ツール・ド・フランス第9st:未舗装路にアップダウン、クラシックステージを制したのは逃げたトゥルギス!ステージ3位のジーは総合9位へジャンプアップ、総合系激しく駆け引きも変動なく


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未舗装路とアップダウン、まるでクラシックレースを見ているかのようなコースは大荒れになることが予想された。総合順位に大きく影響を与えかねないステージだけに、各チーム戦略とリスク回避の両面を想定しなければならない難しいステージとなった。そんなステージを制したはアンソニー・トゥルギス(ダイレクトエナジーズ)、逃げ続けた6人のメンバーによるスプリントを力でねじ伏せ、自身ワールドツアー初優勝を挙げた。そしてトム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)に次ぐステージに入ったデレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)は総合で9位へとジャンプアップを果たした。初出場を果たした今年のジロ・デ・イタリアで4回ステージ2位に入るなど、26才での遅咲きの大躍進を遂げている男が、同じく初出場のツールでも躍動、さらには総合での適応力も見せるなど進化が止まらない。

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そして総合トップ3のタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)、レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)、ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)は激しいアタックとチェースを繰り返し、ステージ後半では一時先行する逃げ集団まで一気にジャンプアップを果たすが、それにより逃げ集団内では、メイン集団に追いつかれることを嫌い、更なるアタックが勃発する。これを見たポガチャルは先頭集団からの離脱を判断しペースを落とす。エヴァネポエルはこれに不服を示すが、これ以上駆け引きを続けても得策ではないと判断し、トップ3はメイン集団内へと戻った。その後もポガチャルは何度もアタックを繰り返すが、ヴィンゲガードは徹底して防御に徹する。エヴァネポエルはその後は毎回突き放されては追いつくという消耗戦を繰り返し続けた。
プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)は序盤の未舗装路区間での位置取りが後方だったことで、集団のスローダウンによる分断に巻き込まれてその後追走を余儀なくされた。難を逃れたが、この日は一切攻撃的な姿勢は示さず、トラブル回避に努めた。

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第9ステージはリスクと運だめしのステージ、だからこそ先行して逃げに乗る攻撃こが最大の防御ともなりうるだけに、スタート直後から激しい駆け引きとアタックの応酬が繰り広げられる。14の未舗装路区間が選手たちを迎え撃つこのステージは、昨今のレースの特徴で、序盤のペースは平均時速50㎞を超えるハイペースで展開する。そしてスタートから50㎞ほどして、ようやくトゥルギス、ピドコック、ジーらを含む12名の逃げが容認される。しかしこの日の展開箱の逃げに大きなアドバンテージを許さない。常に2分以内で推移する。
そしてヴィンゲガードがメカトラでチームメイトとバイク交換をすると、UAEチームエミレーツがすかさずペースを上げていく。それと同時にエヴァネポエルのソウダル・クイックステップも、ヴィンゲガードがチームメイトのバイクに乗っているので攻めろとの指示が出る。しかしヴィンゲガードはサイズのフィットしていないバイクを乗りこなし、難なくポガチャルらの集団前方まで復帰を果たすとともに、その後も安定した走りを見せつづけた。サイズが合っていない以上攻めの姿勢を見せるのは困難だったが、防御には十分だった。

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残り77㎞でエヴァネポエルがアタックを仕掛けると、すぐには追わなかったポガチャルが追走を仕掛けると、すかさずヴィンゲガードも反応、二人の追走でエヴァネポエルはあっという間につかまってしまう。そのまま先頭集団まで一気にペースをあげていく。そんなか総合10位のアレクサンダー・ヴラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)はほかの選手の前輪と接触し落車、コース左わきの草場尾落ちてしまう。だが幸いなことに大きなけがなく復帰し、隊列へと合流を果たした。この総合トップ3の動きはすぐに収束、再び総合系抜きでのステージ優勝争いが繰り広げられる。
この日はとにかく動きが活発、ヤスパー・ストゥーヴェン(リドル・トレック)、ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト)、ピドコック、ジー、トゥルギスらの逃げは8名にまで絞られ、マシュー・ファン・デル・ポエル(アルペシン・ドゥクーニンク)、マイケル・マシューズ(ジェイコ・アルーラ、ポイント賞ジャージのビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンテ)らが今度は追走を形成する。しかしこの逃げと追走のタイム差は45秒差から縮まることはなかった。

