ジロ・デ・イタリア第10ステージ:昨年の兄に続け!弟ヴァレンティン・パレ・パントレが頂上ゴールで鮮やかな逃げ切り勝利でプロ初勝利!UAEは今大会初めて山岳で逃げを容認
誰にとってもプロ初勝利というのは嬉しいものだ。ましてやそれが世界最高峰のグランツールで、さらには山岳ステージの頂上ゴールでとなれば、それは記憶にも記録にも残る大勝利と言えるだろう。更には昨年度の同大会で、兄も勝利を挙げており、兄弟そろい踏みでのグランツールステージ制覇ともなった。176㎝54kgの軽量クライマーのヴァレンティン・パレ・パントレ(デカスロンAG2Rラモンディアル)はこの日の逃げに乗り、そのままゴールまで逃げ続けての鮮やかな逃げ切り勝利、誰もが予想すらしていなかった見事な大金星を挙げて見せた。
このステージではUAEチームエミレーツが逃げ切りを容認したことで、逃げに乗ったロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)とフィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ)が総合トップ10入りし、41歳の大ベテラン、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(VFグループ・バルディアー二CSFファイザネ)も総合15位まで順位を上げた。
僅か142㎞のショートステージは、当然のごとく高速で展開することとなる。スタート直後から激しいアタックの応酬が繰り広げられるが、なかなか決定打となる逃げは決まらない。中盤に入り山岳に突入するとようやく27名の大所帯の逃げが容認されることとなった。終始レースコントロールを続けるUAEチームエミレーツは、その顔ぶれを確認し、この日の逃げを容認することとなる。
ここに28歳の兄オーレリアン・パン・パントレと23歳の弟のヴァレンティン(デカスロンAG2Rラモンディアル)がともに入っており、バルデやジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)、ヤン・トラトニック(ヴィズマ・リースアバイク)、さらには落車で総合から脱落したダミアーノ・カルーソ(バーレーン・ヴィクトリアスなどの強豪どころも名を連ねた。
しかしこれだけ大所帯となると一枚岩にはなれぬもの、UAEが容認はしたが、その差はあまり大きくは広がっていかない。だが総合で10分差以内にいるバルデ、ザナ、ポッツォヴィーヴォの3名だけは総合でのジャンプアップという大きな目的意識をもって攻めの走りを見せる。すると残り38㎞を残し逃げ集団からトラトニックが飛び出していく。独走勝利を狙ってのロングアタックは、そのまま追走ないままに差が広がっていく。
その背後ではメイン集団が、タイム差が5分に広がったことでイネオス・グレナディアスが逃げに送り込んでいたメンバー世集団まで呼び戻し、ペースアップを図る。総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)としてはタイム差は容認できるものではあるが、総合3位のゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)からすれば、バーチャルで総合表彰台の座を奪われる状況は、危険水域と判断、出来る限りのタイム差を詰めるべく、タイム差を縮める走りを開始する。
先頭ではV.パレ・パントレとバルデがトラトニックを追走、残り5㎞でその差は40秒にまで縮まってくる。さらに残り3㎞ではV.パレ・パントレが加速しバルデを置き去りにする。そのままトラトニックに合流を果たすと、一呼吸置いてアタックを決めた。バルデもトラトニックに追いついてくるが、V.パレ・パントレの背中はどんどんと遠ざかっていった。そのまま先頭でガッツポーズを決めたV.パレ・パントレ、ステージ2位にはバルデが入り、粘ったトラトニックが3位に入った。また兄のA.パレ・パントレもステージ5位に入った。
総合争いはゴール前でのアタック合戦となり、総合トップ4に総合8位のアイナー・ルビオ(モビスター)が後続にわずかだがタイム差をつける形となった。
ヴァレンティン・パレ・パントレ(ステージ1位)
「ただただ自分でも驚いているよ。いい結果を欲してはいたけど、勝てるチャンスがあったので狙うべと思ったんだ。これで僕の戦歴にプロ初勝利が刻めたよ!バルデは僕が子供の頃憧れていた選手、そんな選手と一緒に競い合えるなんて夢のようだったよ。」
タデイ・ポガチャル(総合1位)
「戦略を変えたんだよ。無理をすることがない状況なので、チームメイトの負担を減らすための戦略にきだ切り替えたんだ。他のチームも総合でのジャンプアップを狙って動いてくるわけだし、時にそれに任せてうちは休むというのも重要なんだよ。長丁場の大会だから、そうしたオンとオフは必要だよね。」
ジロ・デ・イタリア第10ステージ順位
1位 ヴァレンティン・パレ・パントレ(デカスロンAG2Rラモンディアル) 3h43’50”
2位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +29”
3位 ヤン・トラトニック(ヴィズマ・リースアバイク) +1’01”
4位 アンドレア・バジョーリ(リドル・トレック) +1’18”
5位 オーレリアン・パン・パントレ(デカスロンAG2Rラモンディアル) +1’25”
6位 サイモン・ゲシュケ(コフィディス)
7位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(VFバルディアー二CSFファイザネ)
9位 ニコラ・コンチ(アルペシン・ドゥクーニンク) +1’41”
10位 エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’56”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 36h46’08”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +2’40”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’58”
4位 ベン・オコナー(AG2Rラモンディアル) +3’39”
5位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク) +4’15”
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’27”
7位 ロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL) +4’57”
8位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +5’19”
9位 フィリッポ・ザナ(ジェイコ・アルーラ) +5’23”
10位 アイナー・ルビオ(モビスター) +5’28”
H.Moulinette