ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第7st:ファン・アールトが貫録のスプリントで2勝目!レッドブル・ボーラ・ハンスグロエは積極的に攻撃もログリッチが山頂ボーナスで6秒獲得にとどまる
昨日のベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)の衝撃はこの日にも少なからず影響を与えているように見てとれた。レッド・ブル・ボーラハンスグロエは少しでも機能のタイムロスを挽回しようと激坂の山岳などでペースアップを図るなど動きを見せ続けたが、結果的にプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)が取り返せたタイムは山頂通過時のボーナスタイムの僅か6秒のみ、それどころかもう1枚のカードとなった新人賞で総合4位のフラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)が17秒のタイムを失い新人賞ジャージを明け渡し総合8位まで順位を落とすこととなった。
そんな激しい駆け引きの中でも、クラシックライダーでもありスプリンターのワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)は何とか食らいつき、ゴールスプリント勝負まで持ちこたえて見せた。そしてゴール前、ロングスパートで先行していたパヴェル・シヴァコフ(UAEチームエミレーツ)を捉えると、そのまま一気にスプリントを開始、ライバルたちを全く寄せ付けず完勝でステージ2勝目を飾った。これで今シーズン4勝目、通団48勝目の勝利となった。ステージ2位にはマティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)が入り、3位にはポー・ミケル・デルガド(エキッポ・ケルンファルマ)が入った。これでミケルは第2ステージの4位を上回る3位、今大会の結果で来シーズンの大きなチャンスを掴む可能性が出てきた。
この日の180.2㎞、総獲得標高1900mのステージでも逃げに乗ったのはまたしてもエウスカルテル・エウスカディ、第3ステージでも逃げに乗ったシャビエル・イササが単騎でいささか無謀なチャレンジに出た。逃げが一人という事もあり、アルペシン・ドゥクーニンクやヴィズマ・リースアバイクなどのスプリンタチームはいずれ捉まえられると想定し、積極的な集団コントロールをしない。その為タイム差は9分以上にまで広がったが、その差は徐々に縮まっていき、残り38㎞で一人旅は終焉を迎えた。
すると残り25㎞でのアルト・デ・14%で一気に展開が動く。その名の通り最大で14%の激坂が選手たちを迎えるこの2級山岳でレッドブル・ボーラ・ハンスグロエが積極的にペースアップを図る。だがこの動きで、アレクサンダー・ヴラソフ以外のアシストが崩壊してしまう。結局ログリッチ自身ライバルたちと直接向き合わねばならない状況が、この段階でできてしまった。暑さが厳しいステージレースでの無理は、翌日以降にも響く可能性が大きい。だからこそ昨日の勝者で総合リーダーのオコナーが脱落する可能性に賭けたが、「総合リーダージャージをできる限り守りたい」、と意気込むオコナーの根性がそれを上回る。逆に自らが翌日に疲れを残さないために無理な仕掛けは控えるという選択肢を取ることとなり、この日取り返せたタイムは僅かに留まった。だがそんな中でもこの動きによる犠牲者は出た。サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)とキアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)がこの時点で遅れてしまい、そのまま総合でもさらに順位を落とすこととなった。
そしてここで一度は脱落したファン・アールトだったが、ここから得意の下りで復活、そのままゴール勝負まで持ち込んだ。ライバルのグローヴスは山頂からの下りで落車、追いつくことができずに勝負には参加できない。そうなればファン・アールトにとっては問題は一昨日のパヴェル・ビットナー(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)のような不確定要素のみ。だがグローヴスがいないことで自らの勝負に専念できたファン・アールトは自らの間合いで勝負、全く他の選手たちを寄せ付けずに勝利を決めた。
ワウト・ファン・アールト(ステージ1位)
「もっと早めに仕掛けても独走させてもらえるかなとは思ったんだけど、UAEチームエミレーツの雰囲気がそんなこと許してくれなさそうだったんだよね。なのでクスが素晴らしいアシストをしてくれたので助かったよ。うちのチームでは、勝つことが絶対ではないんだよ。それよりもチームとしていかに機能したか、いかにチャレンジングな戦略を遂行できたか、あとは誰が誰の為にどこまで自己犠牲ができたかだよ。昨年度の総合覇者がアシストをしてくれる、これこそがうちのチームの哲学であり、そのピースでいられることを誇りに思うよ。あの軽量のクスが捨て身でそこまでしてくれるなんて、鳥肌が立ったよ。」
セップ・クス(総合15位)
「今日はファン・アールトのアシストをしたけど、この勝利は自分のことのように嬉しいよ。でも僕のように軽量な選手には、今日のような40度の温度は堪えるよ。更に2級山岳でのあのペースはしんどかったよ。でもこのステージは大会前からワウトに獲らせる予定だったから、勝利できたことは最高の結果だよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージ順位
1位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク) 4h15’39
2位 マティアス・ヴァチェック(リドル・トレック)
3位 ポー・ミケル・デルガド(エキッポ・ケルンファルマ)
4位 ステファン・キュング(グルーパマFDJ)
5位 クインディン・ヘルマンス(アルペシン・ドゥクーニンク)
6位 クエンティン・パシャール(グルーパマFDJ)
7位 ロレンツォ・ロタ(インターマルシェ・ワンティ)
8位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)
9位 マックス・プール(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)
10位 ジョージ・ベネット(イスラエル・プレミアテック)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル 27h44’07”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +4’45”
3位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +4’59”
4位 エンリック・マス(モビスター) +5’23”
5位 クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ) +5’26”
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +5’29”
7位 レナート・ファン・イートフェルト(ロット・デスティニー) +5’32”
8位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’35”
9位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +5’38”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +5’49”
H.Moulinette