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そんなかメイン集団ではポガチャルがアタック、するとマッテオ・ヨルゲンセンとヴィンゲガードのヴィズマ・リースアバイクがこれをぴたりとマークし、ポガチャルの逃げを許さない。しかしエヴァネポエルとログリッチはここで置いて行かれてしまうが、その後何とか他の総合トップ10圏内の選手たちと共に、ポガチャルに何とか追いつき、最悪の状況を脱した。
そして最後のグラベルを迎え、先頭の逃げ切りが確定的となる。そんな中スプリントが得意のストゥーヴェンが飛び出し、単独でのステージ優勝を目指す。だが追走も粘りを見せると残り2㎞のでヒーリーのアタックを皮切りにペースを挙げた逃げ集団は、ストゥーヴぇンを飲み込んでいく。最後はジーのスプリントに対して背後から追いすがったトゥルギスが豪快にスプリントし勝利、その背後から迫ったピドコックだったが、届かず2位に終わった.

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総合勢は大きな波乱なく終了、翌日が休息日というのもあったが、駆け引きこそすれど、決定打とはならなかった。
アンソニー・トゥルギス(ステージ1位)
「いつも有力候補としてレース中カメラに映っていたけど、勝ったことがなかったからね。ワールドツアーの勝利も初めてだし、それが世界最候補のレース、ツール・ド・フランスというだけでも価値があるよ。そしてそれが注目の難関ステージなんだから、さらにその価値はあるよね。」
タデイ・ポガチャル(総合1位)
「今日は楽しかったよ。、未舗装路が想像以上のグラベルで、小石と砂が予想以上に大変だったよ。僕はエヴァネポエルをマークしていたから、一緒に共闘はできなかったんだよ。でもそれでも最後まで楽しめたよ。今までのステージで一番しんどかったけど、明日がようやく休息日なんでよかったよ。そして山岳が待ち遠しいよ。」
レムコ・エヴァネポエル(総合2位)
「時には度胸がなきゃレースなんてできないんだよ。今日は戦略と状況というものがあったんだろうけど、今日はヴィンゲガードが度胸を見せなかったよね。でもまあそれもレースだよ。それぞれ思惑があるだろうからね。でもポガチャル的にも僕的にも今日が総合の決定打となりかねないと理解はしていたし、そのつもりだったんだけどね。」
ツール・ド・フランス第9ステージ順位
1位 アンソニー・トゥルギス(ダイレクトエナジーズ) 4h19’43”
2位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)
3位 デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック)
4位 アレックス・アランブル(モビスター)
5位 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) +02”
6位 アレクセイ・ルチェンコ(アスタナ・カザフスタン)
7位 ハビエル・ロモ(モビスター) +12”
8位 ヤスパー・フィリップセン(アルペシン・ドゥクーニンク) +18”
9位 ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ) +1’17”
10位 マイケル・マシューズ(ソウダル・クイックステップ)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 35h42’42”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ) +33”
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク) +1’15”
4位 プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ) +1’36”
5位 ホァン・アユソ(UAEチームエミレーツ) +2’16”
6位 ジョアオ・アルメイダ(UAEチームエミレーツ) +2’17”
7位 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアス) +2’31”
8位 ミケル・ランダ(ソウダル・クイックステップ) +3’35”
9位 デレック・ジー(イスラエル・プレミアテック) +4’02”
10位 マッテオ・ヨルゲンセン(ヴィズマ・リースアバイク) +4’03”
H.Moulinette