ジロ・デ・イタリア第2ステージ:「有言実行」「攻撃は最大の防御」最強男ポガチャルが”予定通り”の独走で頂上ゴールを制す圧勝!一気に総合リーダーに、全グランツールでのステージ勝利達成
あまりにも強かった。昨日のオープニングステージでの勝利を狙ったものの勝利と総合リーダーの証、マリア・ローザを逃したタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ)だったが、ステージ終了後に第2ステージの攻撃を宣言していた。最後の上りの前にパンクと落車を喫しながらも、チームメイトのアシストで戦線復帰を果たすと、公言通り頂上ゴールへの上りでアタック、そのまま独走態勢へを持ち込むと、何度も後ろを確認しながら余裕の走りでそのままゴールまで走り切ってみせた。初出場のジロ・デ・イタリアで自身初めてのジロ・デ・イタリアステージ優勝を上げるとともに、これですべてのグランツールでのステージ勝利を達成した。ゴール後も息を切らすことなくすぐにクールダウンを始めるあまりにも次元の違う走りで、一気に総合首位に躍り出るとともに、総合上位を狙うライバルすべてを大きく突き放し、早くもその桁違いな強さを見せた。
まるで勝負が決まる最終週の山岳ステージを見ているようだった。実際にはまだ第2ステージでありながらも、かなりの厳しい勾配の頂上ゴールが設定されたこの日のステージは、間違いなく総合上位を狙うものにとっては油断できない厳しいものになることが予想された。しかし結局最後は「攻撃は最大の防御」を公言するポガチャルの独り舞台となった。だが注目はその背後の総合表彰台をめぐる争いだろう。最大ライバルと目されたゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)が何とか踏ん張り第2集団でゴールするなか、ダニエル・マルチネスとフロリアン・リポウィッツ(共にボーラ・ハンスグロエ)、キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)、ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン)、アイナー・ルビオ(モビスター)、ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ)やマイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング)とダークホース的メンバーがいい走りを見せ、総合でも上位につけた。戦前の予想がUAEチームエミレーツとポガチャルの走りにより完全に崩壊状態となり、各チーム若手やダークホースによるバトルへと早くも移行し始めている。
第2ステージは161㎞のステージ、オロパの頂上ゴールには1999年に上り始めでチェーンを脱落させながら、そこから驚異の49人ごぼう抜きでステージ優勝を上げた伝説のパンターニにちなみパンターニ山岳賞が用意されており、山岳スペシャリストたちにとっては間違いなく動きがあることが予想されていた。そして迎えたステージではスタートからのハイペース、それでも逃げが容認され、逃げは4分ほどにまでその差を広げた。しかしこの日は逃げ切りを容認するような雰囲気はみじんも感じられなかった。UAEチームエミレーツに加え、イネオス・グレナディアスも積極的にペースを上げたことで、最後まで逃げ続けたアンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト)も吸収されてしまう。
すると残り11.9㎞、最後のオロパの上り直前に思わぬ光景が飛び込んでくる。前輪がパンクしたポガチャルはスローダウンするが、バイク交換のタイミングが遅れてそのままコーナーを曲がろうとした瞬間、タイヤがが外れリムが破損、そのまま前輪が流れて落車してしまう。幸いにもスローダウンしていたためにケガもなくそのままバイクを交換、20秒ほど遅れてメイン集団を猛追することとなる。
そしてこの猛追からメイン集団復帰を果たすと、いよいよUAEチームエミレーツが本領発揮する。集団の先頭に躍り出ると、アシストたちが次々とペースアップ、ライバルたちはなす術なく千切られていく。そして最後のアシスト、ラファル・マイカ(UAEチームエミレーツ)のアシストで一気に人数が削られると、満を持して残り4.3㎞でポガチャルが飛び出していく。ベン・オコナー(デカスロンAG2Rラモンディアル)がかろうじてついていくが、それもすぐに引き離されてしまう。トーマスも追走を見せるが、背後を確認しながらペースを適度に上げていくポガチャルにはついていくことができない。ポガチャルは懸命の走りというよりはマイペースに徹する走りに終始、その背後ではトーマスとオコナーに次々と選手たちが合流し、追走集団が形成される。その中でも際立ったのはアイデブルックスとリポウィッツ、この二人の走りはポガチャルと拮抗する素晴らしいものだった。
ポガチャルは余裕の表情でゴール後にガッツポーズ、それに対して2位争いは激しいスプリント勝負となり、マルチネスがトーマスに先行して2位を確保した。
タデイ・ポガチャル(ステージ1位、総合1位)
「完璧にパンクしたのでコーナーの前で止まりたかったんだけど、チームの無線でコーナー抜けたらバイク交換って言われて困惑してたんだよ。そしたら落車したんだけど、まあ大したことなかったよ。最後の上りもあまりよく知らなかったからペースがわからなかったんだけど、チームが素晴らしい仕事をしてくれたよ。」
ゲラント・トーマス(ステージ3位、総合2位)
「ポガチャルがアタックしたときは結構限界だったんだよ。でも後続が追い付いてきて楽になったよ。最後はわずかな秒数でも稼ぎたかったんですプリントしたよ。脚は昨日より回ってはいなかったんだけど、まあ二日目の調子としては上出来かな。」
ジロ・デ・イタリア第2ステージ順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 3h54’20”
2位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ) +27”
3位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス)
4位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン)
5位 フロリアン・リポウィッツ(ボーラ・ハンスグロエ)
6位 マイケル・ストーラー(チュードル・プロサイクリング) +30”
7位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク)
8位 アイナー・ルビオ(モビスター)
9位 ホアン・ペドロ・ロペス(リドル・トレック) +35”
10位 ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ) +37”
ジロ・デ・イタリア総合順位
1位 タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ) 7h08’29”
2位 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアス) +45”
3位 ダニエル・マルチネス(ボーラ・ハンスグロエ)
4位 キアン・アイデブルックス(ヴィズマ・リースアバイク) +54”
5位 アイナー・ルビオ(モビスター)
6位 ロレンツォ・フォーチュナト(アスタナ・カザフスタン) +1’05”
7位 ホアン・ペドロ・ロペス(リドル・トレック) +1’09”
8位 ヤン・ヒルト(ソウダル・クイックステップ) +1’11”
9位 エステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト) +1’24”
10位 ベン・オコナー(デカスロンAG2Rラモンディアル)
H.Moulinette