ジロ・デ・イタリア第11ステージ:超高速ステージのカオスなスプリントを制したのはミラン!総合5位のアイデブルックスは体調不良で出走せず、昨年覇者ヴィズマは主力4人リタイアの壊滅状態
昨年度圧倒的な強さを誇ったユンボ・ヴィズマ(現ヴィズマ・リースアバイク)は全てのグランツールを制した歴史的2023年から僅か半年、今シーズンは苦難の連続だが、それはここジロ・デイタリアへきても変わらなかった。多くの選手が落車によるけがで離脱し今大会には若手の有望株キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)を筆頭に、クラシックスペシャリストのクリストフ・ラポルト(ヴィズマ・リースバイク)などがスタートラインにつき、ステージ勝利と総合トップ10を狙うという布陣だった。ところがそのクリストフは早々とリタイア、更にはアシストのロベルト・ヘーシンク、ステージ勝利を挙げたエーススプリンターのオラフ・クーイまでもがリタイアし、そして総合5位と大奮闘をしていたアイデブルックスも昨日のステージ途中から体調が悪化、何とかゴールはしたもののその後発熱、このステージスタート前にリタイアとなった。満身創痍のヴィズマ・リースアバイクは完全崩壊状態となり、チーム首脳たちも「ステージ勝利も総合順位も狙えなくなった。」とがっくりうなだれた。
そんなステージはスプリントステージ、朝拝ペースで進んだステージは平均時速が47㎞越えの超ハイペースとなり、逃げ切りなどは夢のまた夢、激しポジション争いが繰り広げられるスプリントステージとなった。最速予想ゴールタイムを大きく上回るタイムで展開したレースは、各チームのスプリントトレインが次々と形成されたが、結局最後は入り乱れてのカオスで混沌とした展開となる。しかしポイント賞ジャージのヨナタン・ミラン(リドル・トレック)が持続力と馬力を両立した走りを披露し、ゴールまで先行したティム・メリエール(ソウダル・クイックステップ)をかわしてステージ2勝目、今シーズン5勝目を挙げた。得意げな表情でガッツポーズした後は、チームメイトたちと抱擁、際どくもがっちりと掴み取った勝利を満喫した。
207㎞という長丁場のレースだが、この日はスプリンターステージ、各チームステージ勝利を逃すまいと虎視眈々と狙っている。そのためかこの日の逃げは僅か3名、チームとしての戦略を失ったヴィズマ・リースアバイクがそのうち2名という状況となる。この日はリドル・トレック、ソウダル・クイックステップ・ジェイコ・アルーラ、アルペシン・ドゥクーニンクらスプリンターチームが共通でレースをコントロール、逃げは完全に泳がされているだけの状況となる。常に射程圏内で泳がされていたが、残り35㎞であっさりと吸収されると、レースは一気にピリピリと張りつめた空気となる。
残り20㎞でアンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト)がジャブのようなアタックを敢行するが、結果的にこれがさらにスプリンターチーム達のレースコントロールをよりシビアなものとした。これによりゴールまでひたすらハイペースで展開することとなる。
そしてゴール手前3㎞で迎える急激なコース幅の減少を伴うコーナーでも大きなトラブルなく抜けると、各チームが順番に隊列を組みながら入れ替わっていく。そして残り1.0㎞でソウダル・クイックステップが主導権を握ると、メリエールのための完全なお膳立てが整う。だがこの日ベストポジションに位置取りをしたのはポイント賞ジャージのミラン、メリエールのスプリントを右手に見ながら爆走、ゴール手前で捉えて抜き去る完全な力勝ちだった。メリエールは悔しがりながらの2位かと思われたが、スプリントでの斜行による進路妨害で降格処分となり、カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)が繰り上げで2位、ジョバンニ・ロナルディ(チームポルティ・コメタ)が3位となった。
ヨナタン・ミラン(ステージ1位)
「いつもメリエールはトリッキーなスプリントをするからね。今回もコースもトリッキーだったけど、彼も動きも同様だった。でもそんな中でちょうどうまいこと彼の背後をとることができたんだよ。最後に勝てなければ意味がないし、勝てたからこそ満足できるんだ。自分のスプリントだけではなく、チームとして機能したという証だからね。」
ジロ・デ・イタリア第11ステージ順位
1位 ヨナタン・ミラン(リドル・トレック) 4h23’18”
2位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
3位 ジョバンニ・ロナルディ(チームポルティ・コメタ)
4位 ローラン・ピシー(グルーパマFDJ)
5位 セバスチャン・モラーノ(UAEチームエミレーツ)
6位 ダニー・ファン・ポッペル(ボーラ・ハンスグロエ)
7位 フェルナンド・ガヴィリア(モビスター)
8位 フィル・バウハウス(バーレーン・ヴィクトリアス)
9位 スタニスロウ・アニロコウスキー(コフィディス)
10位 エンリコ・ザノンチェロ(VFバルディアー二CSFファイザネ)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 36h46’08”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +2’40”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’58”
4位 ベン・オコナー(AG2Rラモンディアル) +3’39”
5位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’27”
6位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +4’57”
7位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +5’19”
8位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ) +5’23”
9位 アイナー・ルビオ(モビスター) +5’28”
10位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +5’52”
H.Moulinette