ツール・ド・フランス第17st:カラパズがグランツールクラブ入り達成!Sイェーツを振り切り鮮やかな逃げ切り勝利!総合勢はトップ3がまたもジャブの打ち合いで僅かにタイム差発生
ジロ・デ・イタリア制覇、ブエルタ・ア・エスパーニャ山岳賞ジャージ獲得、オリンピック金メダル獲得など、輝かしい成績を残してきている男は、更なる功績を積み重ねた。今大会で総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌにそでを通したが、それでは飽き足らぬとばかりに今大会何度となく逃げを仕掛け続けた。そして混沌とした展開となったこのステージでもいつも通りの積極性で逃げに乗ると、ゴール手前の1級山岳の上りで先に仕掛けたサイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ)を追走しアタック、一気にその差を詰め追いつくと、勾配がきつくなる区間で一気に引き離し独走態勢を築いた。そのまま下りに入ってもタイム差を縮めさせることなく、頂上ゴールまでの上りも盤石の走りで上り切りると、笑顔で自らの勝利を祝った。これで3大グランツールすべてでステージ勝利を達成し、グランツールクラブ入りを果たした。
何とか最後まで追いすがったSイェーツだったが、結局カラパズの引き立て役となってしまいステージ2位、来シーズンのヴィズマ・リースアバイク入りが噂される中で結果を残したかったが、惜しくも栄光には手が届かなかった。ステージ3位には総合では大きく順位を落としている総合系、エンリック・マス(モビスター)が入った。
また総合ではタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)がこの日も口火を切るアタックを敢行すると、最後はレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)が1級山岳頂上までの上りでアタックし先行、さらにポガチャルもヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)をゴールまで引き離しゴール、僅かなことではあるが、ポガチャルは最大ライバルのヴィンゲガードの体力をさらにジワリと削る走りに徹した。これで総合3位のエヴァネポエルと総合2位のヴィンゲガードの差もわずか12秒だが縮まった。
177.8㎞の第17ステージはとにかく混沌とし続けた。スタート直後からアタックはかかるものの、僅な差で先頭付近をうろうろするだけで吸収されてしまう時間が続く。そしていつも通りハイペースで展開する中、スタートから50㎞ほどでようやく4名が逃げの形を形成する。ボブ・ユンゲルス(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)、ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)、マグナス・コート(Uno-Xモビリティ)、ロメイン・グレゴワ(グルーパマFDJ)が最大で1分ほど先行する中、メイン集団からはこの4人に合流すべく何度となくアタックが発生する。しかしメイン集団はこれを容認せず、荒れた展開が続く。
ようやく展開が動き出したのは、中間スプリントを超えてからだった。中間スプリントでは昨日落車でケガをしたビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)が渾身のスプリントで逃げの4人に次ぐポイントを確保、ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)はそれに続いたが、残り少ないポイント獲得のチャンスでのギルメイ先着はグリーンジャージ確定に向けて大きな一歩となった。
そして残り60㎞でようやくこの日の逃げが4人を追走する形で成立する。カラパズ、Sイェーツにに加え、ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースバイク)、ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアスら強力なメンバーが揃った大所帯の48名が飛び出していく。ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)、ロメイン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)ら総合力のある選手も混じっているため追走大集団はまとまりがなく、結果30㎞近くを要して、ようやくこの集団からばらばらに先行する4人へと合流していく。そして、さらに目まぐるしく展開は変わっていく。
そんな中Sイェーツがアタック、それにすぐさまカラパズとスティーブン・ウイリアムス(イスラエル・プレミアテック)が飛び出していく。だがウイリアムスあっさりと脱落、代わりにマスが追走を開始する。だが時すでに遅し、元グランツール覇者のカラパズの小気味よいリズムから解き放たれる速さは、格が違った。最後まで独走を続けたカラパズは満面の笑みでゴール、ベテランの域に入っても、ツボにはまった時の一発の速さは健在だった。
そのはるか背後のメイン集団でも動きは起きる。この日のやはり仕掛けたのはポガチャル、そしてそれにヴィンゲガードとエヴァネポエルが続く。だがヴィンゲガードの体の切れが重く、その表情はいつもに比べると冴えない。仕掛けた1級山岳の頂上を超え下りに入ると、逃げに乗っていた一人、ヴィンゲガードのアシストのクリストフ・ラポルト(ヴィズマ・リースアバイク)が待っており、ヴィンゲガードとエヴァネポエルを引き連れる形でポガチャルへ合流を果たした。そして頂上ゴールへの上りに入ると、今度はエヴァネポエルがアタック、こちらも逃げに乗っていたヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ)が待機しており、合流を果たすとさらに加速していく。すぐにでも反応できたポガチャルはこれを容認、ヴィンゲガードは自らの総合2位を死守するためには反応したいところだが、動くことができない。だがタイム差は大きくは広がらないままゴール間近まで進むと、ポガチャルはヴィンゲガードを置き去りにしようとスプリントを開始する。ヴィンゲガードは結局エヴァネポエルとポガチャル、双方のアタックにさらされどちらからもタイムをわずかだが失う形となった。
リチャード・カラパズ(ステージ1位)
「この勝利は大きいよ。チームとしての目標がステージ勝利、これを今大会始まってからずっと狙ってきたからね。今日は本当に難しかった、アタックの応酬はすべて空振りに終わるし、決まったと思ったら大所帯で全く協調できないしね。そんな中での勝利は僕の記憶の中でも最も印象深い勝利になったよ。コースを事前に監督とおさらいしていたから、仕掛けるタイミングはわかっていたんだ。どのチームもベストメンバーに近いのがツール・ド・フランス、誰もがハングリーで勝利を狙ってくる。そして沿道の応援も最高潮、そんなかで勝てたことを誇りに思うよ。」
レムコ・エヴァネポエル(総合3位)
「ポガチャルに付いていくことはすぐにできなかったけど、ヴィンゲガードが限界っぽいのを感じたんだ。ポガチャルに合流してからは、チームからは、ペースが落ち着いたら仕掛けろと言われていたので仕掛けたんだ。たった10秒そこらだけど、ヴィンゲガードに近づけたのは良かったよ。でもそれ以上に総合で後続との差を開けたのが価値があるよ。」
ツール・ド・フランス第17ステージ順位
1位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) 4h06’13”
2位 サイモン・イェーツ(ジェイコ・アルーラ) +37”
3位 エンリック・マス(モビスター) +47’
4位 ローランス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス) +1’44”
5位 オスカル・オンリー(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)
6位 ギヨーム・マルタン(コフィディス) +2’36”
7位 マグナス・コルト(Uno-Xモビリティ) +2’38”
8位 ワウト・ポエルス(バーレーン・ヴィクトリアス) +2’39”
9位 ジョーダン・ジャガット(トータルエナジーズ)
10位 アレックス・アランブル(モビスター)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 70h21’27”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +3’11”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +5’09”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +12’57”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +13’24”
6位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +13’30”
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +15’41”
8位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +17’51”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +18’15”
10位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス) +18’35”
H.Moulinette