ツール・ド・フランス第2st.:クラシックのような激しいアップダウン、逃げ集団から抜け出たヴォークランが勝利!ポガチャルが早くも攻撃的走りで総合1位に躍り出る、またも総合勢に明暗


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今年のツール・ド・フランスはまだ2日だがすでに多くのドラマが生まれている。この日も昨日同様に逃げからの勝利が生まれた。ツール・ド・フランス初出場の23歳ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)が残り15㎞、最大勾配20%の激坂の周回コースの3級山岳のサン・ルーカの丘で飛び出すと、そのまま最後まで逃げ切りフランス人による連日の勝利を達成した。山岳賞ジャージを着用するヨナス・アブラハムセン(Uno-Xモビリティ)がこの日も山岳ポイントを量産、そしてそのまま同じく逃げ切りステージ2位と奮闘、この日の敢闘賞を獲得した。

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そして総合勢では連日の動きが発生する。絶好調の最強男タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が残り10㎞、ヴォークラン同様に周回コースのサン・ルーカの丘の激坂で切れ味鋭いアタック、これについていけたのは最大ライバルのヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)だけだった。まるでヴィンゲガードの復調具合を測るかのような加速と、下りでのキレキレの攻めで総合上位を狙う選手たちは一気に散り散りとなってしまう。この段階で総合リーダーのロメイン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)、そしてもう一人の優勝候補プリモズ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグロエ)も遅れていってしまう。
一度は遅れたレムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)とリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)はその後猛追を仕掛け、ゴールライン手前でなんとかポガチャルに合流を果たし、総合系4人はそのまま集団ゴール、これで総合リーダーの座は同タイムで4人となったが、昨日の順位の関係でポガチャルは早くも総合リーダージャージ、マイヨ・ジョーヌを獲得した。ジロ・デ・イタリア同様に2日目での総合リーダージャージ獲得、ポガチャルにとっては順調すぎる滑り出しの2日間となっている。これで早くも総合勢が大きくふるいにかけられ、総合上位にひしめき合う形となっている。

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198.7㎞の第2ステージもまるでクラシックレースかのようなアップダウンの激しいコース、予想通りスタート直後からアタックが発生する。そして山岳賞ジャージを守るためにポイントをかき集めたいアブラハムセンが残り190㎞でアタックを仕掛けると、これがこの日の逃げとなる。ヴォークラン、クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ)、ネルソン・オリベイラ(モビスター)、クエンティン・パシャール(グルーパマFDJ)ら11名は協調体制を築き、あっという間に後続のメイン集団との差を広げていく。最大で9分弱にまで広がったその差だが、総合リーダーチームの責任でチームDSMフィルメニッヒ・ポストNLがこの差を詰めにかかる。

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そしてレースはスペシャルな瞬間を迎える。今から30年前、1994年にイモラ・サーキットでF1レース中に命を落としたアイルトン・セナに敬意の意味を込め、イモラサーキット内を駆け抜ける。今でも多くのセナファンが訪れる聖地となっているそのコースを抜けると、ヴィズマ・リースアバイクに不運が降りかかる。ワウト・ファン・アールトとセカンドエースのマッテオ・ヨルゲンセンがローレンス・デ・プラス(イネオス・グレナディアス)と共に落車してしまう。幸いなことに大きなケガはなく擦過傷で復帰するが、チームにとっては肝が冷える瞬間となった。
そしてボローニャでの周回コースが近づくと、メイン集団はペースアップ、いい気にタイム差を詰めにかかる。これと同時に先頭集団では激坂でサバイバルが始まる。皇族のメイン集団はどんどんとその差を詰めてきたが、ヴィズマ・リースバイクが集団先頭に躍り出ると、追走のペースが鈍化、3分半のタイム差をキープしたまま展開していく。

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最終周回に入りオリベイラ、アブラハムセン、ヴォークランの3名によるバトルとなったが、ここからヴォークランが抜けだし、そのまま最後まで追いつかれることなく参戦2ステージ目でステージ優勝という大きな勲章をつかんだ。また総合系がいないチームにとっても、価値ある1勝となった。そしてアブラハムセンは一度は後続に追いつかれるも、最後もう一あがきをしてステージ2位と敢闘賞を自力で手にして見せた。

