ツール・ド・フランス2024第13st:ポガチャルらも率先して横風分断作戦に加担し大荒れ大混戦のステージはスプリント勝負に、制したのは上り調子のフィリップセン!総合トップ10の2人リタイア

通常スプリントステージでは、総合勢主力系は、徹底した組織力に守られ、リスク回避の動きに徹するものだが、この第13ステージではそんなものはどこ吹く風、UAEチームエミレーツを含む総合トップ3を抱えるチームが平坦で時速50㎞以上の超ハイペースで積極的に横風分断などの作戦を敢行し続け、逃げ切り、もしくはスプリントといった形でのステージ優勝を狙う各チームや選手たちを大混乱に陥れた。
そんな派手な展開となったが、これはこれから迎える山岳バトルへの序章だろう。だがUAEチームエミレーツはこの日総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の最強アシストの一角ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ)がコロナウイルスに感染が発覚していたが、値が規定値以下だったために出走していたが、症状が悪化しリタイアを余儀なくされるなど、不安要素が露呈する形となった。本来なら総合4位のジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ)や総合8位のアダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ)同様にアシストしながらでも総合トップ10に入る実力がありながら、先日から不安定な走りが続いていたが、その一角を失うことで戦略変更も余儀なくされそうだ。だからこそこの平坦ステージで山岳アシストではない面々を使っての揺さぶり、削りあいだったのかもしれない。

©ASO
そんなステージは結局スプリント勝負へと持ち込まれる。この日もゴール前で落車が発生するなど、荒れた展開は相変わらず、しかしスプリントはラインを崩さずクリーンに走ったヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク)がその圧倒的な爆発的加速力を披露、ライバルたちを寄せ付けず今大会2勝目を挙げた。2位には復調してきているワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)が入り、3位にはパスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック)が入った。ポイント賞ジャージでステージ連勝を狙ったビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)はステージ4位に終わったが、しっかりとポイントを積み重ねた。
週末の山岳決戦を前に、スプリンターたちにとっては数少ない残された輝ける場、この後の山岳ステージで待ち構えるオーバータイムによるタイムカット失格との格闘を前に、何とか結果が欲しいところだ。165.3㎞のレースはスタート直後から横風によりあっさりと集団が分裂、22名が逃げる展開となった。その中には総合8位のAイェーツが入ったことで状況は複雑化する。ライバルチームからすれば、。いくらアシストとはいえエースクラスの実力がある総合力のあるAイェーツが入ったことで、各チームの戦略は大きく変更を余儀なくされる。

©ASO
すると追走するメイン集団では今度はヴィズマ・リースアバイクが横風区間を利用して更なる集団の分断を図る。どちらかと言えば平坦区間でのアシストが充実しているヴィズマ・リースアバイクにとっては、UAEの戦略に乗せられることなく、自らのチーム力でライバルたちを削りにかかる。そして思惑通り集団の分断に成功、ポガチャルや総合2位のレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)は何とか総合3位のヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)らの攻撃に対応したが、総合5位のカルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス)は後方集団に取り残されてしまい、ここからイネオス・グレナディアスは必死の追走を余儀なくされた。
残り131㎞でこのメイン集団の分断は再び合流を果たしたが、依然としてAイェーツらは前方で逃げ続けた。平均時速が50㎞近いが、それでも先頭にそろった実力者たちは、この後もステージ前半を逃げ続けた。そんな逃げからミカル・クウィアトコウスキー(イネオス・グレナディアス)ら4人がアタック、さらに戦況は混沌としていく。

©ASO
そして残り58㎞からは横風を利用してUAEチームエミレーツとヴィズマ・リースアバイクがまたしても分断作戦に出る。ハイペースな仕掛けに先行していた逃げはみな吸収されてしまう。後方ではマーク・カベンディッシュ(アスタナ・カザフスタン)から、エンリック・マス(モビスター)まで、スプリンターから総合系までもがその犠牲となる。後方に取り残された面々は、またしても猛追の為に体力を浪費させられることとなった。

©ASO
さらにこの後ゴールまでの間には、リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)、さらにはヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック)らが順番にアタックを決め逃げ切り勝利をもくろんだ。そして最後は山岳賞ジャージのヨナス・アブラハムセン(Uno-Xモビリティ)がアタックをするなど、この日は5㎞に設定された救済措置区間に入っても積極的攻撃は続いた。

©ASO
しかしこの日しっかりと人数を残していたのはインターマルシェ・ワンティだったが、経験不足かこれもまた崩壊、曲がりくねったコーナーを抜けた集団はスプリントへと向かっていく。荒れた展開は誰にでもチャンスがあるだけに、勝利への嗅覚とポジショニングが大きく戦局を影響することとなる。フィリップセンはファン・アールとのリードアウトでもあるクリストプ・ラポルトを徹底してマーク、それを利用して自らが一気にコース右側のバリア沿いを駆け上がると、そのまま一切の躊躇なく加速、ステージ勝利を自らの力でもぎ取った。さらにはポガチャルもスプリントに参加、ステージ9位に入り自らの脚を確認した。
総合ではトップ10から二人がリタイア、デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)とマッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク)の2人が代わりにトップ10に順位を上げた。
ヤスパー・フィリップセン(ステージ1位)
「今日はスタートから皆が全開で必死だったよ。さらには横風区間でさらにペースは上がるし、逃げも容認せず総合勢が直接ペースを上げていくからしんどかったよ。でも調子が良かったので、スプリントになれば勝てると思っていたよ。ただポジションが悪かったんで、ヴィズマ・リースアバイクのアシストを利用させてもらったうえで、早目に仕掛けるしかなかったよ。最初はどうなることかと思ったけど、ここへきてチームとして機能してきたんで、悪くはないツールになっているよ。」
ツール・ド・フランス第13ステージ順位
1位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニク) 3h23’09”
2位 ワウト・ファン・アールト(ヴィズマ・リースアバイク)
3位 パスカル・アッカーマン(イスラエル・プレミアテック)
4位 ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)
5位 ニキアス・アルント(バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 ヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック)
7位 クレメント・ロッソ(グルーパマFDJ)
8位 ブライアン・コカード(コフィディス)
9位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
10位 ソレン・ワーレンショルト(Uno-Xモビリティ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 52h40’58”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +1’06”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’14”
4位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +4’20”
5位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +4’40”
6位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +5’38”
7位 アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ) +6’59”
8位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック) +7’36”
9位 デレク・ジー(イスラエル・プレミアテック) +7’54”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +8’56”
H.Moulinette