ツール・ド・フランス第16st:最後の本格的スプリントステージを制したのはフィリップセン!これで今大会3勝目!ポイント賞のギルメイはまさかの落車でノーポイント、一気に差が詰まる結果に
勝負というのは本当にわからないものだ。昨日まで盤石、安泰と思われていたビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)のポイント賞ジャージ、フィリップセンに勝利されながらも、自らもステージ上位につけてポイントを稼ぎ、着実に歴史の階段を上っていた。しかしこの第16ステージにまさかの落とし穴が待っていた。ゴール前のスプリント勝負、最後のコーナーを抜けていく段階での位置取りが悪すぎた。そしてさらに落車してしまうという不運も加わり、まさかのスプリント勝負に絡めずノーポイントに終わった。
そんなことは露知らず、スプリンターたちは栄光のステージ勝利を目指しゴールへと突進していく。そして世界チャンピオンジャージのマシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)が先頭に立った瞬間に、勝負はほぼ決してしまった。圧倒的な牽引からのリードアウト、その勢いのままにさらに馬力ある加速でライバルたちを寄せ付けなかったのはヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、これで今大会3勝目、さらには一気にギルメイとの差を詰め、昨年度に続いてのポイント賞連覇に望みをつないだ。
総合勢はこの日は動かず、個人TT前の3ステージはどれも総合勢にとっては勝負の場となることから、この日は沈黙の一日となった。
188.6㎞の第16ステージは、実質的には最後のスプリントステージとなった。そんなステージは総合勢が沈黙することが予想され、どのチームも主導権を握らずスローな展開となる。ステージ中盤に設定された中間スプリントポイントでは、ブライアン・コカード(コフィディス)がトップ通過、フィリップセンが2位、ギルメイは4位通過となった。そしてその直後にこの日唯一の動きが発生する。トマ・ガシニャード(トータルエナジーズ)が飛び出すと、あとは残り25㎞まで一人旅が続いた。そしてガシニャードが捉まると、ようやくこの日の主役のスプリンターたちを要する各チームが主導権を狙い始める。
残り10㎞を切りアスタナ・カザフスタン、デカスロンAG2Rラモンディアル、ロット・デスティニー、Uno-Xモビリティーらが隊列を成してペースがみるみる上がっていく。そして残り4㎞を切り、一番いい隊列を組めているのはUno-Xモビリティ、エースのアレクサンダー・クリストフの為に威圧感あるパワーで展開する。しかしここから続くコーナーの連続が、その思惑を打ち砕いていく。左右に展開するごろに隊列は崩れ、各チームが縦一列へと引き延ばされていく。するとこのような状況に明らかに慣れているアルペシン・ドゥクーニンクが一気に先頭に躍り出て、さらに攻めていく。
そんな中ギルメイにとっては悪夢の瞬間が訪れる。コーナーで完全にスライドして落車、コースバリアに接触してしまう。幸いなことに大きなけがはなくその後立ち上がってゴールまでチームメイトたちと走り切ったが、思わぬ形で試練を与えられることとなった。
そして最後のリードアウト、ファン・デル・ポエルにバトンが託された時点で、ライバルチームのエースたちはすでに勝負できる状況になかった。一度火のついたフィリップセンは、ライバルたちを寄せ付けず完勝、昨年度の4勝に加えこれで今シーズン3勝、改めてビッグレースでの強さを知らしめた。
ヤスパー・フィリップセン(ステージ1)
「いい休息を得られたし、この大会中にどんどんと調子が良くなっているのを実感していたよ。だから今日も勝てると感じていたんだ。でも勝利は簡単ではない、だから3勝というのは誇れる結果だと思う。ギルメイが無事であることを願うよ。今日のような形で結果が左右されるのは彼も本望ではないだろうしね。中間スプリントは激しいバトルになると思うけど、できることをやるだけだよ。」
ビニアム・ギルメイ(ポイント賞ジャージ)
「大丈夫だよ。膝から落ちてしまったので、少し腫れてはいるけど、大丈夫だよ。肘はさっき2針縫ってもらったので問題ない。EFの選手のハンドルバーにぶつかってしまってどうしようもなかったんだ。ブレーキをしたけど結局地面に転がっていたね。今は先のことはあまり考えていないよ。ポイント賞ジャージのことよりも、まずは無事にニースまでたどり着くことこそが至上命題だよ。」
ツール・ド・フランス第16ステージ順位
1位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク) 4h11’27”
2位 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス)
3位 アレクサンダー・クリストフ(Uno-Xモビリティ)
4位 サム・ベネット(デカスロンAG2Rラモンディアル)
5位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
6位 パスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック)
7位 ブライアン・コカード(コフィディス)
8位 ソレン・ワーレンショルト(Uno-Xモビリティ)
9位 ライアン・ギボンス(リドル・トレック)
10位 ダニー・ファン・ポッペル(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 66h07’51”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +3’09”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +5’19”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +10’54”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +11’21”
6位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +11’27”
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +13’38”
8位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +15’48”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +16’12”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +16’32”
H.Moulinette