ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第6st:危険な男ダークホースのオコナーが激走独走勝利でグランツールクラブ入り!そのまま大差をつけて総合首位に躍り出て一躍ブエルタの主役に!
全てのグランツールでのステージ勝利、それはグランツールクラブと言われ、グランツールでのステージ勝利を挙げた選手が次に狙う栄光だ。しかしそれにはまずすべてのグランツールに出場することに始まり、さらに勝利を挙げなければいけないというとてつもなく高いハードルがある。一流選手の中でもほんの一握りしか成し得ないそんな記録を達成と同時に、総合リーダージャージまで奪取するというダブルの栄冠を手にしたのはベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル)だった。過去にはツール・ド・フランスで総合4位、そして今シーズンはジロ・デ・イタリアで総合4位とグランツールの表彰台まであと一歩という結果を残してきた男が、自らの記録越えをこのブエルタで射程範囲に捉えた。
レース中盤でチャンスと見るや集団から飛び出して逃げを追走し始めたオコナーは、そのまま躊躇なく先頭を追い続けると先頭に躍り出る。そしてそこからさらにギアを挙げると、この動きを危険視したレッドブル・ボーラ・ハンスグロエやUAEチームエミレーツ、モビスターといった総合系チームが牽引するメイン集団が追走のペースアップを図る。だがそんなことはお構いなし、オコナーは千載一遇のチャンスを逃すまいと、妥協ない走りでメイン集団との差をどんどんと広げていく。そして最後までペースを落とすことなくゴールライン直前までペダルを踏み続けた。ゴールでようやく上体を起こしガッツポーズを決めながら咆哮、3回目の出場で遂にブエルタ・ア・エスパーニャのステージ勝利も手に入れた。
メイン集団はこれに6分31秒遅れでゴール、これによりオコナーはスタート前1分56秒差の総合23位から一気に総合リーダに躍り出た。これで総合2位のプリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ)とは4分51秒差、総合3位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)とは4分59秒差となり、総合力のある男が大会序盤にして大きなアドバンテージを得ることとなった。
今シーズンはブエルタ・ア・ムルシアで総合優勝、UAEツアーとツアー・オブ・ザ・アルプスで総合2位、ジロ・デ・イタリアで総合4位、ティレーノ・アドリアティコで総合5位とステージレースで結果を残して好調だった。だからこそ大きなきっかけがあればさらなる高みへと昇れる可能性を秘めるダークホースとして名前が挙がっていたが、オコナーはそのチャンスを自ら切り開いて見せた。
この日のレースは序盤から時速49㎞近い速度で展開、アタックの応酬となり、さらには分断が発生しアルメイダが取り残されるなど、荒れた展開となる。しかし最初の山岳に入るとレースは落ち着き33名の大所帯の逃げが決まる。しかしこの日はこれでは終わらなかった。山岳ステージではあるが、パンチャーやクラシックライダーでもこなせそうなコースレイアウトが、ここからさらなる展開を呼ぶ。追走のグループが形成されるとここにコナーが乗ることに成功する。ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)も何とかそこに合流を果たそうと挑むが、結局徒労に終わってしまう。
この日は逃げもサバイバルとなり、残り66㎞の中間スプリントを迎えた段階で逃げは先頭へと合流を果たした合流したオコナーを含む13名にまで絞られてしまう。シーズン序盤の大怪我から復帰してきたジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ)、更には総合トップ20圏内のフラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)、クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ)、さらにはギース・リーメリゼ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)、マルコ・フリゴ(イスラエル・プレミアテック)ら地力ある選手たちが残る。
そしてこの中間スプリントでオコナーがアタックを敢行するが、これは捉えられてしまう。だが補給ゾーンを利用してオコナーは再びアタックを敢行、するとこれにリーメリゼだけが反応し二人旅が始まる。だが協調性はあまりなく、ほとんどオコナーが個人TT状態で牽引を続ける。それでもこのチャンスが最大の可能性を秘めていることを理解しているオコナーは全くその手を緩めない。3級山岳の下りを利用し、フリゴを含め3名が追走を仕掛けるが、あと一歩まで迫ったものの追いつくことはできなかった。するとオコナーはここでリーメリゼを置き去りにし一人旅へと移行していく。十二分にタイムアドバンテージを確保してバーチャルで総合リーダーに躍り出たオコナーに対し、メイン集団もようやく重い腰を挙げて追走を始めるが、足並みがそろわない。決してペースが遅いわけではないが、躊躇の無いオコナーが安定したペースで走り続けることで、逆にメイン集団とのタイム差は開いていってしまった。
そのままオコナーは先頭でゴール、2位には単独追走中に落車をしたがそこから持ち直したフリゴが4分33秒差で入り、リポウィッツが4人での3位争いを制した。これで総合は大シャッフル、オコナーが首位、ログリッチが2位、アルメイダが3位、そしてそれに続いてこの日の逃げに乗ったリポウィッツが4位、クリスチャン・ロドリゲスが6位になった。ログリッチはこの日総合リーダージャージを明け渡し、チームの負担軽減をすることを口にしていたが、結果は予想よりも複雑な混沌を生み出す結果となった。
ベン・オコナー(ステージ1位、総合1位)
「最初の逃げを逃したときはがっかりしたけど、過ぎに次の追走が発生したので、これは逃すまいとして飛び乗ったよ。今日は何となく直感的に勝てそうな気がしていたんだ。だからチャンスには積極的に飛びついたんだけど、こんなにも見事にすべてがハマることなんてそうそうないから、最高の気分だよ。グランツールクラブに名を連ねられたのは光栄だよ。これは一生に一度の瞬間だからね。ツールとジロで総合4位だったから、ここでも4位を狙うかって(笑)?出来ればもっといい順位を狙いたいね。まずはこのジャージをどこまで守り切れるか、最終日まで持っていけたら最高だよね。」
パクシー・ヴィラ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ監督)
「リポウィッツを先頭に送り込んでいたので、オコナーについていって総合での手札が増えると想定していたんだ。でもオコナーが想定外の強さを見せたので、その予定が大幅に狂ってしまったよ。他にも強い選手たちがいたので、お互いに睨みを利かせてオコナーのような独走は発生しないと高をくくっていたんだよ。今日はただオコナーが強すぎたね。最後の上りでも単独で走りながら全くタイムを失わないなんてただ脱帽だよ。」
ブエルタ・ア・エスパーニャ第6ステージ順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル) 4h28’12
2位 マルコ・フリゴ(イスラエル・プレミアテック) +4’33”
3位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’12”
4位 クレメント・ベルセット(デカスロンAG2Rモンディアル)
5位 クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ)
6位 ギース・リーメリゼ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)
7位 マウリ・ファンセヴェナント(T-REX/クイックステップ) +5’35”
8位 ウルコ・ベラーデ(エキッポ・ケルンファルマ) +6’02”
9位 アイザック・デル・トロ(UAEチームエミレーツ) +6’31”
10位 ダビ・ガウドゥ(グルーパマFDJ)
ブエルタ・ア・エスパーニャ総合順位
1位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rモンディアル 23h28’28”
2位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラハンスグロエ) +4’51”
3位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +4’59”
4位 フラン・リポウィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +5’18”
5位エンリック・マス(モビスター) +5’23”
6位 クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ) +5’26”
7位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +5’29”
8位 レナート・ファン・イートフェルト(ロット・デスティニー) +5’32”
9位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rモンディアル) +5’38”
10位 マティアス・スケルモース(リドル・トレック) +5’49”
H.Moulinette