ジロ・デ・イタリア第3ステージ:今大会初のスプリントステージを制したのはメリエール!ゴール前までポガチャルとトーマスがまさかの逃げを見せるも、スプリンターチームが意地の猛追!
まさか・・・ゴール直前までそんな雰囲気さえ漂うドラマをマリア・ローザのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)が演出した。ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)と共にスプリンター集団が仕切るメインペロトンの中から上りで飛び出すと、猛追するスプリンターたちを最後までしのぐのではないかという速度で逃げ続けた。しかしスプリンターたちは、勝利のチャンスをみすみす奪われるわけにはいかないとばかりに猛加速を見せた。そして残り300mでポガチャルとトーマスを飲み込んだスプリンターの波は横一線の力勝負となり、コース右側を駆け上がったティム・メリエール(ソウダル・クイックステップ)がコース反対側を駆け上がったヨナタン・ミラン(リドル・トレック)を抑えて勝利をもぎ取った。
この第3ステージもショートステージ、しかも平坦ということもあり逃げが最後まで容認されることはなかった。それよりも各スプリントチームが常に目を光らせ、無駄な労力を道半ばで消耗することを拒否、ゴールスプリントへ向け、各チームわかりやすく隊列を組んでの展開となった。揺さぶりは何度となく発生するが、どのチームも冷静に対処し、結局昨今のレースでは珍しく珍しく最初から最後まで集団での展開となる。
そして残り3㎞でミケル・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト)が上りで飛び出した直後だった。ままさかのピンクジャージが飛び出していく。これにより一気にスプリンターチームの思惑と戦略は砕け散る。先行するのはほかならぬポガチャル、一歩間違えば逃げ切りさえ許してしまいかねない状況に、さらにTTも得意とするトーマスが加わったことで、追走を誰が担うかの躊躇さえ垣間見える。スプリンターチームとしてはこんなところの追走で人員を割きたくないという思いがある中、負わねばスプリント勝負さえ逃してしまうというジレンマの中で、リドル・トレックがまず動き何とか辛うじて追走が体を成したことで、ギリギリ射程圏内にポガチャルとトーマスを捉えている。
しかし一旦崩壊した各チームのスプリントトレインはそのままとなり、ポガチャルらを残り300mで飲み込んだ後は、スプリンターたち同士の真っ向勝負となった。そしてドンピシャのタイミングでコース右へと展開していくメリエールに対し、左のオープンスペースをミランが豪快に突き進む。さらにはビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)も伸び脚を見せ、今大会最初のスプリント勝負はエーススプリンター同士の見ごたえ十分な白熱したものとなった。メリエールはこれでジロ2勝目、今大会のチームとしての目的であったステージ優勝を早くも達成して見せた。ソウダル・クイックステップはこれでジロ通算30勝目となった。
ティム・メリエール(ステージ1位)
「チームメイトたちが何とか逃げを捉えてくれたおかげで勝負できたよ。でもスリップストリームを一瞬失ったり、とにかく人生で一番しんどい勝利だった。」
タデイ・ポガチャル(総合1位)
「正直アタックする予定はなかったんだよ。僕が先に仕掛けたわけではなかったでしょ。ただアタックが発生して、それに便乗したんだよ。でもせっかくだからそのままゴールまで行ってしまえ、と思ったんだ。トーマスもホノレも強かったしね。でも最後は脚が残っていなかったね。」
ゲラント・トーマス(総合2位)
「今日の動きは全く予定になかったよ。ただトラブルを避け、チームのスプリント勝利に貢献するだけだったんだ。でも気が付いたらナルバエスもガンナも隊列から外れてしまっていたんだ。そうしたら前でポガチャルが動いたんで、自分もそれに乗っかったんだ。でもそこからポガチャルが本気で逃げるんで、面食らったよ。ポガチャルは最後まで行きたそうだったけど、僕は”疲れている”と彼に伝えたんだよ。まあただポガチャルについていくのに必死だっただけなんだけどね。」
ジロ・デ・イタリア第3ステージ順位
1位 ティム・メリエール(ソウダル・クイックステップ) 3h54’35”
2位 ヨナタン・ミラン(リドル・トレック)
3位 ビニアム・ギルメイ(インターマルシェ・ワンティ)
4位 イェンス・ビールマンス(アルケアB&Bホテルズ)
5位 トビアス・ランド・アンデルセン(チームDSMフィルメニッヒ・ポストNL)
6位 オラフ・クーイ(ヴィズマ・リースアバイク)
7位 イーサン・ヴァーノン(イスラエル・プレミアテック)
8位 スタニスロウ・アニオロコウスキー(コフィディス)
9位 フェルナンド・ガヴィリア(モビスター)
10位 アルベルト・ダイニース(チュードル・プロサイクリング)
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 7h08’29”
2位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +46”
3位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +47”
4位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク) +56”
5位 アイナー・ルビオ(モビスター)
6位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +1’07”
7位 ホアン・ペドロ・ロペス(リドル・トレック) +1’11”
8位 ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ) +1’13”
9位 エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’26”
10位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rラモンディアル)
H.Moulinette