ツール・ド・フランス第3st:今大会初のスプリントステージを制したのはギルメイ!エリトリアとインターマルシェ・ワンティにとって初のツール勝利!落車の関係で着順でカラパズが総合首位に
今大会出場チームの中で、ツール・ド・フランスでのステージ勝利がないのは2チームのみだった。Uno-Xモビリティとインターマルシェ・ワンティにとっては喉から手が出るほど欲しかったステージ勝利だが、残り1.6㎞での落車の影響で大きく分断されたスプリントの末にその勝利を手にしたのはインターマルシェ・ワンティのビニアム・ギルメイだった。落車を回避したマッズ・ペデルセン(リドル・トレック)、フェルナンド・ガヴィリア(モビスター)らトップクラススプリンターたちと真っ向勝負を演じ、圧倒的な加速力で針の穴を通すようにゴールバリア側の狭い隙間を駆け上がったギルメイが、エリトリア人初、そしてアフリカの有色人種として初のステージ勝利を挙げた。
今シーズンから大きく変更され、このステージでは残り5㎞が救済措置となったのだが、この日はほぼすべての選手が含まれた大集団がそのままゴールスプリントを目指しそのラインを通過したが、残り1.6㎞で発生した落車により各チームが分断されてしまった。昨日までの総合順位では同タイムで4人が並んでいたが、そのためこの日は着順で入れ替わる可能性があった中で、先着したリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)がエクアドル人初、自身初のツール・ド・フランス総合リーダーの証、マイヨ・ジョーヌを獲得した。これで全てのグランツールで総合リーダージャージを獲得となった。2019年にはジロ・デ・イタリア総合優勝、2021年にはオリンピックロードレースで金メダル、2022年にはブエルタ・ア・エスパーニャ山岳賞と安定して結果を積み重ねている31歳が、モビスター、イネオス・グレナディアス、そして昨年度から所属しているEFエデュケーション・イージーポストすべての所属チームでその名を刻んでおり、個人TTでの結果次第では今年の激戦必至のハイレベルな総合優勝争いに名乗りを挙げてきそうだ。
230.9㎞の長丁場の平坦ステージは、スプリンターたちにとって初めての決戦の場、逃げ切りなどはあり得ないとばかりに各チームスプリントへ向けた戦略で展開していった。平均時速40㎞前後というあまりにもスローペースの走りに、チーム無線からは「そろそろ起きろ」と檄が飛ぶほどであり、昨日までの激しい駆け引きとハイペースが嘘のような展開となった。150㎞近くを何もないままただクルージングしていたレースは残り65㎞を残してようやくファビアン・グレリエ(ダイレクトエナジーズ)が単独で抜け出していく。これがこの日唯一の逃げとなった。
しかし残り28㎞でグレリエが捉まると、その直後にこの日の敢闘賞がグレリエに決まってしまったこともあり、これ以上のアタックは生まれることがなかった。そしてそのまま徐々にペースアップしていった集団はスプリント勝負へと持ち込まれる。だが残り1.6㎞での落車により集団が分裂すると、先頭集団に残れたのは位置取りが良かった一部スプリンターたちのみとなった。そんな中でインターマルシェ・ワンティは4人を残していたが、ギルメイだけがほかのスプリンターたちの中に埋もれる形となる。
先行したのはペデルセン、加速しながらコース右側に寄せていくが、その狭い隙間にギルメイは体をねじ込んでいく。これを察したペデルセンはコース左にシフトするが、そこにはがヴィリアが加速してきていた。僅かな隙間を加速したギルメイだったが、その速度は頭1つ抜きんでており、そのまま1車体分先行してゴールラインを通過する圧勝だった。
ビニアム・ギルメイ(ステージ1位)
「ツール・ド・フランスに出ることは選手になる前からの夢だった。そして2年目の出場でこうしてスプリント勝負で勝利を挙げることができるなんて本当に信じられない。この勝利はエリトリアにとってもアフリカにとっても大きな1勝だよ。我々がヨーロッパ主体のレース界においてその中で結果と存在価値をつかめたという大きな一歩だよ。」
リチャード・カラパズ(総合1位)
「正直驚いたよ。今日このチャンスが巡ってくるとは思わなかったよ。展開の妙と、位置取りにこだわり続けた結果だよ。スプリントステージではリスキー化とは思ったけど、先着することを狙っていたんだ。まずはこのイエロージャージを楽しみながら明日の本格山岳ステージをクリアして、できる限り長く守り抜きたいね。最高峰のレースで、さらに最強の証がこの”黄色い”マイヨ・ジョーヌだからね。」
ツール・ド・フランス第3ステージ順位
1位 ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ) 5h26’48”
2位 フェルナンド・ガヴィリア(モビスター)
3位 アルノー・デ・リ(ロット・デスティニー)
4位 マッズ・ペデルセン(リドル・トレック)
5位 ディラン・グローネウェーヘン(ジェイコ・アルーラ)
6位 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス)
7位 ファビオ・ヤコブセン(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)
8位 ダビデ・バレリーニ(アスタナ・カザフスタン)
9位 サム・ベネット(デカスロンAG2Rラモンディアル)
10位 ブライアン・コカード(コフィディス)
ツール・ド・フランス総合順位
1位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) 15h21’41”
2位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)
3位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
4位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)
5位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +06”
6位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス) +21”
7位 ギヨーム・マルタン(コフィディス)
8位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
9位 ジャイ・ヒンドリー(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
10位 アレクサンダー・ヴラソフ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)
H.Moulinette