ツール・ド・フランス第21st:一切の妥協なし!最終日個人TTも最速はポガチャル!圧倒的走りで3度目の総合優勝に花を添える今大会6勝目!パンターニ以来のジロ~ツールのダブル達成!


©ASO
ツール・ド・フランス最終日、モナコからニースまでを最速で駆け抜けたのはマイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)だった。中間計測でもすべて最速を記録、一切の妥協をしない、最後まで手を緩めない”史上最強”の男はすべてのコーナーで攻め続けライバルたちを圧倒する走りを披露、圧倒的なタイムで個人TTも制し今大会だけで6勝目、通算17勝目を挙げた。これによりツール・ド・フランス3度目の総合優勝を確定させるとともに、”海賊”マルコ・パンターニ以来のジロ~ツールのダブルを達成した。圧倒的な速度とスタミナが要求される近代サイクリングにおいては、もう可能なのではと思われたダブルツールを圧倒的な強さで達成、史上最強の男の伝説は、次々と歴史を塗り替えている。

©ASO
そしてステージ2位に入ったヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)は大会3連覇こそならなかったが、総合2位として最後まで最強ライバルとしてポガチャルに簡単な勝利を許さなかった。今シーズン序盤の大怪我から、僅か10日ほどのトレーニングで大会に挑むと、本人も驚く高いレベルでのパフォーマンスを見せ続けた。
そしてステージ3位にはレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)が入った。今大会ステージ2勝目とはならなかったが、初挑戦のツール・ド・フランスで見事に総合表彰台を確保して見せた。ステージ終了後は涙を見せるなど、普段はクールな男も感極まった。また同時に新人賞ジャージも獲得、ポガチャルとヴィンゲガードの最強ライバルの一角として、その能力の高さを遺憾なく発揮して見せた。

©ASO
山岳賞を獲得したのはリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、総合敢闘賞も併せて獲得した。大会前半では総合リーダージャージのマイヨ・ジョーヌを獲得、さらには今大会後半の山岳ステージで、躊躇なく逃げに乗り、そしてステージ優勝を最後まであきらめない姿勢を全てのステージで見せた。ポガチャルがここまで圧倒的な山岳での走りを見せなければ、間違いなくステージ3勝はしていたであろうことからも、その走りと勝負勘は卓越していると言えるだろう。ジロ・デ・イタリア制覇、そしてツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞と、エクアドル最強の男もまた最高の活躍を見せた。
ポイント賞はレース界の歴史に新たな1ページをもたらした。ヨーロッパ系選手が圧倒的に多いこのスポーツにおいて、アフリカ人系有色人種選手として史上初めて世界最高峰のグランツールで三賞ジャージの一つを獲得した。今大会ステージ3勝を挙げたその走りは、圧倒的なパワースプリント全盛期の中で異質なしなやかなスプリント、豪快さはないものの一切の無駄のない滑らかな体の動きから繰り出される速さは本物だった。

©ASO
そしてチーム総合はUAEチームエミレーツが獲得した。今年の総合順位でも総合優勝に引き続き、総合4位にジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)、総合6位にアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)とアシストをしながら総合でこれだけの結果を残せるメンバーを揃えられたことが、ポガチャルの圧倒的なパフォーマンスを支えたと言って間違いないだろう。過去2度のポガチャルの総合優勝が個人の力だったのに対し、今回は間違いなくチームとしての組織の力があったからこそと言えるだろう。
今年のツール・ド・フランスはタイムこそポガチャルの圧勝に見えるが、ヴィンゲガードとエヴァネポエルという最強のライバルあってこそと言えただろう。この3強は間違いなくグランツールにおいて今考えうる最強の3人であり、ステージレースでも最強の3人と言えるだろう。またヴィンゲガード以外の2人はクラシックレースでも結果を残しており、年齢を考えてもこの3人がこれからのレース界を盛り上げ続けてくれることは間違いないだろう。今年のツールは間違いなく歴史に残る超ハイレベルバトルだったと言えるだろう。
また総合優勝を獲得したのが、ヨーロッパ系でそのメインスポンサーが中東系、山岳賞が南米系、ポイント賞がアフリカ系と極めて国際色豊かな結果となった。各大陸の選手たちがしっかりと結果を残す実力をつけており、これからがますます楽しみだ。

©ASO
タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「2大会続けてツールで総合優勝を逃していたから、やっと奪冠できたよ。これ以上ない最高の気分だよ。ジロを勝ったことで、ツールで勝てなかったとしても評価はされただろうけど、両方を勝てたということは最高の喜びであり、新たなステージへ到達したと言えるよ。本当に成しえたことを誇りに思うよ。次はファン・デル・ポエルが着ている世界チャンピオンジャージが欲しいね。今年できるかはわからないけどね。」
ツール・ド・フランス第21ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 45’24”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’03”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +1’14”
4位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +2’08
5位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +2’18”
6位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +2’31”
7位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +2’41”
8位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン) +2’50”
9位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’53”
10位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +2’56”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 83h38’56”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +6’17”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +9’18”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +19’03”
5位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +20’06”
6位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +24’07”
7位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +25’04”
8位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +26’34”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +27’21”
10位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) +29’03”
H.Moulinette