ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第11st:またも逃げ切り勝利容認、制したのはダンバー!総合争い勃発のラスト山岳でオコナータイムロス!仕掛けたログリッチらはタイムを削るのに成功
昨日同様、この日のステージも逃げ切りが容認された。総合への脅威が少ない選手たちが中心となったことで、総合リーダーのベン・オコナー擁するデカスロンAG2Rモンディアルがこれを容認、総合勢での直接対決に注力したはずだった。そんなことは露知らず、先頭では大所帯による逃げ切り勝利が確定的となり、スプリント勝負になるかに思われた残り600m、エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ)がこれ以上ない絶妙のタイミングでアタックを仕掛ける。自らの勝利の芽を失いたくない面々は、誰もこれに反応をせずお見合い状態となってしまった。その後マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)が遅れて反応し追走を仕掛けるが時すでに遅し、ダンバーがグランツール初勝利を挙げた。クインテン・ヘルマンス(アルペシン・ドゥクーニンク)がプールは捉え2位、プールは3位に終わった。本来は今大会エースで迎えたはずのダンバーだったが、第1週の暑さに屈し脱落していたが、ここへきてようやくエースらしい走りを見せることができた。
その背後では最後の上りでドラマが待っていた。オコナーが苦しそうなのを見透かしたレッドブル・ボーラ・ハンスグロエが一気に仕掛ける。アレクサンダー・ヴラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)がオコナーの様子を確認しながら一気にペースを上げる。そしてそこからプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)とエンリック・マス(モビスター)の2人が飛び出していく。それに遅れる形で総合2位のリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、総合5位のミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ)らが追走、その最後尾をオコナーがかろうじてついていく。しかしオコナーは結局この集団からも脱落、更に後方から追ってきたアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)、セップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)らと共にゴールすることとなった。
これによりログリッチとマス、ランダ、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)は37秒、カラパズは22秒をオコナーから削り取ることに成功した。またこのステージでジョージ・ベネット(イスラエル・プレミアテック)が大きく順位を上げ総合10位に食い込んできた。まだまだ見通せない総合優勝争い、オコナーがどこまで粘れるかに注目が集まる。またこのステージで総合3位と4位が入れ替わり、総合6位から11位までがすべてシャッフルされるという僅差の勝負、総合3位から総合11位までが2分差の中にひしめき合うだけにこの総合上位争い全般は激しく動き続けそうな雰囲気が漂っている。
この166.4㎞の山岳ステージでも逃げ切りの容認の可能性があることを踏まえ、スタート直後から激しいバトルが勃発する。ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス)とヴィクトル・カンペナールツ(ロット・デスティニー)の2人が活発に動く中、最終的にカンペなーるとがその独走力を活かして飛び出していく。その背後でも各チーム逃げに乗るべく何度となくアタックが繰り返されるが、最終的にスタートから70㎞を要して38名という大所帯が形成された。
デカスロンAG2Rモンディアルはメイン集団をコントロール、逃げの中の最上位が10分近く遅れているベネットだったことから、この逃げはようやく容認される形となった。だがこのタイムは裏を返せば一定の距離を保たねばならず一定の労力を要することとなった。この逃げにベネットを筆頭に4人を送り込んだイスラエル・プレミアテックは当然のようにその総合でのジャンプアップを目論見、逃げ集団を先頭で牽引する。
しかしその逃げも人数の多さから協調性を欠き一枚岩ではなかった。ザンドロ・マウリス(T-REX・クイックステップ)が飛び出していくと、ここから長い一人旅を敢行する。その背後ではベネットのバーチャルでの順位が上がることで、総合上位に選手を送り込んでいるチームの選手たちはペースアップに協力をしなくなる。それでもイスラエル・プレミアテックは躊躇なく出し惜しみをせず牽引を続ける。残り33㎞でマウリスを捉えた逃げ集団は、ここからまたして動きを見せ始める。まず動いたのはまたしてもカンペナールツ、そしてこれがカルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)ら3名のアタックを誘発する。しかしこの小集団逃げもゴールまでは持たない。一丸となってゴールスプリントになるかに思われた残り600m、ダンバーが会心の一撃を振り下ろすと、これが見事にと決まり、ダンバーにとってもチームにとっても貴重な1勝を挙げた。
エドワード・ダンバー(ステージ1位)
「今大会は最悪のスタートだったよ。総合狙いで来たのに、最初の数ステージで、体が全くついて来ないことに気づいたんだ。でもトレーニングはしっかりとしてきたから、ステージ狙いに気持ちを切り替えたんだ。今日も逃げに乗ろうと必死で走って、もう駄目だとあきらめかけたときに大人数の逃げが決まって、それにうまく便乗できたんだよ。最後もスプリントになるだろうと思ったんだけど、自分の勝利の可能性を上げるには、ロングスパートよりも長いこの距離を仕掛けるしかなかったんだよ。あとは自分を信じただけさ。」
ベン・オコナー(総合1位)
「もちろんログリッチが仕掛けるとは思っていたよ。もちろんそれに対応できると思っていたんだけど、何でもこなせるわけではなかったね。いつだろうとタイムを失いたくないんだよ。だから今日みたいにタイムを失った日はすべてバッドデイさ。正直思ったよりきつかったんだよ。でも何とかまだ総合リーダージャージはキープできているからね。」
プリモズ・ログリッチ(総合2位)
「毎日がチャンスだよ。今日はうまくいったのでハッピーだよ。脚も回っていたし、チームワークも完璧だったよ。もちろん勝つこともあれば負けることもある、でも戦略をきちんと遂行できていればそれはチームにとっては勝ちなんだよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第11
ステージ順位
1位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) 3h44’52”
2位 クイテン・ヘルマンス(アルペシン・ドゥクーニンク) +02”
3位 マックス・プール(UAEチームエミレーツ)
4位 ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス) +04”
5位 ウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ)
6位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ)
7位 ヨン・イザギーレ(コフィディス)
8位 カルロス・ヴェローナ(リドル・トレック)
9位 ジャンマルコ・ガルフォリ(アスタナ・カザフスタン)
10位 ブランドン・マクナルティー(UAEチームエミレーツ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 43h54’54”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’16”
3位 エンリック・マス(モビスター) +3’58”
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’10”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +4’40”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +5’23”
7位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’29”
8位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’30”
9位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル)
10位 ジョージ・ベネット(イスラエル・プレミアテック) +5’46”
H.Moulinette