ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第10st:山岳のブエルタで10ステージ3勝!勝てるチャンスはすべて勝つ!ポイント賞ジャージのファン・アールトが逃げからのスプリントデュアルを制す!
21ステージ中、丘陵・山岳ステージが18ステージを占める中、クライマー以外の人間がどのようにして勝つかを考えたときに、先行して勝つという事しか見えてこない。だがそれは容易なことではなく、実行できる選手は多くはない。だがそれをいとも簡単にやってのける男がいる。世代最強に俺をを入れることを忘れないでくれ、と言わんぞとばかりに素晴らしい走りを見せたのは、グリーンジャージのポイント賞首位、ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)だった。今大会前から、チームより「自由」を与えられており、自分の為にステージ勝利を好きなだけ狙ってよいという手形を渡されていた男は、チームのエースで大会連覇を狙ったセップ・クス(ヴィズマ・リースアバイク)がいいところなく沈んでいることもあり、なおのこと勝利を躊躇なく狙いに行っている。
このステージでも大逃げの末に、残り20㎞にそびえ立つ1級山岳も難なく上りきり、下りきってのクエンティン・パシャール(グルーパマFDJ)とのマッチスプリントを制し、今大会3勝目を余裕で決めた。これで今大会3勝目、他2位2回、3位1回と、合計10ステージで6度も表彰台に上っている。今シーズン前半のケガで活躍できなかったうっ憤を晴らすかのように、総合争い以上に目立つ活躍を見せている。
総合勢では第9ステージでアントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が熱中症となりそのままリタイアし未出走となった他、第8ステージで飛び出してきた鹿との接触で落車をしたギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)もこのステージでリタイアとなった。総合上位勢はこの日も仕掛けなくデカスロンAG2Rモンディアルが終始ペースを無理ない範囲でコントロール、ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)にとっては無理なく総合リーダージャージを守ると同時にしっかりと脚を休めて温存することができている。
160㎞で1級山岳を含む4つの山岳が選手たちを迎え撃つ山岳ステージ、総合勢を出し抜いて勝利を狙うのであれば、逃げしかない展開。こういうステージは荒れる傾向にあるがその通りこの日のアタックの応酬はスタートから45分、最初の2級山岳の頂上を超えるまで続いた。終始動き続けたのはファン・アールト、このチャンスのあるステージを逃すまいと勢いよく飛び出すと、マルコ・ソレル(UAEチームエミレーツ)、ウィリアム・レセルフ(T-REX・クイックステップ)、ユリ・ホルマン(アルペシン・ドゥクーニンク)、パシャールの5人体制の逃げがようやく決まる。この逃げに乗るべくいくつかの追走が発生したが、先行する5人のペースが速く合流できないままメイン集団へと吸収されてしまう。気が付けばタイム差は6分を超えていく。
だがタイム差が広がりすぎたことを懸念し、デカスロンAG2Rモンディアルの前にレッドブル・ボーラ・ハンスグロエが編成されるとペースが一気に上がり、逃げの5人との差がぐんぐんと縮んでいく。だがそれを察したファン・アールトはここでペースアップ、一度は縮んだ差がまたも広がっていく。この日逃げ切るのだという強い意思を明確に示し、ここから勝利への動きを最後の1級山岳を前にさらに加速させる。するとこの速いペースについていけたのはパシャールのみだった。スペイン特有の激坂と平坦が組み合わされた山岳は、データシートの平均勾配では読み取れないほどに難所が多く、各選手急こう配に苦しめられる。そんな中でもファン・アールトは涼しい顔で淡々と上っていく。
このままゴールまで行ってはスプリント力で劣るパシャールはチャンスがないので、何とか仕掛けるべく隙を伺うが、安定したペースで走り続けるファン・アールトに対しただついていくだけが精いっぱいとなってしまう。山頂を超え下りきり、残り1.7㎞で一度だけ仕掛けたが、それもあっさりと対応されてしまう。そうなればゴール前ではなす術なし、先行してスプリントを開始したがあっという間に追い越され勝負にすらならなかった。結局逃げの5人はすべてメイン集団の呑み込まれることなくゴールを果たし、総合勢は5分31秒後方で集団ゴール、この日は大きな波乱なくステージを終えた。
ワウト・ファン・アールト(ステージ1位、ポイント賞)
「今日は逃げに乗る予定だったんだよ。でも最初の山岳は本当にきつかったね。もう少しで諦めるところだったよ。その前に最後の仕掛け、と思って動いたらうまく逃げ出せたんだよ。でもそこからも、ペースを上げなければ捉まる、という事を考え続けてハイペースを維持したんだ。ある程度のタイム差がないと、最後まで逃げきれないと思っていたからね。今日はすべてが理想通りの展開になったよ。最後も僕についていけたのはパシャールだけで、皆僕より脚を残せていなかったからね。」
ベン・オコナー(総合1位)
「もう誰も温度が”40度まで上がってない”と文句を言わないよね。(笑)いやー、この地域は美しいよ。しっかりと緑もあって、温度が30度だったからね。確かに30度でも暑いはずなんだけど、40度に比べたら天国と地獄だよ。だって体温より暑い中では、そもそもクールダウンなんてできないからね。今日は総合の日でもないので、ただひたすらにしっかりとチームで集団をコントロールする日だったよ。」
セップ・クス
「今年のブエルタはここまで本当にクレイジーだよ。何とかここからの勝負所でタイムを取り返せるところもあると思うよ。そんなチャンスを待って、自分に何ができるかを狙っていくよ。何とか最初の週をまだギリギリ射程圏内でとどめられたと思っているから、ここからが本当の意味での勝負だよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第10ステージ順位
1位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク) 3h50’47”
2位 クエンティン・パシャール(グルーパマFDJ) +03”
3位 マルク・ソレル(UAEチームエミレーツ) +2’01”
4位 ウィリアム・レセルフ(T-REX・クイックステップ)
5位 ユリ・ホルマン(アルペシン・ドゥクーニンク)
6位 トミン・ユラスティ(エウスカルテル・エウスカディ) +5’13”
7位 ヨナタン・ナルバエス(イネオス・グレナディアス) +5’31”
8位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ)
9位 ジョージ・ベネット(イスラエル・プレミアテック)
10位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 40h05’54”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’53”
3位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +4’32”
4位 エンリック・マス(モビスター) +4’35”
5位 ミケル・ランダ(T-REX・クイックステップ) +5’17”
6位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’29”
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +5’30”
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +5’24”
9位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +6’00”
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ) +6’32”
H.Moulinette