ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス) +34”
6位 マウリ・ファンセヴェナント(T-REX・クイックステップ) +40”
7位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン) +49”
8位 カルロス・ヴェローナ(リドル・トレック) +1’03”
9位 ルイス・メインケス(インターマルシェ・ワンティ) +1’14”
10位 オスカル・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +1’52”
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 47h37’35”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’16”
3位 エンリック・マス(モビスター) +3’58”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’10”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +4’40”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +5’23”
7位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’29”
8位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’30”
9位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル)
10位 ジョージ・ベネット(イスラエル・プレミアテック) +5’46”
H.Moulinette