ツール・ド・フランス第20st:容赦ない強者の走り、ポガチャルがステージ連勝で今大会5勝目!カラパズは山岳賞確定的でステージ3位、ギルメイはポイント賞確定的


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昨日のステージ終了後、総合2位のヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)が敗北宣言をし実質的な総合優勝争いの終焉となった。そのため総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)はレース後に、「明日は逃げのためのステージ」と語っていた。しかし総合3位のレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)がヴィンゲガードへの挑戦をしたことで、結果的に自らが仕掛けずとも曲面が動く。そして結果的にエヴァネポエルに対して逆襲に出たヴィンゲガードに着いていったことで、最後まで逃げ続けていた山岳賞を確定的にしたリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)も捉え、最後はヴィンゲガードとの一騎打ちとなった。こうなればもう勝利を譲る理由などない、ポガチャルは渾身の一撃であっという間にヴィンゲガードを引き離し今大会5勝目、通算ツール・ド・フランスステージ16勝目を挙げた。

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最後の本格的ステージの第20ステージでは、山岳賞ジャージがほぼ確定した。カラパズはこの日もポイントをさらに加え、これで明日完走さえすれば山岳賞が決定となった。ジロ・デ・イタリアを制し、ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞ジャージを獲得に続いて、今回はツール・ド・フランスでの山岳賞獲得、31歳のベテランがまたしても結果を残して見せた。激しい総合争いの間隙をぬっての鮮やかな山岳賞奪取は見事といえるだろう。

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そしてこのステージで最後の中間スプリントを迎えたが、ここでもポイント差は詰まらなかったことでビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)がエリトリア人として初、アフリカ系有色人種初のポイント賞ジャージを確定的とした。
この日のステージは、昨日のポガチャルの言葉があったせいか、序盤からまたしても激しい駆け引き合戦となる。一つでも上の順位を目指せる総合トップ10前後の選手たちを中心に、山岳賞のカラパズを含め、ステージを狙う面々が132.8㎞のショートステージで躍動した。序盤まずは3名の逃げが発生するが、これにポガチャルが反応して一気にペースが加速する。すると今度はエンリック・マス(モビスター)ら新たな3名が飛び出していく。そしてそこにさらにカラパズらが加わり、最終的に10名となる。
その背後のメイン集団では、この日は総合5位のミケル・ランダとヤン・ヒルトのアシスト勢を要するソウダル・クイックステッ勢がエヴァネポエルを中心に攻撃的布陣を敷く。それによりメイン集団もあっという間に人数を減らしていってしまう。

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そして残り15.7㎞の頂上ゴールまでの最後の上りに突入していく。先頭ではマスとカラパズがアタックの応酬を繰り広げ、この日のステージ優勝を狙う。その背後では上りに突入した集団から、総合6位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)が早々と脱落、この日最大の敗者となってしまう。

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ランダが強烈な牽引でさらに人数を絞ると、残り7㎞でエヴァネポエルが仕掛ける。その頃には先行するカラパズらとの差は3分弱から1分にまで縮まっており、追いつくのは時間の問題となった。しかしエヴァネポエルのアタックに対してヴィンゲガードとポガチャルは冷静に対応、この攻撃は空振りに終わる。だがここでポガチャルのアシスト、ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)がさらに強烈な牽引でペースを上げていく。そしてエヴァネポエルは再びヴィンゲガードの対してアタックを仕掛けるが、これも対応されてしまうと、今度はカウンターでヴィンゲガードの攻撃が炸裂する。これにはエヴァネポエルは全く反応できず、あっという間にその差が広がっていく。だがポガチャルは涼しい顔でヴィンゲガードを追走、ヴィンゲガードの先に行ってくれという要求も完全無視をし、ただ黙々とヴィンゲガードに着いていく。

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そして先頭ではようやくカラパズがマスを脱落させたが、追走してきたヴィンゲガードとポガチャルの前に、あっけなく追い抜かれてしまう。そのまま加速していくヴィンゲガードの後をついていったポガチャルは、ゴール前になり先頭に出ると、そのままタイミングを見て加速しゴール、ヴィンゲガードは余力なく引き離されステージ2位に終わった。しかしヴィンゲガードはこのステージで個人TT世界チャンピオンのエヴァネポエルを相手にタイム差を2分50秒まで広げることに成功、最終日個人TTを前に、ステージ優勝こそ逃したが目的を果たした。
この日の結果総合トップではまたしても変動が発生、最終日の個人TTまでトップ10入りを争うバトルは続くこととなった。
タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「全く予定通りではなかったけど、結果的にもう一つステージ勝利を増やせたんだからOKだよ。5勝は出来過ぎだよ。総合リーダージャージだけでも満足だったのに、結果的に5勝もできた。これがレースだよね。勝利を譲ることなんてないよ。今日は逃げに十分なタイムを与えたつもりだったけど、結果的に詰まってしまっただけだよ。僕らは勝つためにレースを走っているし、勝つために給料をもらっているんだよ。常にそれぐらいの緊張感をもってやっているんだよ。
ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ2位、総合2位)
「今日の最大の目的なエヴァネポエルに対してタイムを稼ぎ出すことだったんだよ。ポガチャルが勝利を譲ってくれるかも、というのは頭をよぎったよ。今日はスプリントになったら敵わないのはわかっていたからね。まあ僕が同じ立場でも譲ることはなかっただろうと思うよ。」
レムコ・エヴァネポエル(ステージ4位、総合3位)
「二人が僕よりも強くて、彼ら二人で過去4年のツールを制してきているからね。だからこの結果には納得しているよ。ヴィンゲガードに対しては賭けに出たけど失敗したね。後悔はないよ。」

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ツール・ド・フランス第20ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 4h04’22”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +07”
3位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +23”
4位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +53”
5位 エンリック・マス(モビスター) +1’07”
6位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +1’28”
7位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +1’33”
8位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +1’41”
9位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +1’43”
10位 ロメイン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL) +1’52”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 82h53’32”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +5’14”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +8’04”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +16’45”
5位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +17’25”
6位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +21’11”
7位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +21’12”
8位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +24’26”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +24’50”
10位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +25’48”
H.Moulinette