ジロ・デ・イタリア第9ステージ:休息日前のスプリントステージは、逃げたナルバエスがゴール手前40mが捉まり、パワー勝負でコーイがミランを撃破、ポガチャルはゴール前まさかのアシスト
勝負というのは最後の瞬間までわからないものだ。ゴールラインは近くて遠い、一瞬のスキをついてスプリントを狙う集団から飛び出したヨナタン・ナルバエス)イネオス・グレナディアス)は、あわやオープニングステージに続く大金星という快挙を成し遂げる寸前だった。しかし現実はそんなに甘くない、猛追してきた猛者どものスプリントは、残りわずか40mでナルバエスを吸収、そのまま力の真っ向勝負となった。その結果勝利をつかみ取ったのはオラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク)、ポイント賞ジャージのマリア・チクラミーノを着用するヨナタン・ミラン(リドル・トレック)を僅差で撃破しての見事な勝利を挙げた。
今大会2番目に長い一日は、イタリア拠点のワイルドカードチーム、チームポルティ・コメタの二人の逃げから始まった。この日はスプリントステージにしたい思惑もあり、各チーム逃げの仕掛けに便乗するチームはなく、この二人はあっさりと容認される。メイン集団をコントロールしたのはアルペシン・ドゥクーニンク、この日は積極的なけん引を続ける。
展開が動いたのは残り40㎞、スプリンターチームがアップダウンの多いセクションに突入すると、今度は総合計のチームがリスク回避の動きでペースを上げ、スプリンターたちがそれに翻弄される。しかし残り27㎞でこのペースにも不満を感じたジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)がこの日も元気なところを見せる。わずかなタイム差を維持し続けながら少数で先行し続けるが、さらにエクアドルチャンピオンのナルバエスが追走アタックを仕掛けると、そのまま先頭に躍り出る。
独走力のあるナルバエスは10秒ほどのタイム差を維持したままひたすらに逃げ切りを図る。目の前にいるナルバエスを捉えることと、それにアシストの脚を使うことを天秤にかけ、各スプリンターチームは積極的な動きを見せない。それにより微妙な差は埋まることなく、そのまま残り1㎞を切りゴールスプリントへと向かいながらもナルバエスがまだ先行する状況が続く。
しかし風向きが変わったのは、総合リーダーのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が唐突に先頭に躍り出て、アシストを開始したことだ。総合リーダージャージがスプリンターのアシストとして前に出たことで、一気に活性化したスプリンターチームは、そのままぐんとペースを上げ、スプリント勝負となる。この時点でナルバエスの脚は限界を迎えており、どこまで逃げきれるかは紙一重となっていた。そして一気に上がったペースの波は、ナルバエスを飲み込み力の勝負となる。ヴィズマ・リースバイクにとっては、昨年度はすべてのグランツールで総合優勝という離れ業をやっていただけに、是が非でもほしいステージ勝利が、第9ステージでようやく手が届く形となった。コーイはこれで今シーズン5勝目、自身初のグランツール勝利となり育成から順調な成長を続ける22歳は、一流スプリンターへと成長してきている。
オラフ・コーイ(ステージ1位)
「この勝利のために走っているんだよ。ここまでスプリントステージで全くうまく勝負できていなかったからね。でも今日はさらにきつい展開になったね。今回リードアウトをしてくれるはずのラポルトがすでにリタイアしてしまって、流動的に動かざるを得ない状況だったんだよ。チームのおぜん立ては良かったんだけど、それでも勝てるという確信は持てなかったよ。でもこの勝利が僕にとっては待ち望んでいたものだった。夢にまで見た勝利だし、このグランツールでの勝利は僕にとっては今後に向けた大きな一歩だよ。」
ジロ・デ・イタリア第9ステージ順位
1位 オラフ・コーイ(ヴィズマ・リースアバイク) 4h44’22”
2位 ヨナタン・ミラン(リドル・トレック)
3位 セバスチャン・モラーノ(UAEチームエミレーツ)
4位 アルベルト・ダイネーゼ(チュードル・プロサイクリング)
5位 ダニー・ファン・ポッペル(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 マディス・ミケルス(イスラエル・プレミアテック)
7位 カデン・グローヴス(アルペシン・ドゥクーニンク)
8位 アンドレア・ヴェンダラメ(デカスロンAG2Rラモンディアル)
9位 ダビデ・バレリーニ(アスタナ・カザフスタン)
10位 マックス・カンター(アスタナ・カザフスタン)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 32h59’04”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +2’40”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’58”
4位 ベン・オコナー(AG2Rラモンディアル) +3’39”
5位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク) +4’02”
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’23”
7位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +5’15”
8位 アイナー・ルビオ(モビスター) +5’28”
9位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +5’30”
10位 ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ) +5’53”
H.Moulinette