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©Giro d’Italia

競技が違えど、その勝利への渇望は結果となって表れる。トラック競技のオムニウム、ポイントレース、マディソンの3競技で5度も世界チャンピオン、そして東京5輪でもオムニウムで銅メダルに輝いているに輝いているベンジャミン・トマ（コフィディス）が大きな仕事をやってのけた。今大会初の逃げ切り勝利を決めるとともに、逃げメンバーによるゴール勝負を制し、チームにグランツール勝利をもたらした。この勝利がロードとしては自ら初のワールドツアークラスでの勝利となった。

これは裏を返せば、ゴールスプリントを目指していたチーム達が、追走のペースをコントロールしきれなかったという事だ。昨日勝利したヨナタン・ミラン擁するリドル・トレック、その前のステージで勝利したティム・メリエール擁するソウダル・クイックステップらが揃う中でも、追走のタイミングとメイン集団内でのパワーバランスという落とし穴にはまってしまった。僅かに計算違いが発生し、みすみすわずか11秒差で逃げ集団に追いつくことができず、スプリント勝負は5位争いを決するものとなってしまった。

©Giro d’Italia

この日はレース序盤に発生した逃げが、ステージ中盤で捉まり、そして新たにトマ、ミカエル・ヴァルグレン（EFエデュケーション・イージーポスト）、エンツォ・パレー二（グルーパマFDJ）、そしてアンドレア・ピエトロボン（チームポルティ・コメタ）の4人が飛び出していく。快調に逃げ続ける4人だったが、残り5㎞で40秒ほどの差に縮まり、捉えられるのは時間の問題だと考えられた。しかしここから逃げの4人が驚異的な走りを見せる。追走のメイン集団の猛追とほぼ同じペースで走り続けた。それにより残り1㎞を迎えてもまだ26秒という差が残り、逃げ切りが確定的となった。

先行したのはピエトロボン、強烈なロングスパートを仕掛けてあっという間に残り3人との差を開く。しかしヴァルグレンとトーマスはあきらめなかった。そして最後はトラック選手らしい馬力ある走りでゴール勝負を制して見せた。ヴァルグレンは2位、ピエトロボンは3位に終わった。2022年に落車で骨盤骨折と膝の靭帯断裂、半月板損傷の大怪我を負い、育成チームでの1年間のリハビリを経て今シーズンからワルドツアーチームに復帰したばかりだったヴァルグレンにとっては悔しいながらも結果を残せたことへの安堵が見て取れた。

©Giro d’Italia

ベンジャミン・トマ（ステージ1位）
「長距離のチームパシュート（トラック競技）をやっている気分だったよ。逃げは天晴だったよ。限界まで出し切った結果の勝利だよ。まだ信じられないね。残り10㎞で追走が1分弱で迫ってきているのはわかっていたから、追い風に乗って僕らが平均時速60㎞で走り続ければ、そう簡単に追いつかれないことはわかっていたんだ。でも一瞬でも躊躇をすれば捕まってしまう際どい状況だったよ。」

ミカエル・ヴァルグレン（ステージ2位）
「数年前は契約をしてもらえることさえイメージにはなかったよ。でもチームがリハビリを支えてくれて、こうしてまたトップカテゴリーの舞台に上がることができた。そのことへの恩返しが少なからずできたと思う。そしてサイクリストでいられることへの感謝を改めて感じるよ。」

©Giro d’Italia

ジロ・デ・イタリア第5ステージ順位
1位　ベンジャミン・トマ（コフィディス）　　　　3h59’59”
2位　ミカエル・ヴァルグレン（EFエデュケーション・イージーポスト）
3位　アンドレア・ピエトロボン（チームポルティ・コメタ）
4位　エンツォ・パレー二（グルーパマFDJ）　　　+03”
5位　ヨナタン・ミラン（リドル・トレック）　　　+11”
6位　カレブ・ユワン（ジェイコ・アルーラ）
7位　フィル・バウハウス（バーレーン・ヴィクトリアス）
8位　ティム・メリエール（ソウダル・クイックステップ）
9位　マオラフ・クーイ（ヴィズマ・リースアバイク）
10位　マディス・ミケルス（インターマルシェ・ワンティ）

ジロ・デ・イタリア総合順位
1位　タデイ・ポガチャル（UAEチームエミレーツ）　　　　19h19’15”
2位　ゲラント・トーマス（イネオス・グレナディアス）　　　＋46”
3位　ダニエル・マルチネス（ボーラ・ハンスグロエ）　　　＋47”
4位　キアン・アイデブルックス（ヴィズマ・リースアバイク）　　　＋56”
5位　アイナー・ルビオ（モビスター）
6位　ロレンツォ・フォーチュナト（アスタナ・カザフスタン）　　　＋1’07”
7位　ホアン・ペドロ・ロペス（リドル・トレック）　　　＋1’11”
8位　ヤン・ヒルト（ソウダル・クイックステップ）　　　＋1’13”
9位　アレクセイ・ルチェンコ（アスタナ・カザフスタン）　　　＋1’26”
10位　エステバン・チャベス（EFエデュケーション・イージーポスト）

H.Moulinette