ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第8st:総合明暗くっきり、ゴール前4.8㎞からの激坂をログリッチがアシストを失いながらも単騎パワー勝負で制す!コナーに56秒詰める、UAE全員撃沈
まだまだ本格的な山岳が始まったわけではないが、総合バトルはそこら中で勃発するのが山岳ステージの怖さだ。先行していた逃げの3名に続いて最後の勝負所、残り4.8㎞からのシエラ・デ・カルソラ突入したメイン集団だったが、早々に落車が発生し大きな分断が発生してしまう。難を逃れた総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)だったが、右腕ともいえるアレクサンダー・ブラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)を失ってしまい、いきなり単騎での勝負を余儀なくされてしまう。
それに対して総合リーダーのベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)は総合力のあるフェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル)を残しており、盤石の態勢でタイムロス阻止を狙った。リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)が積極的なペースづくりをすると、サバイバルが幕を開ける。そして何度となくジワリとしたペースアップで後続を振るい落とすログリッチの走りがボディーブローのようにじわりじわりとオコナーの脚に疲労を蓄積させる。
そして満を持しての仕掛けで、ログリッチに唯一ついていけたのはエンリック・マス(モビスター)のみ、先行していた最後の一人、ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)を残り900mで捉えると、最大20%の激坂セクションへ突入していく。そのままログリッチはマストの一騎打ちを制しステージ勝利、これによりボーナスタイムも獲得してあとはライバルたちの帰りを待つだけとなった。ミケル・ランダ(T-REX/クイックステップがその後単独で14秒差でゴール、アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が4位、マティアス・スケルモース(リドル・トレック)が5位でゴール、次々と選手たちがゴールする中、オコナーは46秒遅れのステージ17位でゴール、何とか踏みとどまった。
そしてこの日最大の敗者となったのがUAEチームエミレーツだった。今大会にチームの絶対的エース、タデイ・ポガチャルの両腕のアダム・イェーツとジョアオ・アルメイダのエース2枚で乗り込んできたが、大会序盤でAイェーツが大きくタイムを失い、さらにこのステージで総合3位につけていたアルメイダが完全失速、トップ10からも全員脱落してしまい、最上位はアイザック・デル・トロの総合17位、次にパヴェル・シヴァコフが総合20位と総合優勝を狙うの限りなく不可能となった。
総合順位も大きく変動があった。総合リーダーのオコナーとログリッチのタイム差はこの2日で1分以上縮まり3分49秒差、そして総合3位にマス、4位にチベリとそれぞれ少し順位を上げ、5位には大きく順位を挙げたランダとなっている。また6位から10位も、ここしばらくのグランツールとは異なり、若手と新鋭、あまりなじみのない面々が総合トップ10圏内を占めている。
ステージは序盤からかなりのハイペースで展開する。繰り返されるアタックと吸収、最初の1時間を平均時速50㎞で展開し続けたが決定的な逃げは決まらない。しかしの故地100㎞になるとようやくこの日の逃げが形となる。テハダ、ルーカ・ヴェルガリート(アルペシン・ドゥクーニンク)、オイエル・ラズカノ(モビスター)ら8名の逃げが成立する。
この日のメイン集団ではステージ優勝が欲しいイスラエル・プレミアテックが積極的な動きを見せる。その戦略から見ても、事前にこのステージを狙う予定だったことは明確だが、その全貌が見えないままにレースは展開する。一時はデカスロンAG2Rモンディアルが主導権を握るが、ペースが緩んだと見るやまたしてのイスラエル・プレミアテックが先頭に出て、逃げとのタイム差を詰めていく。
そして先頭集団駆け引きが始まり一人、また一人と人数を減らしていく。そしてゴールまで13㎞を残し先頭ではヴェルガリート、ラズカノ、テハダの3人が飛び出していく。それを追走する集団はおよそ2分差と激坂頂上ゴールを踏まえると射程圏内に迫ってくる。
そして突入した頂上決戦、先頭の3人はアタックの応酬を繰り広げるが、どれも決定だとはならない。その間にメイン集団のペースは一気に上がり、気が付けばログリッチとマスが完全に抜け出し、逃げを夢見た3人を飲み込んでいった。ログリッチはこれで今大会2勝目、まだ背中が痛むとしながらも、爆発的な攻撃がないままに徐々に自分のペースにレースを持ち込んでいっている。多くの有力選手たちがその暑さに苦しむ中、3度ブエルタを制している男は、そんな暑さとの付き合い方もしっかりと熟知しているようだ。
プリモズ・ログリッチ(ステージ1位、総合2位)
「チャンスが目の前に広がっていたから、ただそれに素直に従ったんだよ。暑かったけど、運よく僕自身は脚も回っていたしね。毎日全力だよ。そんな状況下で自分の体がどう反応してくれるかをうかがっている状況だよ。まだ脊椎骨折した箇所は痛いしね。まあ様子見だよ。まあ僕は寒いのより厚いほうが得意なんだよ。」
ベン・オコナー(総合2位)
「今日は不調だったよ。誰にでもいい日もあれば悪い日もある、ただ今日は総合リーダージャージを守り抜けたとプラスに捉えるよ。だけどこれ以上タイムを失うわけにはいかないよね。とにかくこの暑さだよ。今日は完全に茹で上がったよ。頂上ゴールの日に調子が悪いのは思い返すと腹が立つね。あと移籍をする選手たちが揃ってこのレースに出してもらえなかったみたいだけど、馬鹿じゃない?僕は来シーズン移籍するけど、こうして出してもらってるし、恩返しができればと思っているんだ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージ順位
1位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) 3h38’34”
2位 エンリック・マス(モビスター)
3位 ミケル・ランダ(T-REX/クイックステップ) +14”
4位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +17”
5位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +21”
6位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)
7位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン) +24”
8位 エドワード・ダンバー(ジェイコ・アルーラ) +26”
9位 レナート・ファン・イートフェルト(ロット・デスティニー) +29”
10位 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル 31h23’27”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +3’49”
3位 エンリック・マス(モビスター) +4’31”
4位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +5’00”
5位 ミケル・ランダ(T-REX/クイックステップ) +5’13”
6位 レナート・ファン・イートフェルト(ロット・デスティニー) +5’15”
7位 クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ) +5’19”
8位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +5’24”
9位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’25”
10位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +5’26”
H.Moulinette