ツール・ド・フランス2024第14st:山頂勝負を制したのはマイヨ・ジョーヌのポガチャル!即興戦略でツール通算13勝目!ヴィンゲガードは粘りの走りでステージ2位、エヴァネポエルは3位


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総合リーダージャージを抱えるチームは、通常その日の集団をコントロールする役割というものを担う。時にそれは更なる勝利への足掛かりとなり、時にそれはブレーキにもなりうる。しかし総合優勝を明確に狙っているUAEチームエミレーツは、この日序盤からやる気満々、見え見えの攻撃態勢を隠すことなくとがり続けた。最強チームは昨日のステージで攻撃のカードを一枚失いながらも、平坦アシスト要因の面々が山岳でも黙々とハイペースを刻み続け、そして頂上ゴールまでの上りでもきっちりとアシストが機能、総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)は余裕をもって先行攻撃を仕掛けると、そのままゴールまで逃げ切り、今大会13勝目を挙げた。

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ゴールまでの上りで先行するのは、逃げのメンバー最後の生き残りベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)。メイン集団におよそ1分強のタイム差を維持したまま淡々と上り続ける。メイン集団は14名まで人数を減らし、ヒーリー以外の逃げを次々と吸収、そのまま置き去りにしていく。そしてジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)が牽引する中残り7.2㎞でポガチャルからの指示でアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)がアタック、そのまま単独でヒーリーを追走する。ここでAイェーツはポガチャルを待つかのように常に背後を確認しながら走り続ける。
4.6㎞でタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が遂にアタック、そしてヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)とレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)、カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)がすぐさま追走するが、じわじわとその差が広がっていく。ヴィンゲガードはエヴァネポエルと合流し、二人でポガチャルを追う。

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しかしヒーリーに追いついていたAイェーツにポガチャルが合流を果たすと、一気にAイェーツが最後の加速で一気にペースを上げていく。そして残り4㎞でAイェーツが外れるとそのまま単独でペースを上げていく。ヴィンゲガードがエヴァネポエルを振り切り単独で追走を始めると、一旦はタイム差が徐々に縮まるが、 残りが3㎞を切ると、またじわじわとポガチャルが差を広げ始める。一旦は6秒差まで迫ったヴィンゲガードだったが、その後じわじわと話され、最終的には39秒差でのゴール、ステージ2位は確保し、総合でも2位にジャンプアップしたものの、ポガチャルとのタイム差はこれで1分57秒まで広がってしまった。また総合で順位を3位に下げたものの、エヴァネポエルはステージ1分10秒差のステージ3位の走りでゴール、改めて総合力を見せつけた。
結局この日は総合での順位変動はヴィンゲガードとエヴァネポエルのみ、総合トップ10はみな踏ん張り切りその順位を死守して見せた。

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152㎞のステージはUAEチームエミレーツがスタートからそのペースを握る。何度となく繰り返されるアタック、しかしハイペースで牽引し続けるUAEチームエミレーツ率いるメイン集団がそれらを飲み込んでいく。そんなか中間スプリントのスプリントポイントを稼ぎたいスプリンター、ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)、ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、さらにはミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)やヒーリーら15名ほどが逃げを形成した。しかし中間スプリントポイントを通過すると、スプリンターたち5名は逃げをやめメイン集団へと戻っていった。
そして迎えたツール・マレー峠の20㎞の上りでは、UAEチームエミレーツがニルス・ポリットを先頭にまたもペースを上げ、逃げとの差を詰めていく。そんな中この日設定されたツール・マレー峠頂上には、特別賞が設定されており、それをめぐり激しい逃げによる攻防が繰り広げられた。その結果オイエル・ラズカノ(モビスター)がトップ通過を果たす。

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その後もUAEチームエミレーツは安定したペースで淡々と走り続け、ポリットからマルク・ソレルへと先導がバトンタッチされる。そしてこの日最高峰のウルケット・ダンシザン峠を通過するころにはタイム差は1分強、逃げは5名にまで減らされていた。
そして迎えたこの日最後の上り、頂上までの勝負所に入ると、先頭はヒーリーのみとなり、UAEチームエミレーツはパヴェル・シヴァコフが牽引、削られたメイン集団は僅か14名まで絞られていく。そしてさらにアルメイダの牽引からAイェーツがアタックを敢行、この日の戦略が最終段階を迎える。そして満を持してアタックを決めたポガチャルはヴィンゲガードとエヴァネポエルという最強ライバルたちを振り切りAイェーツに合流を果たすと、人工衛星のスイングバイのようにさらに加速、追いすがるヴィンゲガードらを振り切り貴重なタイム差を稼ぎ出した。

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タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「今日のステージを狙ったのはチームとしての本能だよ。Aイェーツが先行したことで、ヴィズマは牽引せざるを得なくなる、そうしたら僕がアタックを決めてAイェーツに合流し、加速をつけてもらってゴールを目指す、これが完璧に遂行できたよ。とにかく今日はチームに感謝だよ。この勝利はチームのものだよ。正直ここまでうまくいくとは思っていなかったんだ。当初の予定では何とかライバルたちを削りながら、最後の頂上ゴールまでこの間のヴィンゲガードとの様にスプリントをしてタイムを稼げればと思っていたんだ。でもそれを上回る最高の結果となったよ。このままの勢いで大会最後まで駆け抜けたいね。」

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ヨナス・ヴィンゲガード(ステージ2位、総合2位)
「いい走りができたことには満足だよ。ただ40秒を失ったのは残念だけどね。でも今日のポガチャルの走りは素晴らしかった。勝利に値するパフォーマンスだよ。でも明日のステージのほうが僕向きだから、そこで何とかしたいね。」
レムコ・エヴァネポエル(ステージ3位、総合3位)
「総合4位に4分差をつけられたからね。これで目的意識ははっきりしたよ。まずは表彰台を目指すってね。あとはただ自分を信じて日々精進だよ。今日も3位に入れたし、ポガチャルには1分差だけど、ヴィンゲガードから30秒しか遅れなかった収穫だよ。二人とも僕よりも経験豊富だし、彼らのほうが僕よりパワーもある。だからとにかく彼らについていくことこそがまずは至上命題だよ。なのにこの日のアタックのタイミングでは位置取りが悪くて出遅れてしまったんだ。そこでついていけていれば、もう少しタイムロスが少なかったかもね。でもこれもレースだよ。」
アダム・イェーツ(総合7位)
「アのアタックは即興だよ。いつも通り牽引する準備をしていたんだけど、ポガチャルが”アタックして”というから飛び出したんだよ。よく作戦が呑み込めなかったんで、何度も後ろを振り返ったんだ。そうしたらポガチャルが一気に駆け上がってきたんで、加速したんだけど、アタック出足に来ていたからあまり役には立てなかったよ。でも結果あれが見事にはまったね。今朝は僕に対して、”全力でいったら勝てるよ”ってポガチャルが言ってたんだけど、僕はアシストだからね、彼が来るのを本能的に待ってしまったよ。でも結果として完璧な勝利が遂行できたという意味ではこれ以上はない大成功だったと言えるよね。」
ツール・ド・フランス第14ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 4h01’51”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +39”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +1’10”
4位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +1’19”
5位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +1’23”
6位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)
8位 フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル) +1’26”
9位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +1’29”
10位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 56h42’39”
2位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’57”
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +2’22”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +6’01”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +6’09”
6位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +7’17”
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +8’32”
8位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +9’09”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +9’33”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +10’35”
H.Moulinette