ジロ・デ・イタリア第8ステージ:頂上ゴールバトルを制したのはポガチャル!アシスト勢全開で余裕の走りからの山頂スプリント勝負を制し総合リーダーの座は盤石!アイデブルックスも躍動
あまりにも強い、その言葉しか思いつかないほどタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)の走りは凄かった。チームのアシストも完璧、ライバルたちのエースを蹴落としてなおアシストを残す最強クライマーズチームの圧倒的なパワープレイを見せつけた。
ゴールまでの14.6kmの上り、ポガチャルにしてみればいつでも仕掛けられただろう。しかしアシストにも余裕があり、無理をする必要がないポガチャルはひたすら淡々とアシストについていく。中盤以降レースコントロールを続けながらも、ミケル・ビョルグとラファル・マイカという2枚のアシストをこの段階で残しており、それに対してライバルチームはアシストをどんどんと削られていくという展開となる。そして総合8位のアントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス)のアタックを号砲に、ラファル・マイカがいったんアシストを終えてのゴールへ向けた駆け引きが始まる。各選手が順番にアタックを繰り返すが、それを余裕のペダリングですぐにポガチャルが無効化してしまう。
蛇に睨まれたカエルのごとく、誰もアタックができなくなった状態で、何と一度は隊列を離れたマイカが再び先頭に躍り出ると、ポガチャルのために最後のリードアウトを試みる。各チームのエースが自らのは走りで消耗する中、ポガチャルは最後の瞬間まで脚を温存、そして総合2位のダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ)がアタックを仕掛けると同時に自らもアタックを決める。上りでの脚力と加速力、そして温存された体力差は圧倒的だった。ポガチャルは何度となく後ろを振り返る余裕を見せながらの山岳スプリント、最後は両手を広げてのガッツポーズでs今大会3勝目を決めた。さらにボーナスタイムも加わり、さらにライバルたちを突き放して見せた。2位にはマルチネスが入り、3位には総合順位を上げてきているベン・オコナー(デカスロンAG2Rラモンディアル)が入った。
白熱している新人賞争いでもキアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)とチベリがお互い総合トップ10圏内で激しいバトルを繰り広げている。両者とも今後グランツールライダーとしての期待がかかる。
僅か152㎞のショートステージだからこそ、ハイペースで展開することができる、そう言わんとするように、レースは昨今の流れ通り激しい動きが序盤から繰り広げられる。この日一日で総獲得標高3500mという山岳ステージは、総合16位のロメイン・バルデ(チームDSMフィルメニッヒ)を筆頭に、ジュリアン・アラフィリップ(ソウダル・クイックステップ)、マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)、サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス)らそうそうたる14名が顔を揃えることとなる。
だがこの日は逃げの面々がそれぞれ実力者であるが故にまとまらない。すると今度はUAE チームエミレーツが隊列を整え、完全に集団を制御し始める。そしてペースを上げていくメイン集団は 新人賞ジャージの総合5位ルーカス・プラップ(ジェイコ・アルーラ)らを振り落とし、気が付けば20名ほどの集団位まで絞られてしまう。同時に逃げの先頭集団は崩壊していき、一人また一人と飲み込まれていく。最後の一人ヴァレンティン・パレ・パントレ(デカスロンAG2Rラモンディアル)が粘りを見せたが、それもあっという間にステージ優勝を目指してメンバーに捉えられると、更にUAEチームエミレーツが最後までまとまりのあるアシストを見せつけ、ポガチャルの勝利をおぜん立てした。
ポガチャルはこれで26歳にして早くも通算73勝目、今シーズンだけでもあとどれだけの勝利を積み重ねていくのか、海外のコメンタリーもすでにメルクスと肩を並べる伝説的存在になっていると讃えた。
タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「今日は本当は別のチームメイトで勝負していく予定だったんだけど、状況判断で彼らがアシストとして戻ってきて機能したので、そのまま最後まで行けると思ったよ。1人1人が素晴らしい走りをしてくれたので、今日のステージは勝てると途中から確信していたよ。」
ダニエル・マルチネス(ステージ2位、総合2位)
「ポガチャルにバトルをさせたかったんだよ。そりゃ彼の方が強いのは当然わかってはいるんだよ。でも僕の得意な間合いだったからいけると思ったんだよ。だけど実際スプリントをしてみたら、僕の脚はもう限界だったよ。」
キアン・アイデブルックス(ステージ7位、総合5位)
「勝てる勝利はすべて獲るというポガチャルのスタンスは尊敬できるよ。妥協や情けなど掛けない、それが勝負の世界だし、自分が同じ立場でもそうするよ。」
ジロ・デ・イタリア第8ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 4h02’16”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ)
3位 ベン・オコナー(AG2Rラモンディアル)
4位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +02”
5位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
6位 アイナー・ルビオ(モビスター)
7位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)
8位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +11”
9位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +13”
10位 アレックス・バウディン(デカスロンAG2Rラモンディアル) +21”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 28h14’42”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +2’40”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +2’58”
4位 ベン・オコナー(AG2Rラモンディアル) +3’39”
5位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク) +4’02”
6位 アントニオ・チベリ(バーレーン・ヴィクトリアス) +4’23”
7位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +5’15”
8位 アイナー・ルビオ(モビスター) +5’28”
9位 サイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアス) +5’30”
10位 ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ) +5’53”
H.Moulinette