フレッシュ・ワロンヌ2024:大荒れの悪天候のユイの壁を制したのはノーマークのウイリアムス!開幕戦ツアーダウンアンダー総合優勝に続きまたも大金星!イスラエルプレミアテック移籍で開花
才能というのは時に唐突に開花するものだ。昨年度まではワールドツアーチームに所属しながら、ワールドツアーでの勝利はツール・ド・スイスでステージ勝利のみと、これと言って目立った戦績のなかった27歳のステファン・ウィリアムス(イスラエル・プレミアテック)がとてつもなく大きな仕事をやってのけた。今シーズンは開幕戦のツアー・ダウン・アンダーで誰も予想すらできなかった総合優勝を果たすと、このレースではエースのリタイアにより巡ってきたチャンスで積極的な走りを披露した。そして最後のユイの壁の残り300mでの勝負所で鮮やかな加速でライバルたちの横をすり抜けると、そのまま一気に加速し、何度も後ろを振り返りながら気を緩めることなくフレッシュ・ワロンヌでの勝利を決めた。
なんと出走176名中完走僅か44人、途中横殴りの雨が降った上に、気温は一桁台、体感温度は氷点下というこの上ない悪コンディションとなったこのレースは、前半から脱落者が続く。優勝候補の一角だったマティアス・スケルモース(リドル・トレック)は低体温症でリタイア、他の優勝候補たちも続々とリタイアを選択した。そしていったんは発生した逃げも捉まり、この日4度通過するユイの壁の2周回目でソレン・クラー・アンデルセン(アルペシン・ドゥクーニンク)がするすると抜け出していく。残り50㎞ではそのアンデルセンを追走しているのはすでに残り30名ほどにまで激減していた。
ここからアンデルセンが素晴らしい独走を続ける残り30㎞で3度目のユイの壁を通過する。背後の集団はさらに人数を減らしながらここでウイリアムスが切れ味鋭い走りで一時単独の2位となる。しかし一人で追い続けるのは賢明ではないことは百も承知、ユイの壁を超えると、ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)とマクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー)、更にはリチャード・カラパズ(EFエデュケーション・イージーポスト)ら追走集団と再び合流し、アンデルセンとの差を縮めていく。その背後には、チーム全員がノルウェイ出身で寒さに強く、この日は唯一出走全員が完走を果たしたUno-Xモビリティが猛追を見せる。
このUno-Xモビリティの走りもあり、残り17㎞でウイリアムスらがまず捉まり、そして残り14㎞で単独逃げ続けていたアンデルセンも捉まってしまう。そうなればここからはは集団で最後の1.3㎞のユイの壁の上りへと突入することとなる。誰もが腰を上げ体を振りながら最大勾配26%の激坂を上るが、残り300m、目の目の空間が空いたウイリアムスはそれを逃さなかった。爆発的な加速でライバルたちに追走の間も与えずトップスピードに乗ると、あとは背後から迫りくるヴォークランを何度となく確認しながら最後はガッツポーズで決めた。ヴォークランは2位、ファン・ギルスが3位と、奇しくも前回のラップでユイの壁を通過したメンバーがやはり脚力を残していた。
「寒かったけど、ウェールス(イギリス北部)出身だから、まあ悪天候も楽しめたし、それよりも長らく観戦してきたこのレースのスタートラインに立てただけでなく勝利できたことに感無量だね。」とその勝利を噛みしめた。2位に入った22歳のヴォークランは、「とにかく寒すぎたんでひたすら早くゴールがしたかっただけだよ!」と2位に入った以上に、寒さとの戦いが終わったことに安どの表情を見せた。
フレッシュ・ワロンヌ2024順位
優勝 ステファン・ウィリアムス(イスラエル・プレミアテック) 4h40’24”
2位 ケヴィン・ヴォークラン(アルケアB&Bホテルズ)
3位 マクシム・ファン・ギルス(ロット・デスティニー) +03”
4位 ベノワ・コスネフロイ(デカスロンAG2R)
5位 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)
6位 トビアス・ヨハンセン(Uno-Xモビリティ) +10”
7位 ロメイン・グレゴリエ(グルーパマFDJ)
8位 ドリアン・ゴドン(デカスロンAG2R)
9位 ティス・ベノート(ヴィズマ・リースアバイク)
10位 ギヨーム・マルタン(コフィディス)
H.Moulinette