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その背後ではポガチャルのアタックにヴィンゲガードが反応、上りで一気にその差を広げると、下りに入っても曲がりくねったコースの僅かなストレートで70㎞を超える猛スピードで疾走する。ゴールが近づきコースが平坦になると、得意のTTフォームでエヴァネポエルが猛追、そしてさらにそれにカラパズも加わり何とかタイムロスを防ぐことに成功した。
UAEチームエミレーツの最強アシスト勢のホァン・アユソ、ジョアオ・アルメイダ、アダム・イェーツ、さらにはヴィンゲガードの右腕ヨルゲンセンらがその背後で集団を形成、そのままゴールした。この中には位置取りが悪くポガチャルらについていけなかったログリッチとそのアシストのアレクサンダー・ヴラソフとジェイ・ヒンドリー、さらにはイネオス・グレナディアスのエース、カルロス・ロドリゲス、ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)、フェリックス・ガル(デカスロンAG2Rラモンディアル)、エンリック・マス(モビスター)、ギヨーム・マルタン(コフィディス)ら総合勢が含まれる形となった。この日最大の敗者となったのはゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)で、このステージだけで3分以上のタイムを失う結果となった。
ケヴィン・ヴォークラン(ステージ1位)
「本当にしんどかったよ。でも本当にうれしいよ。ツールに出場すること自体が僕の夢だったんだ。それだけでも舞い上がっていたのに、勝利することができるなんて思いもしなかったよ。チームにとっても僕にとっても想定外で予想以上の結果に大満足だよ。」
タデイ・ポガチャル(総合1位)
「いいアタックを決められたね。爆発的な走りをライバルたちに見せつけられたのは良かったよね。ヴィンゲガードはいい走りをしていたよね。エヴァネポエルとカラパズも追いついてきたね。」
レムコ・エヴァネポエル(総合2位)
「ポガチャルは総合リーダージャージ獲得があまり嬉しそうではなかったね。確かにこの段階でのジャージ獲得はチームとしてもやることが増えるから避けたいところではあるよね。ポガチャルがアタックしたとき、真後ろにいたんだけど、全く動けなかったよ。その直前に、分断された後ろの集団から追いついたばかりだったからね。位置取りは大事だと改めて痛感したよ。カラパズはあまり引いてくれなかったので、僕に感謝して欲しいぐらいだね。」
ヨナス・ヴィンゲガード(総合3位)
「正直予想以上に走れたよ。想定では大会前半、まだ勢いがある段階でのここの激坂ではポガチャルに対してタイムロスをする想定を立てていたんだよ。ポガチャルはクラシックでも勝っているし、こういうコースが得意だからね。対して僕はクラシックライダーではないからね。今のところ順調に来ていることに感謝だよ。ケガからの復帰で十分な準備ができなかったことを思えば、上出来だよ。現状の感覚としては、ベストに近いところまで仕上がってきているよ。それにしてもワウトとヨルゲンセンが落車したのは焦ったよ。あの二人が僕にとっては勝負をするうえで必要不可欠な存在だからね。」

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ツール・ド・フランス第2ステージ順位
1位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ) 4h43’42”
2位 ヨナス・アブラハムセン(Uno-Xモビリティ) +36’
3位 クエンティン・パシャール(グルーパマFDJ) +49”
4位 クリスチャン・ロドリゲス(アルケアB&Bホテルズ)
5位 ハロルド・テハダ(アスタナ・カザフスタン)
6位 ネルソン・オリベイラ(モビスター) +50”
7位 アクセル・ローランス(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’12”
8位 マイク・テウニッセン(インターマルシェ・ワンティ) +1’33”
9位 ユーゴ・ユーレ(イスラエル・プレミアテック) +1’36”
10位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト) +2’21”
ツール・ド・フランス総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 9h53’30”
2位 レムコ・エヴァネポエル(ソウダル・クイックステップ)
3位 ヨナス・ヴィンゲガード(ヴィズマ・リースアバイク)
4位 リチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)
5位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +06”
6位 マクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー) +21”
7位 イーガン・ベルナル(イネオス・グレナディアス)
8位 ペッロ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 トム・ピドコック(イネオス・グレナディアス)
10位 ギウリオ・チッコーネ(リドル・トレック)
H.Moulinette